初コンサート編 3
みんな一人ずつ自己紹介をしていく中、私の番なんて来て欲しくないって心のどこかで思ってしまっていた。
「次…純怜の番だよ」
陽向さんが優しく言った。
「あ、うん…」
と私は緊張しながら答えた。
「自分の思ってることを正直に言えばいいよ」
そんな私を見て、智哉さんが励ましてくれた。
「…今日は皆さんにありのままの自分を見てもらうつもりです。前にも言いましたが、それでも好きになれなかった場合は仕方ないです。だけど、好きになってよかったって、後悔させないように頑張ります!」
と私は震える声で言った。
私の気持ちが少しでも伝われば…、
その瞬間、客席から何かが飛んできて、顔に当たった。
痛みが走り、私は一瞬何が起きたのか分からなかった。
手で顔を押さえると、冷たい液体が滴り落ちてきた。
ペットボトルだった。
「純怜!」
凛月さんが叫び、私の元に駆け寄った。
観客席からは
「お前なんかいらない!脱退しろ!」
という声が聞こえてきた。
私はその言葉に胸が締め付けられるような思いを感じた。
涙がこみ上げてきたけど、泣いたら相手の思う壷だって、必死にこらえた。
会場は一瞬でザワザワと騒がしくなり、観客たちが何が起きたのかを話し合っているのが聞こえた。
ステージ上のメンバーも動揺しているのが分かった。
「大丈夫?」
陽向さんが心配そうに尋ねた。
「う、うん…」
私は震える声で答えたが、心の中では恐怖と不安が渦巻いていた。
まさか、こんなことになるなんて。
その時、係の人たちが素早く動き、ペットボトルを投げた犯人を捕まえた。
「離して!」
最初は抵抗していた犯人も、力尽きたのか大人しく退場した。
「皆さん、落ち着いてください!」
智哉さんがマイクを通して観客に呼びかけた。
そのおかげで、観客たちも少しずつ落ち着きを取り戻していった。
「純怜、無理しないで」
雄大さんが優しく言った。
私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとしたけど、心の中では不安と恐怖が消えなかった。
観客の視線が痛いほどに感じられた。
心配してくれている人もいれば、中にはせいせいしてる人もいるんだろうな。
「大丈夫です、」
みんな今日のコンサートを楽しみに来てくれてるのに、私のせいで台無しにしたくない。
「皆さん、ご心配をおかけしました。私なら大丈夫です!」
私はみんなを安心させるために力強く言った。
その後のパフォーマンスは無事に進んだ。
心の中ではずっと不安が消えなかった。
観客からの応援も感じられたけど、同時に批判の声も耳に残っていた。
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