第29話 ランドロス村の異変とマムの死闘 (マム視点)

「大変だ! ランドロス村に物々交換に行ったんだが、ゴブリン族の人ひとりいやしない! 誰もいないんだ!」


「何!! それはどういうことじゃ!」


「マム様! それが無人なんだよ! しかも村人たちの服だけが残されてて瘴気が立ち込めていたんだ」


「それは……一体どういうことじゃ?」


「……わからない。とにかくガオウ様にも報告してくる!」




このことはすぐにがオーガ族のキングであるガオウにも伝えられた。そしてすぐに捜索隊が派遣されることになった。


「捜索隊のリーダーだが……」


「妾がリーダーになる!」


「だが……何か嫌な予感がする。キングの勘がマムに……危険なことが起きると告げているのだ」




オーガキングの固有スキルにキングの勘というものがある。未来に自分の大切なものに何かがあるとそれを訴えかけてくるというものだ。それが今回は発動しているため、マムの参加を渋っているのであった。




だが、マムの参加によって事態が解決するような気もしている。マムやマムを慕う村人たちによってガラルは説得され、渋々マムの参加を認めるのであった。




「必ずランドロス村の異変を突き止めるのじゃ!」


「「「「おうっ!」」」」


「マムよ、いや愛しい娘よ、必ず無事で帰ってくるのだぞ」


「はい。父上」




ランド村とランドロス村は2キロほど行った森の道でつながっている。ランドロス村に近づくにつれ、霧と瘴気がだんだんと立ち込めていった。鳥のさえずりの声は全く聞こえなくなり森は不気味に静まり返っていた。




「これは……不気味じゃのう……先ほどはここまで霧が立ち込めていたのか?」


「いや、俺が確認したときは霧は立ち込めていなかった」




これは何者かに襲われた恐れがあるとマムは考え、4人の腕の立つ村人に伝えた。


「そういえば、ランドロス村には邪神の器になる神像があるというではないか。それを狙って邪神教が攻め込んで村人に何かした可能性があるのう」




「邪神教? それは何だ?」


「太古に1人の創造神が10人の神に分かれたとする神話が残っているのじゃ。それに出てくる1人の神が変質したものが邪神だとされるのじゃ。そしてその邪神を祀る教団の名が邪神教なのじゃ」


「邪神教……」




そしてランドロス村についたマムたちがついたころには、村があったとされるところに「何も」ない様子だった。瘴気は重く立ち込めていて、魔物でも瘴気にむしばまれる恐れがあるほどであった。




「そんな、俺が村の様子が確認したときにはまだ建物はあったのに!」


「これはどういうことじゃ……」


「そんな……人どころか村すらなくなるんだなんて」


「あいつら……」




「これはこれはお母さま!! ???の愛しいお母さまではないですかあああ」


霧の中から突如、甲高い女の声が響く。マムと4人の村人はとっさに警戒態勢に入る。それに???の部分はノイズがかかったように聞こえなかった。




「それは話してはならぬことだぞ」


「これは失礼、つい感情が高ぶってしまったよ」


どうやら二人組の女のようだ。この霧と瘴気の中で何も気にすることなく話しているあたり、どうやらランドロス村に何かをした張本人のようだ。




「貴様らは何者だ! 邪神教の手のものか!? それにお母さまとはどういうことだ!」 


「ランドロス村に何をしたんだ!」


「あの気のいい奴らを返せ!」


「一体村人に何をしたんだ!」




「そんなに一遍に話しかけられてもわかんねえよ」


「それに知らなくていい奴らが紛れているな」




「それはどういうことじゃ!!」


「まだお母さまには知らなくていいことだ」




マムはだんだんと怒りを感じてきていた。瘴気の影響で感情が暴走するのだ。


そして我慢ができず、攻撃をすることにした。




「何を訳をわからぬことを!! ランドロス村に何をした!」




マムは怒りで瞳を光らせ、大弓を構えた。その巨体から繰り出される一撃は、まるで雷が落ちるような速さで放たれた。




シュンッ!


