第10話 オババとの出会いだよね。
お昼ご飯を食べてから、この村の唯一の薬師であるオババというゴブリン族のお婆さんに会いに行く。オババというからにはかなり高齢なのだろう。
ガラルはセスに良い加減仕事をしてくださいと言われ屋敷で泣く泣く仕事だ。リリィはいっしょにくるらしい。絶対に娘といい感じになるな!! と言われてもそれは聞けない話だ。
だってもう両思いだし〜 うちら結婚するもんね〜 って心の中のギャルが出てしまった。あれ、これって初デートでは!? キャーーーー!! とトオルの内なるギャルがまたもやときめいていると、リリィは心配そうな顔でこう言った。
「トオル、オババに惑わされちゃだめだよ。オババはとてつもなく意地悪で、しょt、ゴホン、トオル君みたいな子に目がないの!!」
いや誤魔化せてなくね? 意地悪で高齢なショタコンって誰得!? 僕でも守備範囲外だな〜、わ〜行きたくなくなってきたぞ、とは言えずオババの家に向かうことにする。
村を歩きながら、オーラン村の様子を見る。村の畑には小麦畑が広がっていた。アナザークラウドは春なのにもう実をつけている。日本では秋に種まきして、翌年の6月から8月に収穫をするらしい。
ちなみに1日の時間も24時間で1月から12月で一年という暦も地球と変わらないようだ。もしかしてこの世界の創造神は地球を意識してアナザークラウドを作ったのかもしれない。
いずれ、ミリアにこの世界の歴史について聞かなければね。神様ノートがあるじゃんって思うかもしれないが、情報が膨大すぎて見にくいのだ。
まあ検索機能もあるよ? じゃあ検索すれば良いじゃんって方もいるだろう? うーん、めんどくさい。聞けることは聞いた方が早いのだ。僕はそういう性格だから許して欲しい。
話を戻すと、アナザークラウドでは小麦の生態も違うのだ。アナザークラウドでの小麦の生態もいずれ語ろう。というか野菜畑がないが、オーラン村では野菜はないのか!?
一回も食事で野菜が出てきてないし、人族の僕は良い加減ビタミン不足で死にそうだ。オババにちょうど良いから食べられる山菜がないか教えてもらおう!!
「ねえ、僕ちゃん思うんだけどトオル君の錬金術ってポーションも作れるの??」
どうなんだろう?? そもそも僕が使っている錬金術とこの世界の錬金術は大きく違ってそうだし。そこら辺はスキルの解説欄にも載ってなかったんだよなぁ。
僕もわからないなぁと返すと、そうだよねぇ〜〜と相槌が返ってきた。その後もさっきの黒パンおいしかったけどまた作ってくれるとか??
ゴン太の稽古の前の話、厳しかったけど大丈夫だった? とか聞かれて適当に答えながら歩いてた。それと、と言って、近寄ってくるリリィお姉ちゃん。
耳元で小声でまた泣きたくなったらお姉ちゃんの胸の中で泣いてもいいんだよ?? と言って微笑んでくれるリリィお姉ちゃんは女神に見えたよ。もうミリアじゃなくてリリィお姉ちゃんが女神でいいんじゃないかな!!
そんなアホなことを透が思っていると、やっぱり……
『へー、誰が最初にトオルのお世話してあげたかわすれたのねー あんよが上手! あんよが上手! って私に言ってもらってたの、リリアナに念話でバラしちゃおっかな〜』
ヒィ!! 赤ちゃんプレイの内容を語るのはやめてくれ! 僕が悪かったよ!! ミリアお姉ちゃん!!
