お留守番編 4

「雷、もう怖くないか?」

凌久くんの優しい声が耳元で響く。


「うん、凌久くんがいてくれるから…」

顔を見ないからか、本当の気持ちを素直に伝えることが出来る。


「ならよかった」

凌久くんの手が私の背中を優しく撫でる。


「でも、もう少しだけこうしててもいい?」

凌久くんの腕の中が心地よくて、離れたくない。


「好きなだけ甘えたらいい」

凌久くんの言葉に、心が温かくなる。


「ありがとう、凌久くん」

凌久くんの胸に顔を埋めたまま、感謝の気持ちを伝えた。


「ん、」


誰かに抱きしめてもらったのはいつぶりだろうか。


しばらくの間、雷の音も気にならなくなるほど、凌久くんの温もりに包まれていた。


やがて、雷の音が遠ざかり、静けさが戻ってきた。


「雷、止んだみたいだな」

凌久くんの声に、私は顔を上げる。


「本当だ…」

窓の外を見ると、雨も小降りになっていた。


一人だとあんなに怖かったのに、人の温もりがあったからだらうか、それが凌久くんだったからだらうか、初めて雷が怖く感じなかった。


「もう大丈夫か?」

凌久くんの優しい目が私を見つめる。


「うん、ありがとう。凌久くんのおかげで怖くなかったよ」


心からの感謝を込めて微笑んだ。


その時、玄関のドアが開く音がした。


「ただいまー!」

玄関から雄大お兄ちゃんの声が聞こえた。


「おかえりなさい!」

私は玄関に向かって声をかけた。


「純怜、大丈夫だった?」

心配そうな顔をしている雄大お兄ちゃんに、私は笑顔で答えた。


「はい。大丈夫でしたよ。凌久くんがいてくれたから」


「凌久帰ってたんだ。良かった。純怜一人じゃなくて」


そう言って安心したように微笑んでくれる。


その笑顔を見ると、私も自然と笑顔になれた。


凌久くんの言った通り、みんな私のことを大事に思ってくれて、本気で心配してくれてる。その事が何よりも嬉しかった。


「な?言った通りだろ」

そう言いながら凌久くんが優しく微笑んだ。


「うん」

心の中が温かくなって、涙が出そうになる。


「なになに何の話?」

雄大お兄ちゃんが興味津々に聞いてくる。


私のことを大事に思ってくれてるのが嬉しいなんて、そんなこと照れくさくて言えない。


「なんでもないです」

私は軽く流した。


「えぇ、教えてよぉ」

雄大お兄ちゃんがさらに詰め寄ってくる。


その姿が可愛くて、思わず笑ってしまう。


「秘密です」


「純怜が笑ってるなら、まあいいか」

雄大お兄ちゃんも私につられて笑顔を見せる。


「雄大お兄ちゃんも、私のために急いで帰ってきてくれてありがとうございます」


「…バレてた?」

雄大お兄ちゃんが少し照れくさそうに答える。


「はい」

私は微笑んで頷く。


「これでも隠してたつもりだったんだけどなぁ。どうして分かったの?」


「汗かいてるので」

私は笑いながら答える。


雄大お兄ちゃんの額に光る汗が、その証拠だった。


「そっか、バレちゃったか。でも、純怜が無事でよかったよ」


雄大お兄ちゃんは照れくさそうに頭をかく。

その優しさに、涙が出そうになった。


「ありがとうございます。凌久くんもほんとにありがとう」


凌久くんの腕の中で感じた温もりと安心感が、まだ心に残っている。


凌久くんの優しさと温かさが、私の心を支えてくれた。


「どういたしまして」


凌久くんが微笑んで答える。


ドキッとしたのは、雷がまた鳴り始めたからなんだと思う。




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