第18話 妖精との戦いだよね。

「チュン! チュン!」今日もオーラン村は平和だね。あれから1週間経ったよ。僕は朝食を食べた後、1人で稽古をしてる。「ハーッ!」以前はタイムラグが3秒くらいあった魔力の練り上げも一瞬でできるようになったんだ。


 一瞬で魔力を練り上げた後、作るのは以前できなかった魔気の鎧だ。これは長いので『魔鎧まがい』と名付けたよ。僕は戦国時代の日本的な鎧をイメージすることにしたんだ。


 魔鎧のメリットは2つある。1つは魔絶気よりも魔力消費が少ないことだね。そしてもう1つは魔力バランスを変えることによって、顔や腹と言った局部を集中的に守れることさ! 


 いつもはこの魔鎧を使って闘気の鎧、『闘鎧とうがい』を纏ったゴン太師匠と組み手をしているよ。でもゴン太師匠は魔鎧の魔力が集中していないところを瞬時に見抜いて攻撃してくる。まだまだ武の道は険しいね。


 今日は1人で稽古をしていると、リリィとゴン太がやって来る。「リリィお姉ちゃんにゴン太師匠。2人してどうしたの?」


「トオル君、今日も精が出るわね! 実はゴン太が悩み事があるって僕ちゃんに相談してきたの。」リリィは困り顔で話す。


「トオル、稽古中にすまねえだ。実は村の倉庫の小麦が盗まれてなぁ。」ゴン太も困った顔をしているね。


「小麦が盗まれた!? パンが食べられなくなるじゃないか! 盗んだ奴は誰なの?」食べ物を粗末にするやつは許せないよ! やった奴はどこの村人だ?


「それがなあ、この村の物じゃねえんだ。やったのは妖精なんだ。」僕はゴン太の話を聞いて、妖精!? と驚きの声をあげたよ。


「妖精はね、この森に昔から住んでいて悪意は無いんだけど、いたずら好きで困った子達なの。特にオーラン村の小麦を盗んでパンを食べるのが好きみたいで…… やめてくれって言ってるのにやめないの。」リリィは弱った様子だな。


「妖精たちがパンを食べるのが好きなら、パンを焼いて食べさせてあげれば良いんじゃない?」僕はそう提案したけど、2人は首を振った。どうやら妖精たちはパンをあげてもあげきれないほど沢山数がいるみたいだ。


 妖精は魔物と同じく、食事は必要ないのだが、パンが大好きらしく小麦を盗むのをやめないらしい。物々交換をしようと言っても、盗めば良いと言って取引を拒否するみたいだよ。


「ゴン太師匠、一度懲らしめた方が良いんじゃないかな?」僕は魔鎧を使って妖精たちを懲らしめようと考えたよ。


「トオルは魔鎧を使うつもりだなぁ? 妖精はいたずら好きだけど温厚だから攻撃はしてこないと思うがなぁ。ちゃんと魔鎧を制御できるか?」ゴン太師匠に僕は勿論です! と答える。



 「それでは、妖精たちとの対決の準備をしよう!」僕はリリィとゴン太と一緒に森へと向かったんだ。


 森に入ると、色とりどりの光が舞い、妖精たちが飛び回っているのが見えた。彼らは人間の姿とは異なり、透明感のある羽根を持っており、小さな体はまるで光に包まれているかのようだった。


 僕たちが近づくと、妖精たちは警戒して飛び回ったが、一人の妖精が前に出てきた。「人間、なぜここに来たの?」彼女は首をかしげながらも、好奇心満々の目で僕たちを見ている。


 「僕たちはここに来た理由は、あなたたちが村の小麦を盗むのを止めてほしいからだよ。」僕は妖精に説明した。


 妖精は一瞬驚いたように見えたが、すぐに笑顔を取り戻した。「ゴブリン族の作るパンは美味しいからね。だけど、私たちにもわけがあるの。」


 「わけがあるって、どういうこと?」僕は深く知りたいと思った。


 「この森は昔から私たちの家だった。でも、魔物たち、特にゴブリン族が森を切り開いて、私たちの住処を奪っていったの。だから、ちょっとしたいたずらで小麦を取り返しているの。それに……」