『もう都合のいい時だけお姉ちゃんってつけても許しません!! 今度そっちに行くから、その時に私もオ・シ・オ・キしてあげるわ!! 逃げたら許さないんだから!!』
ま、まじか。お姉ちゃんってつければ何でも許してくれると思ったのに…… ていうか、さっきは聞き流してたけど本当にこっちに来るつもりなんだな。ハハハ、乾いた笑いが出た。
リリィお姉ちゃんとミリアが出会ったらどんな争いが起きるやら…… 想像しただけでも怖い。女神のオシオキも色々な意味で怖いな!! もうなんでも良くなってきた。どうにでもなれ〜〜
頭の中でギャーギャー騒ぐミリアの声をスルーして、リリィお姉ちゃんと甘々な雰囲気で喋っているとオババの家に着いた。
オババはどんなおばあちゃんなのかな?? と思いながら扉をトオルがノックするとはーーーーーいと大分間延びした若干高い返事が返ってきた。あれ?想像した声と違うぞ?扉を開けるとそこにいたのは……
黒髪は肩までかかったロング!! 赤い目をした妖艶な美魔女だった!! 身長は僕より少し高め。大体165センチってところだろう。額には角が少しだけ生えており、吊り目で鼻は平均より少し低いくらいで丸みがある。
口元は形の良い感じで口元の左下にホクロがあるのがセクシーだ。小顔で顎もシュッとしている。胸元はリリィお姉ちゃんより大きい。リリィがDならオババはFって所だな。
一言いいですか!? どこがオババやねん!! めっちゃ美人なお姉さんなんだけど!? ネーミングセンスおかしいだろ!! 気になったので鑑定しようとすると鑑定スキルが弾かれる。
ここでハッとする。スキルの説明によれば鑑定スキルが僕より上位な場合、鑑定スキルが弾かれるとある。つまりオババは鑑定スキルレベルマックスの僕よりも上位の鑑定スキルを持っているってことだ。
ここで僕のステータスを密かに確認しておく。確認しないとすぐに忘れてしますからな。
名前:トオル カムロ
性別 男性
年齢 18歳
ステータス
体力 E
魔力 C
筋力 G
器用さ E
防御力 F
速さ D
運 B
スキル 鑑定 レベル10(マックス)
異世界翻訳言語スキル レベル10(マックス)
アイテムボックス レベル10(マックス)
天賦の才能
ユニークスキル ハガレ○式錬金術 レベル10(マックス) 錬菌術 レベル1
魔言 レベル2
称号 女神ミリオニアの加護 国家的バブ術師
たらたらし
おっと僕の体力がFからEに上がってるな。防御力もGから Fに上がってる!! 纏い術の『魔気』を覚えた影響かも知れない。魔言もレベル2になってるな。おそらくリリィお姉ちゃんに魔言を使われてる影響かも知れないな。
って喜んでる場合じゃない。オババはこのステータスを見ているはずだ。それはつまり鑑定スキルを持っていることがバレるってことだ。
「あらあら、まあまあ。トオル君っていうのね〜〜 しかも……」
全力で一歩を踏み出し、オババの口元を手で塞ぐ!! 速さDの底力を見よ!! だが止まりきれず勢い余ってオババの胸元に顔から飛び込んでしまった。うーん、薬草の良い香りとバラみたいな香りが顔を包む。
思わず、深呼吸しているとあらあら、まあまあこんなオババに甘えて〜 おませさんねえとそのまま抱きしめてくれる、オババ。だが後ろからはめちゃくちゃな殺気を感じる。アバババババババ。
「リリィ、だめよ〜 トオル君はオババに甘えたくなっちゃったのよね〜 男の子はお姉さんに甘えるのが好きなのよ〜 それを邪魔しないであげて〜」
僕を抱きしめながらウィンクしてくるオババ。流し目がとてもセクシーだ。
「誰がお姉さんよ!! オババはお父さんよりも歳をとってるのよ?? それにトオル君もトオル君よ!! 一目散にオババに抱きついて!!」
僕はリリィのお姉ちゃんの剣幕に慌ててオババから離れようとするが、抱きしめられて、力を込められてるので離れられない!! 意外とっていうか、めちゃくちゃ力あるな!! これが美魔女の包容力か、と思った所で何故か後ろからもリリィおねえちゃんに抱きしめられる!!
嫉妬したリリィお姉ちゃんが抱きついてきたようだ。圧力が強い。顔が胸に挟まって息ができなくなってきた。幸せと思いながら息が続かなくなり、目を閉じた。ああ、母性に殺されるんじゃ。
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