第8話 強くならないといけない理由を知ったよね。

前書き:他の章の文は訂正しましたが、ミリアとリリィの名前がごっちゃになってました。本当に申し訳ありません。統合失調症ってこわい…… 頭の中で考えてることがまとまらないんです。















トオルです…… オシオキの事を全く覚えてないとです。トオルです…… リリィお姉ちゃんを見るとドキドキとムクムクが止まらないとです。トオルです…… トオルです…… トオルです……


 トオルの世代である赤いカーペットで芸をする番組の某芸人を真似てみたが、それだけあの一夜はトオルの気持ちに火をつけた。オシオキの内容はまったく覚えていないのに、だ。本格的にリリィお姉ちゃんにハマりつつあると自覚しているも、愛しいお姉ちゃんを思う気持ちは止められないものになっている。


 ひとまずこの話は置いておいて、僕とリリィお姉ちゃんの仲はかなり進展したと思っている。だが、強くならないとリリィお姉ちゃんをお嫁にもらうことはできない。なのであの夜の翌日、本格的に稽古をし始めたのだが、これがかなりのハードなものであった。


 ガラルは剣を、リリィお姉ちゃんは槍を教えてくれる。そして、あの謎の白いオーラを出すものは纏い術(まといじゅつ)と言うらしいよ。


 この村で一番の纏い術使いはガラルでもリリィでもセスでもなく、大岩をガラルが切った時にバカなことを言って、ガラルに斬られそうになっていた村人、ゴン太であった。なんと纏い術の稽古担当はゴン太なのだった。


 僕はそれを最初に聞かされた時、信じられない気持ちでいっぱいであったがガラルは真剣な顔をしてマジだ、と語った。


「いいか、ゴン太は間が抜けているように見えるが纏い術の技量は村どころか、魔物達の楽園の中でも5本の指に入る。武器使いの才能はなかったが、拳と拳の勝負なら俺でも勝てねえ。


後な、これだけは心しておけ。あいつは武の道を真剣に極めようとしている。だから強くなる理由を持たずに、真面目に取り組まない奴は嫌いだ。ゴン太に教わるなら、洗礼を浴びると思うがそれはトオルのことが嫌いでやるわけじゃないってことだけはわかってくれよ。」


 そして朝ごはんを食べ、稽古を始める。稽古の順番は意外なことに纏い術が一番始めであった。しかも纏い術ができるようになるまでは剣と槍の稽古はお預けらしい。トオルが内心不満に思っていると、呼ばれてきたゴン太は非常に冷たい眼差しでこちらを睨んできたんだ。


「良いか、よく聞くだ、トオル。お前の体はなっちゃいねえだ。今までどんな生活をしてきたかわからねえが、そんなヒョロっちい体じゃ、守りたいものなんて全部お前の前で死んでいくだ。その武を舐め腐った性根と共に叩き直してやるだ。


良いか、錬金術に関してはトオルが師匠だ。だがなぁ、纏い術に関しては誰が師匠がわかるか? オラだ。


今回はガラル村長が呼びにきてくれたかもしれねえが、次からはお前がオラの家に通うだ。そういう上下関係もわからねえ、青二歳が口尖らせてんじゃねえだ。」


 ゴン太は敵意剥き出しで、僕を説教してきた。納得いかない。僕は自分から強くなると決めたわけじゃないのに。無言で俯いているとゴン太はさらに続ける。


「オラが言ったことに納得いかねえって感じだなぁ。お前は甘ったれのクソ野郎だ。リリィちゃんにこれから守ってもらっていくつもりだなぁ?? 


そんなことでこの世界では生きていけねえよ。良いか? 人族と魔物は今は争っちゃいねえが、奴らは虎視眈々とこの森を狙ってるだ。もし戦争が起きた時にガラル村長とリリィちゃんにおんぶに抱っこでしがみつくだ?? 


よく考えるだ。お前の錬金術っていうスキルがバレれば奴らは簡単にこの森に攻めてくるだ。お前以外を生け取りにして魔物なんて全員殺しちまうだ。お前を奴隷のように扱って、絶望の中で生きてるか死んでるかわからないままお前は生きる。それでも良いだ??」


 トオルはゴン太のいうことを聞いて言葉を失った。リリィお姉ちゃんに甘えていきていくつもりなのは図星だったからだ。そしてこの村に来た時に聞いたことを思い出した。この村、いや魔物達の楽園は人族に経済的に支配されている。


