サインを作ったよ編

「んー」


私は頭を抱えながら悩んでいた。


「純怜、まだ悩んでるの?」

流星くんが声をかけてきた。


「なかなかいい案が出なくて…」

私はため息をついた。


「こんなに沢山書き直して」


流星くんがぐちゃぐちゃに丸められた紙を指さして笑ってきた。


「流星くんの時はどうやってサイン考えたんですか?」


参考にできるものがあれば、


「んー、内緒」

流星くんがいたずらっぽく答えた。


「流星くんに聞いた私が間違ってました」

と私は苦笑いした。


「ははっ」

「笑うだけならもう行ってください!気が散ります!」


私は少し怒ったふりをして言った。


「ごめんごめん。そうだな、じゃあ…一回頭を整理してみようか、純怜はどんなサインを書きたいの?」


どんなサイン…どんなサイン…


「えっと…難しすぎたら書くのが大変なので簡単にしたいです。あと、ワンポイントにハートとか入れたいですね」


私は自分の希望を伝えた。


頭の中では完璧にかけてるんだけどなぁ。実際書いてみたら困ったことに、へんてこなんだよね、


「そっか」


「じゃあ、こんなのとか?」

と凛月くんが突然提案してきた。


「わっ、凛月。いつからいたの?」


「さっきからずっといましたよ」

凛月くんが笑いながら答えた。


「全然気づかなかった」


もちろん私は気づいてましたけどね。


「あ、このサインすごくいいですね!」


私は凛月くんの提案に感動した。


さすが凛月くんだ…


私にはそんなアイディア浮かばないもん、


「すごくいいけど、凛月が考えたサインをそのまま使ったらダメよ!」


「それぐらい分かってますよぉ、」


「これをベースにして少しアレンジしてみたら?」


「ちょっと試してみます!」


私は新しいアイディアにワクワクしながら紙とペンを手に取った。


「純怜ならきっと素敵なサインができるよ」

と流星くんが励ましてくれた。


「頑張ってみます!」


私は凛月くんの提案をベースにして、ハートの位置を少し変えてみたり、名前の書き方を工夫してみたりした。


何度も書き直して、ようやく自分らしいサインが完成した。


「できた!」

私は嬉しそうに叫んだ。


「見せて見せて!」

流星くんが興味津々に言った。


「これです!ハートの他にもうさぎも書いてみました!」


そう言いながら、私は自信満々にサインを見せた。


「おお、いいじゃん!純怜らしいサインだね」

流星くんが褒めてくれた。


「ありがとうございます!」


我ながらいいサインができた。


「ファンのみんなも喜んでくれるよ」

「そうだといいな」


「大丈夫、純怜の気持ちがこもったサインだから、きっとみんな喜んでくれるよ」


凛月くんが励ましてくれた。


「うん、ありがとう」


「これ、サイトに載せようよ」

流星くんが提案した。


「いいですね」

「じゃあ…純怜はこれ持ってそこに立って」


「はーい」

私はサインを持って指定された場所に立った。


「よし…撮れた」

流星くんがカメラを確認しながら言った。


「あともう少しでサイン会があるけど…純怜にとっては初めてのサイン会だよな」


そうだ、もう少しでサイン会があるんだった。


「緊張する…」


「大丈夫だよ、ファンのみんな優しいし…それに、何かあったら隣に俺達もいるしね」


「そうですよね…」



また、あんなこと、起きなければいいけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る