矢は霧を切り裂き、音もなく敵に向かって飛ぶ。だが、二人組の片方は軽々とそれを避け、にやりと笑った。




「おお、さすがオーガ族のプリンセス。見事な腕前だぞ。しかし、そんな小細工が我らに通じるとでも?」




女の声が響く中、もう一人が霧を操るように手を動かす。すると、霧がさらに濃くなり、マムの視界を奪っていった。




「くっ……この瘴気、ただの霧じゃない! これは我らの体にまで侵食してくる……!」




仲間たちはマムの背後で怯え始めた。




「マム様、このままでは……!」


「しっかりしろ! 妾が何とかする!」


マムは言葉で自らを鼓舞し、大きく深呼吸をする。目を閉じ、耳を澄ますと、微かな音が霧の中から聞こえてきた。相手の動きを捉えた。




「そこじゃッ!」




バッ!


マムは一気に獣化し、巨大な爪を振るった。風を切る音と共に、敵の片方に向けて地を揺るがすような一撃が炸裂する。しかし、敵は霧の中に消え、再びその姿を現さなかった。




「逃げ足が速いな……!」


次の瞬間、マムの背後から強烈な瘴気の波が襲いかかる。霧に隠れていたもう一人が、マムの背中に狙いを定めて攻撃を仕掛けてきたのだ。




「マム様、危ない!」


仲間が叫んだ。


だが、マムはすぐに反応し、咄嗟に大弓で防御する。瘴気の波が弓にぶつかり、爆発的な衝撃が辺りに広がった。マムは足元を揺るがされながらも踏みとどまり、再び敵に向かい直す。




「妾を……甘く見るなよッ!」


ここでマムは、体内に秘めた力を解放する。彼女の銀髪が逆立ち、体がさらに巨大化する。これはオーガ族特有の「獣化」の極限状態だ。彼女の筋肉は隆起し、皮膚は硬く、まるで鉄のように変化する。さらにあふれる闘気を纏う闘気術を発動する




「これが……オーガ族の力じゃッ!」


マムは怒りの咆哮を上げ、一気に二人の女に突進する。獣化によって膨大なパワーを得た彼女の拳が霧の中を裂き、一撃で敵の瘴気を砕いていく。




「ぐっ……! やるな、だがこれで終わりではないぞ……」


霧の中から、瘴気に包まれた黒い影が再び現れる。二人組の女はさらに強大な力を解き放ち、マムに向けて巨大な瘴気の刃を放つ。だが、マムはその攻撃に怯むことなく、全力で突き進む。