 村の支出の帳簿をみせてもらったが、収入よりも支出が圧倒的に多く、エンシェントドラゴンの溜め込んだ財宝と人族の貴族に対する借金で財政を賄っている。この状態をなんとかするために僕の錬金術で貢献して財政を立て直すつもりだったがそうは問屋がおろさないらしいな。


 錬金術のことがバレたら、今までつけてきた借金のカタを取りに来て、僕は良いように使われ、邪魔者の魔物は殺されるか奴隷落ちだろう。


 アナザークラウドには奴隷制度がある。もちろん法で奴隷の権利は保護されているが、難癖をつけられて、犯罪奴隷にされたらどうなるかわからない。鉱山で使い潰されるのは良いほうで、性奴隷にされて○み者にされた挙句、拷問されて○されるかもしれない。


 もしそんなことがリリィお姉ちゃんに起きたら僕は自分を許せるだろうか。無理だろう。僕は異世界転移して勝手にハッピーな暮らしができると思っていたけど、そうじゃない。自分の力でハッピーエンドにしなきゃだめなんだ。


 ゴン太はそういう覚悟ができていないとだめだということを言いたかったんだろう。胸が熱くなる。僕はこの時、強くなる理由ができたんだ。


「やっと現状を理解しただ。トオル、お前は強くならなきゃいけないだ。誰よりも。それを理解するのが第一歩だ。纏い術はお前の力となるだ。剣や槍は纏い術ができてからやれば伸びるだ。トオルが真面目に稽古する限り、オラはちゃんと教えるだ。分かっただ? 返事は??」


「はい、ゴン太師匠!!」


「よろしいだ。では稽古を始めるだ。その前に簡単に教えておくことがあるだ。それは纏い術には様々な種類があるだ。」


 ゴン太がまず纏い術の種類を説明してくれるみたいだ。まず体を鍛え上げ、その武力を身に纏う『闘気』。そしてそれの対になるのが体に流れる魔力を身に纏う『魔気』。


 闘気は攻撃力を高める纏い術だそうだよ。魔気は防御力を高める纏い術。ごく稀にどちらも纏えるものがいるらしいが同時に使うものは確認されていないらしい。


 纏い術は誰でも覚えれば使えるが、使える者は少ない。スキルとして明文化されてないのも知られていない理由の一つらしい。それほど纏い術は極めるのが難しいようだ。


 話を戻そう。纏い術には派生があり、それは当人の資質によって決まるようだ。例えば闘気から派生する『覇気』。恐ろしいほどの攻撃力を誇り、ドラゴンにも打ち勝つほどの威力を誇る。


 魔気から派生する『仙気』。攻撃を無効化する包容力があり、ドラゴンのブレスも無効化する鉄壁の纏い術。


 後は魔族に伝わる纏い術『邪気』や天使や一部の高潔な神官にしか使えない『聖気』が存在するらしい。どのような効果があるかはわからないそうだ。


「トオルは見た目的には魔気しか使えなさそうだな。まあオラも闘気しか使えないから人のことは言えないんだな。」


 そりゃそうだよ。僕は体を鍛えてないから闘気は無理だ。だけどどっちも使えるようになりたいなぁ、『魔闘気!!』とか言ってかっこつけれるようになりたい。


「もうそろそろ、お昼になるから今日の稽古は終わりだな。まずは魔力を感じ取ることから始めるだ。」

 

 ゴン太師匠はそう言って、僕に座禅を組むように指示をする。魔力は体内の血流と共に流れるものらしい。ゴン太師匠も魔気は使えないものの、魔力は感じとれるそうだ。


 ゴン太師匠が魔力を掌から流し込んでくる。それはどこかヒンヤリとしていて、こんなものが自分に流れているのかと心配になる。だが感覚は掴めた。自分の血流に沿ってヒンヤリとしたものをさがす。すると見つかった。


 身体中にヒンヤリとしたものが流れている。それを血流に沿ってグルグルと回していく。だんだん魔力のようなものが熱く感じてきたな。


「そう、良い調子だべ。飲み込みが早いだ!! それを体の表面に纏わり付かせるように増幅しながら循環させるだ!!」


 ゴン太師匠に褒められるのは素直に嬉しい。ゴン太師匠の教えに習っていくと青白いオーラが体表に出た!! これが魔気か!!


「一発でできるのはすごすぎるだよ!! センスあるべ!」


 まあ天賦の才能っていうスキル持ってるからな。僕のセンスではないけど、このスキルをくれたミリアに感謝だな。こうして初めての稽古が終了した。


 午後からは錬菌術で色々実験するぞ!!その前に昼飯だけどな。














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