初めてのサイン会編 2

「…私の事が嫌いで無視をしてもらっても全然構いません。前にも言った通り、無理に認めて欲しいなんて思いません」


と私は冷静に言った。


「あんたにそんなこと言われなくたって」

そのファンが冷たく返した。


「ですが、あなたが認めなくても、私はスターライトのメンバーです。どれだけ私の事を嫌っても私がスターライトである事は変わりません」


私は強い意志を込めて続けた。


「はぁ?そもそも7人でスターライトでしょ!?あんたなんて…あんたなんて!いなく…」


あれ、口は動いているんだけど、声が聞こえない。


私は驚いて周りを見渡すと、


「智哉兄…?」


智哉兄が私の耳を塞いでくれていた。


「さすがにそれは言い過ぎだね」


「でも…!」

とそのファンが反論しようとした。


「前に純怜の事を認めなくていいけど、傷つけるようなことは絶対に許さないって言ったはずだけど、もう忘れたの」


隣にいた凌久くんが真剣な表情で言った。


「なんで、なんでこんなやつを庇うのよ!何年も頑張ってきたのにこんなのに邪魔されて悔しくないの!?」


そのファンが涙声で叫んだ。


「悔しくないよ。だって純怜は邪魔なんかじゃないからね」


と智哉兄が私に微笑み、優しく言った。


「っ…なによ、デビューした時からずっと応援してたのに。私の気持ちはどうなるのよ…」


そのファンが泣き崩れそうになった。


ファンの方の気持ちも分かるから、私は何も言えなかった。


「純怜がいるからといって、俺たちが変わる訳では無い」


そうだよね。


私がいてもスターライトはスターライトのままなんだから。


「そんなことない。こいつがいたら、スターライトは駄目になる!」


「そんなわけないでしょ」


すぐに否定してくれたことが、ほんとに嬉しかった。


「何で分かってくれないの…!こいつが、こいつがいなかったら…」


そのファンが泣きながら言った。


その瞬間、ファンがポケットから小さなナイフを取り出した。


私はその光景に凍りついた。


恐怖で体が動かなくなり、心臓がバクバクと音を立てた。


そして、そのナイフを私に向かって振りかざしてきた。


「やめろ…!」


が、それは警備員によって止められた。


それが、少しでも遅かったら私はきっと…。


「…っ、ふっ、は…」


私は恐怖で過呼吸を起こしてしまった。


「純怜…!」

「純怜、落ち着いて呼吸してみて」


「…はぁ、っ…」


私は深呼吸を試みた。


「大丈夫だよ」


智哉兄が私を安心させるために、優しく言った。


「はっ、そんな演技いらないから。そこまでしてスターライトでいたいの?バカバカしい」


「ほんとに黙って」

凌久くんが厳しく言った。


まだ何か言ってたみたいだけど、私は、そのまま倒れて、意識を失ってしまった。

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