第2話 森から始まるよね。

 周りをみると一面の森。鳥や狼の遠吠えの様なものも聞こえる。どうやらここは、魔物たちの楽園というらしい。ここから、北に行ったところにアルカード王国、南に行ったところにエライト大帝国という国があるらしく、この森は二つの国の緩衝地帯になっている。


 この森はどこの領地でもない空白地帯というわけではなく、太古から生きるエンシェントドラゴンの領地となっているらしい。エンシェントドラゴンは善政を敷いているらしく,魔物たちは過不足無く暮らせているらしい。というか、ここより善き政(まつりごと)をしている国はないそうだ。アルカード王国やエライト大帝国よりも。


 なぜ転生したばかりの場所にこんなに詳しいかというと神様ノートというものに書かれていたからだ。あとはステータスやスキル、称号がステータスオープンという言葉で見れる様になっていた。


「では、言ってみよう!ステータスオープン!」


名前:トオル カムロ

性別 男性 

年齢 18歳


ステータス

体力 F

魔力 C

筋力 G

器用さ E

防御力 G

速さ  D

運   B


スキル 鑑定 レベル10(マックス) 

    異世界翻訳言語スキル レベル10(マックス)

    アイテムボックス レベル10(マックス)

    天賦の才能


ユニークスキル ハガレ○式錬金術 レベル10(マックス) 錬菌術 レベル1

称号  女神ミリオニアの加護  国家的バブ術師  





    たらたらし    


 神様ノートは作りたいものの作り方やこうした方がいいよというアドバイスをもらえるらしい。後はこの世界の情報が載っている。これは便利だな。こまめに見ることにしよう。


 名前は全部カタカナになっていた。まあ、この世界の人にとって言いづらいのだろう。これからは自分のことをトオルと言うことにしよう。苗字は一旦伏せとくか。


 ステータスはかなり凸凹(でこぼこ)しているな。筋力と防御力はGというのは、ひ弱なデスクワーカーとしては納得できる。体力もほとんどないな。速さがDなのは意外だ。まあ、小学生の頃は50メートル走では負けなしだったからな。その頃の名残りだろう。


 器用さが、Eもあるのは事務職だったからかな?魔力Cと運がBなのは何故だ?地球にいた頃は魔法なんて使ったことはないし、運も普通くらいだったと思ってるんだが。


 鑑定は名前とどういうスキルがあるかがわかる仕様。ユニークスキルも見ることができるが、その効果は調べることはできないそうだ。鑑定にもレベルがあるが最初からレベル10でマックスだった。同じレベル10もしくは高位の鑑定スキルを持つもの以外は相手からの鑑定を弾ける仕様になっている。そして、何らかの条件を満たすと、スキルは進化するようだ。


 アイテムボックス。容量無限、アイテムボックスに入れておけば時間停止で料理であれば、すぐに出来立てを楽しめる。もちろん、チート仕様で、普通は容量は個人差があり、一軒家が立つくらいの大きさが入るものはかなり多い方らしい。時間停止なんて機能はほぼないそうだ。アイテムボックス持ちもあまりいないらしく、これは鑑定されるとやばそうだな。これもレベル10。


 錬金術。国民的アニメのハガ○ンよろしく、等価交換の法則が成り立っているかは不明。理解、分解、再構築ができる。エネルギーは自分自身の魔力。錬金鍋が必要だが、ポーションを作ることが可能。賢者の石はありません。異世界アナザークラウドの錬金術とはかなり違っていて、透がハガ○ンにはまっていたため、攻撃スキルとして使えるが、普通はそんなことはできない。元地球人は魔法は使えないが空想力豊かなのでできる、地球チートである。ユニークスキルレベル10。


 錬菌術。細○を作り出せる能力。想像次第では 様々な用途に使えるよ。どうなるかはわからないがどんどん使っていきたいな。現時点はユニークスキルレベル1だ。


 なぜか、錬菌術だけ説明が少ない。それにレベルも低いな。これは自分で使い方を見つけろということなのか?それはそれでやりがいがありそうだな!伏せ字になっているところは、菌かな?色々アニメやラノベを読んできたがこのスキルは自分は見たこともない。攻撃的に使うなら病原菌をばら撒いて、村や町、いや一国を落とせるかもしれないスキルだが、平和的な利用もできそうだ。研究はしていくべきだな。


