第27話 びっくりフルーツの秘密とトオルの告白だよね。
「このシカのステーキにかかっているのは確か、びっくりフルーツだったよね? どうやってこの甘酸っぱい味が出るとわかったのだ?」
「それは、魔力をびっくりフルーツの皮だけに通してみるとわかるよ?」
「皮だけに.……? それはどのようなイメージでやるんだい?」
「え? びっくりフルーツの皮をむく時のようなイメージで皮だけに魔力を通すんだよ?」
マーカスが僕以外のみんなに困った顔を見せる。そんな非常識なことは言ってないはずだけどな。しかし。ガラルも何言ってんのかわかんねえという感じで僕に言ってくる。
「あートオルよ、普通は魔力を皮だけに通すなんてことはできねえ、そこまで繊細な魔力操作は魔力が多くなるとやりにくくなるもんだからな」
「え? 僕はできるけど……何故なんだろう?」
「何か新しいスキルを獲得したのかもしれないな。トオルは見た感じだと魔力はAは超えてる。Sに行ってるかもしれねえ。その上で緻密な魔力操作は普通は精神的に持たないものだぞ」
そうなんだ。じゃあ、今自分のステータスを確認しておこうかなと、心の中でステータスオープンと言って、自分のステータスを確認する。
名前:トオル カムロ
性別 男性
年齢 18歳
ステータス
体力 D E→D
魔力 A+ C→A+
筋力 E F→E
器用さ D E→D
防御力 E F→E
速さ D
運 B
スキル
鑑定 レベル10(マックス)
異世界翻訳言語スキル レベル10(マックス)
アイテムボックス レベル10(マックス)
天賦の才能 魔力の本質
ユニークスキル
ハガレ○式錬金術 レベル10(マックス)
錬菌術 レベル2.5 2→2.5
魔言 レベル2
称号
女神ミリオニアの加護 国家的バブ術師
たらたらし
おお、結構ステータスが上がってる!体力がDになってるし、筋力と防御力がEになってるのも稽古の成果が出てるのかも!
器用さは最近料理とか、いろいろやってるから鍛えられているのか。でも魔力がA+なのと、魔力の本質……このスキルは何らかのかかわりがある気がするなあ。
あと見逃してはいけないのは錬菌術が2.5になっていること。これが上がったのはセレスの浄化の時に確か魔細胞を強化すれば魔力量を増やせるみたいなことをやったんだよ。あれって自分自身の魔細胞を進化させる錬菌術を使ったってことだもんなあ……
僕はだんだん、人ならざる者に近づいていることを自覚してしまった。魔力の本質は魔力量が上がれば上がるほど、魔力操作が緻密になるというガラルが言っていた常識とは正反対のスキルだった。
錬菌術レベル2.5に関しては……? なるほど植物の細胞を形を知らなくても完全に作り出せるみたいだ。あとは……動植物の一部の細胞強化もできるらしい。うーむ、ちょっとやっていいのか考えなきゃいけないところだね。
この後はびっくりフルーツについて、マーカスが見分けが付くなら買っていきたいと言い出したので、セスと僕でびっくりフルーツの薄皮に魔力を流して実際に色が変わるところを見せてあげたよ。
30個くらい倉庫から持ち出して銅貨2.5枚で仕入れて、銅貨5枚で売るそうだ。味さえわかれば最高においしい果実という評価が人族ではされているらしく、これは高値で売れるとマーカスはホクホク顔だったよ。
「ごめん! トオル、実演販売でもこれを見せたいから、やり方を教えてくれないかい?」
「それくらいならいいですよ、マーカスさんはどれくらい魔力量があるんですか?」
「私の魔力量はDだね。これくらいだとまだ少ないほうだから多分覚えることができるだろうけど……」
多分、大丈夫ですと言って、びっくりフルーツを実際に薄皮一枚分剥いてもらう。そしてその薄皮一枚に魔力を通す感覚を養ってもらえばいい。ちなみに剥いたびっくりフルーツの味はシャインマスカットだった。この味は初めてだ! と驚くマーカスたちを見て、疑問が浮かんだ。