 僕はその話を聞いて、ただ単に悪戯が目的ではないことを理解した。妖精たちにとっては生存の問題だったのだ。ただその後の何か言いたげな表情が気になった。


 とにかく説得してみようとしたよ。「そうか、僕たちはあなたたちのことを理解していなかったね。ごめんね。でも小麦を盗むのではなく、一緒に解決策を見つけようよ。」僕は笑顔を浮かべて言ったんだ。でもその妖精は悲しそうな顔で俯きながら言うんだ。

                                      

「悪いけど、今はそれはできないわ。妖精女王様の容体が良くないの。事態は思わしくないわ。美味しいパンをいっぱい食べてもらう必要がある。」その妖精は悲壮な顔で俯いたままだった。


「それなら、妖精女王様の容体を僕が見てあげるよ。美味しいパンも焼いてあげるから。」僕は心配しながら必死で説得する。


「悪いけど人間は信用できないわ。妖精女王様があんな風になったのも人間のせいよ。お前が立ち去るなら良いわ。でも食い下がるなら容赦はしないわ。」そう言って、彼女は静かに敵意を向けて来たんだ。


「そんな! 君と争いたくない!」だけど思いは届かず、彼女は詠唱を始めていたよ。彼女の周りを緑の魔力が爛々と輝き、森に降り注ぐ。どうやら木属性の使い手らしい。


「森よ、彼を縛り上げ、生き血を吸い、この森の養分にしなさい!!」彼女が詠唱を唱え終わると森が蠢き、メキメキと音を立てたかと思うと大量の木の根が僕を襲ってきた。


「トオル、魔鎧を使うだ! 素肌で触れたらミイラみたいになっちまうだ!」ゴン太が焦った表情で叫ぶ! 僕は焦りながらも魔力を練り上げ、魔鎧を発動する。僕の姿は青い甲冑を着たような姿になる! 間一髪で木の根から肌を守れたよ。


「クソ! 一瞬で魔鎧を発動するなんてあり得ない! でも女王様を陥れた人間が憎い! にくい! ニクイ!」彼女は非常に興奮して、緑の魔力を振り撒いている。何か様子がおかしいぞ。


「ゴン太師匠! 一瞬で良いから、彼女の気を引いてください!」わかっただ、トオル! と答えて、ゴン太は闘鎧を身に纏う! そして闘気を手のひらに溜めて、弾のように、彼女に向けて打ち出す!


「僕ちゃんもいるよ! 魔言!『動くな』」リリィのナイスアシスト! 彼女に魔言は一瞬しか通用しなかったが、それでも動きを止めていた。その間にゴン太師匠の闘気弾が彼女に当たり、彼女は吹き飛ばされた。


「うっううう、でも魔力の塊である私たちに闘気は聞きが悪いのよ! すぐにあんたたちも森の糧にしてやるわ!」彼女がまた木魔法を行使しようと準備しているときに僕は魔絶気を纏って後ろにいたよ。


 ゴン太とリリィが時間を稼いでいる時に顕微眼で彼女を見ていたんだ。彼女の魔力は黒い瘴気のようなものに犯されていた。あれが彼女をおかしくしているしょ正体だ。


 あれを取り除く方法は魔絶気で彼女を滅すればいい。だがそれでは彼女は死んでしまう。でもね魔絶気や魔鎧を作った時に気付いたんだ。イメージで魔力の質が変わることにね! だから瘴気だけを滅する魔気で攻撃すれば良いんだ!


「トオル君、やっちゃって!」「トオル、制御をしっかりするだ!」2人の声が交差する!


「行くよ! 『魔聖気』!!」僕は白に近い水色のオーラを纏い、彼女に突っ込んだ。すると彼女の体から黒い瘴気が出てきて、塵のようになって消えていく。彼女の恨みや憎しみも浄化されていくようだった。


 こうして妖精の彼女の暴走は治ったんだ。新しい魔気の使い方もできたし言うことなしだな!
















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