 これで一通りのスキルは見たな。天賦の才能は神様から聞いたからいいや。次は称号欄をチェックしよう。その後に探索だな。


 そこに書かれていた称号は女神ミリオニアの加護。これは、魔力と運のステータスに加点してくれる称号らしい。魔力C、運がBなのはこれのおかげらしい。運というパラメータは曖昧な様だが、この世界、アナザークラウドでは大事な部分で、その人の人生や生き方に大きな影響を与えるそうだ。


 国家的バブ術師。どう考えてもネタ称号。全てのお姉さまに愛し、愛されたバブ術師。真面目に解説すると、自分より年上のお姉さまに好感を与える称号らしい。それがどれくらい、接し方に出るかは個人差はある。


 なぜかこのスキルだけ下の方に配置されていたな。気づかれたくなかったのかもしれない。たらたらし。昔の日本では、例えるならば女垂らし(女を騙す、あざむく、または弄ぶ)などの意味で使われていたが現代では人の心を掴むものが得意な人、慕われやすいなど、ポジティブなイメージで使われているな。今回は後者の意味であっているようでこの称号は透の異世界生に大きな影響を与えていくことに、後から気づくのだ。


 さて、アナザークラウドの魔物たちについても見ていこう。神様ノートによれば、この世界ではファンタジーではお約束のスライムやゴブリン、オークからドラゴンに至るまで知性が存在しているらしい。だがお互いの言語は違うが、魔物共通の統一言語があるらしく、お互いにコミュニケーションを取ることができる。


 何を食糧として生きているかというと魔力を主食として生きている。狩猟民族であるオークや他の魔物は野生の獣を狩って食べることもあるそうだ。野生の獣は繁殖能力が地球の獣よりも強いらしく、狩っても狩ってもいなくならないそうだ。


 ゴブリンは農耕民族だが、野生の獣が畑を荒らしにくるため,ゴブリンは他の魔物達にお願いして、野生の獣達を狩ってもらっているらしい。なぜ、ゴブリンが農業をしているかって?趣味らしい。あとは通貨を得て、曙光品を買うためにやっているそうだ。だから人族と魔物が敵対しているわけではないのだ。だが問題がないわけではないらしいのだが。


 透はひとまず水場に行って、乾いた喉を潤したいと思っていた。初めは太陽がおそらく真上に来ていたので、お昼頃に異世界アナザークラウドに転生したらしい。だがステータスチェックやスキルチェックに3時間ほど費やしていたため、喉が渇くのは当たり前であった。


 そのあとあてもなく、森を歩いていたため、時刻はおそらく夕方くらいであった。一応、鑑定をしながら薬草やきのみをとっていたが。


 透は事務職だったため、平日はデスクワークをして過ごし、休日もユウチューブでキャンプ動画を見て過ごしていたため、体力がない。自炊はしていたので料理はそれなりにできる。だが水も食料もないし、調理道具もない。どうしようと途方に暮れそうになるが、先ほどもらった。スキルのことを思い出す。


 水がないなら、出せばいいではないか、錬金術で。そう思い至った透は中学で習った化学を思い出す。水素と酸素を掛け合わせて、水を作ればいい。だが、ここで思い至る。空気の中から水素と酸素を抽出するのはどうやればいいのか?


 そこでハガ○ンを思い出す。大事なのは、『理解』、『分解』、『再構築』だ。まず空気の組成を思い出す。窒素が約8割、酸素が約2割、そして二酸化炭素と他の色々な元素の中に水素があるはずだ。


 まず水の入れ物を作ろうかなあ。朽ちた大木を見つけた透は錬金術でカップを作ることにした。大木をまず『分解』して、切りわける。そして小さな木の塊になったところで、『再構築』する。これで木のコップができる。どうせなら水筒があったほうがいいということに気づき、木の水筒も錬成する。


 空気の組成を思い出しながら、酸素と水素とつぶやいて、『理解』に勤める。空気を分解すると、危険な原子ができそうだったので、酸素と水素を把握したところで『再構築』と唱える。カップの中にちょろっと水を出すイメージだったのだが、魔力を込めすぎて、水が滝の様に流れ出す。


 カップも流れ出してしまったので、錬金術を発動しながら、滝の様に流れる水に口をつける。そして発動を止めたのだが、なぜか息が苦しい。あ、もしかしてこの周辺の酸素濃度が…… と考えたところで透は気絶してしまうのであった。

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