びっくりフルーツは何を判定にして、味を決めているのだろうか? 何か不可思議な力を使っているとしたら何かの時に使えるかもしれないなと心のメモに書き留めておくことにした。
そして、ハッと思い出す。オババと一緒に風邪薬を作ったことを忘れていた! オババとは定期的に会って風邪薬や他の薬を作る約束をしていたはずなのに色々ありすぎて忘れていた……オババのたまらなくいい香りを思い出していると、リリィとマムがジト目を向けてくる。
『トオル君、誰か別の女のことを考えている香りがするわ……』
『妾にもわかるぞ、トオルはいったい何人の女と関係あるんじゃ……』
じーっと見られるので仕方なく観念して、オババと風邪薬を作ったことをマーカスに話す。
「なるほど、コストは同じなのにトオルの能力で強化された風邪薬か……薬師ギルドを通せば……」
マーカスはぶつぶつと考え込んでいる様子だったが、明日オババの家にいって見せてもらうことにしたみたいだよ。
リリィとマムはそんなにオババの香りが好きなら今日の夜、大人の女のいい匂いを覚えさせてあげる、と何故かお冠だ。オババにトオルを奪わせないと必死な二人であった。理由はよくわからないらしいけど。
そして、マーカスとマムは部屋から出ていき、ガラルとセスとリリィに異世界から来たことを告白する時が来たよ。うう、ちょっと緊張するなあ。
「実はね、僕はアナザークラウドとは異なる世界から来たんだ!」
「おう。やっぱりか」
「やっぱりそうね、異世界翻訳言語スキルを持っているんだもの」
「特殊なスキルに、一般常識のなさ。これで異世界から来ていなかったらトオル様の親御様の教育を疑うところでしたぞ」
ええ、みんな気づいていたら隠す意味なかったじゃん。聞いたところによるとリリィは出会った時から異世界からの勇者かもと思っていたらしい。オオカミ語の魔言スキルが何故か僕に効いた時からその可能性を考えていたそうだよ。
女神ミリアに転生させてもらい、アナザークラウドに来たことは言ったが記憶を消して転生をループさせられていることは言わなかったよ。まだいうべきではないと思ったからね。
後は元の世界にはどんなものがあったのか、文化的にはどう違うのかについて質問されたりしたよ。月並みなところだとやっぱり馬なしの自動車や空を飛ぶ乗り物について語ると驚かれたね。魔法はどんなものがあるのかと聞かれて魔法はないよと言ったら、嘘だ! そんなすごい乗り物が魔法なしで動くの!? とみんなびっくりしてたよ。
さあ、お風呂に入って今日は寝るぞーと思ったけどいつの間にか待機していたリリィとマムが手をワキワキさせて風呂に侵入してきたので、僕はすぐに風呂を出ようとしたんだけど捕まってしまった。
なぜかマムの胸に挟まれるとものすごく安心感がやばくて、されるがままに丸洗いされた後、お互いの匂いを嗅ぎながら熱い夜を過ごしたよ。
実は今日の夜が僕が能動的に熱くなった初めての夜かもしれない。それはこの世界に根を下ろすことに覚悟を決めたせいかもしれないね。
熱い夜を過ごした後、リリィは寝てしまったので、マムと少し話をする。
「マムは呪いが解けたらもっと大きくなるのかなあ、なんか想像つかないや」
「妾はもっと筋肉質で大柄なのじゃが……まあトオルがどうしてもというなら元の姿に戻ってもこの姿で過ごしてもいいの。子供というのは楽じゃ」
「呪いが解けなかったら……? もしくは一時しのぎにしかならなかったとしたら……」
「トオルが気に病む必要はない、これは妾がランド村を守るために代わりに受けた呪いなのだ。いずれ胎児に戻り、塵に消えるとしても誇りは守られる」
「マム……」「トオル、そなたの解呪に期待はしているが気負う必要はないからの」
その後は二人とも見つめ合い、抱き合いながらゆったりとした夜を過ごすのであった。
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