「妾が……この村の仇を討つのじゃ!」


そして、彼女は瘴気の刃を真正面から受け止め、自らの力でそれを弾き返す。その瞬間、巨大な爆風が起こり、霧が一瞬晴れ渡った。




女たちが倒れたかのように見えたその瞬間、突然空気が一変した。


「――ッ!」


マムの目の前で、村人の一人が瘴気に巻き込まれ、体が崩れ始めた。彼の皮膚は一瞬で溶け、瘴気に飲み込まれて霧の中に消え去ってしまった。


「そんな……!?」


マムはその光景に呆然と立ち尽くし、絶望の色が浮かぶ。




「妾の……力ではもう……!」


その時、頭の中に突如として響き渡る、苦しげな声が聞こえた。


「……まだだ……諦めるな……!」


マムは驚いて周囲を見回すが、誰もいない。ただ、耳の奥に何か重く、苦痛に満ちた声が響き続ける。




「……誰じゃ? この声は……?」


「女は……度胸だぞ」




すると、その瞬間、時間が止まったかのように周囲の動きが凍りつく。瘴気が停止し、先ほど消えていった村人たちが一瞬、虚空に戻ってきたかのように見えた。


「これは……一体……」


苦しそうに呻く声が、再びマムの耳に届く。


「……巻き戻している……だが……限界だ……」




マムはその言葉を理解する前に、自分の体に異変を感じた。力が溢れ出し、体が軽くなり、瘴気の影響が消えていく。


「……誰が……妾を助けているのじゃ……?」




心の中で問いかけるが、返事はない。ただ、声は苦しげに言葉を絞り出す。


「……あと少しだけ……頑張れ……!」




その瞬間、時間が再び動き出し、巻き戻されたように瘴気が薄れ、消えかけた村人たちが再び元の位置に戻ってくる。


「な、何が……起こっているのじゃ……?」


マムは驚きつつも、何があったのか理解できないまま、再び構える。




その時、敵の一人が興奮した声で叫んだ。


「この声……なんて興奮するの! やはりあなた……???なのね!!」


だが、その瞬間、ノイズがかかり、その名が聞き取れなかった。




「それはだめよ」


もう一人の敵がすぐさま制止するが、彼女たちの興奮は止まらない。




彼女たちが興奮している一方で、マムは自分の身体が次第に強化されていくのを感じた。敵たちの声は謎めいており、その正体に辿り着けないままだったが、目の前の戦いに集中することを決めた。


「どうやら、この力……今しか使えぬようじゃ。妾が終わらせるのじゃ!」




「今しか使えぬようじゃ。妾が終わらせるのじゃ!」


マムは身体中に溢れる力を感じ、銀髪がより一層輝きを増す。彼女の瞳は鋭く光り、目の前にいる二人の敵を捉えた。風が止まり、静寂の中でただ二人の息遣いが聞こえる。




「さあ、これで終わりにしようではないか!」


マムは再び大きな拳を構え、地面を蹴って一気に突進する。彼女の動きは霧を引き裂き、まるで流星のように二人の敵へ向かって一直線に飛び込んでいく。




「これがオーガ族の力じゃ!」


マムの拳は、瘴気の刃を打ち破り、敵の一人に直撃する。しかし、その瞬間、もう一人の女が何かを呟いた。




「……その力、誇りに思うがいいわ。だが……お前の誇りこそ、我らが狙いだ」


突然、マムの周りに黒い霧が渦巻き始めた。彼女は驚いて反応しようとするが、その霧は彼女の体にまとわりつき、まるで捕らえられたかのように動けなくなっていく。




「くっ……! この瘴気……!」


マムの体が重くなり、力が奪われていくのを感じた。霧の中から二人の女がにやりと笑いながら近づいてくる。




「お母様が強いことはわかった。だからこそ、我らはお母さまを生かすわ。だが、その誇り高い姿を……幼き頃に戻してやろう」




その言葉と同時に、黒い霧がマムの体に吸い込まれるように浸透し、彼女の全身に異変が起こった。筋肉が萎縮し、身体が小さくなり始める。




「な、何じゃこれは……!? 妾の体が……戻っていく……!」


彼女の強靭な肉体がみるみるうちに幼い少女のように変わり、銀髪も短くなっていく。マムは抵抗しようと必死に力を振り絞るが、黒い霧が彼女の全身を縛り付け、完全に成長を止めてしまった。


「ふふ、これでお前は二度と戦士としての力を発揮できまい。幼子の姿で、一生苦しむがいい……」




二人の女は笑いながらマムを見下ろし、その体に完全な呪いをかけた。呪いは彼女の体だけでなく、心にも深く根を下ろし、再び成長することができないという絶望を植え付けるものだった。




「くっ……! 妾を……このような姿に……!」


マムは倒れこむが、完全に呪いに囚われた体は自由に動かなくなっていた。かつての力強い姿とはまるで別人のように、小さく幼い体になってしまった彼女に、敵たちは勝利の笑みを浮かべた。




「これで満足かしら。お母さまには、まだ我らの計画を見届けていただかねばならぬからな……」


 「さあ、ここでの仕事は終わりだ。撤退するぞ」


二人の女は笑いながら霧の中へと消え、瘴気も次第に薄れていった。マムは呪いによって立ち上がることができず、幼い姿のまま、力なくその場に横たわっていた。




「……妾の体が……ランドロス村が……」


彼女の瞳には、絶望と悔しさが浮かんでいた。だが、その時、再び耳に苦しげな声が聞こえてきた。




「……まだ終わりではない……僕の力で消えないようにしたから……」


「……誰じゃ……妾を助けているのは……?」




声は返答せず、ただマムの中に微かな希望を残していった。彼女は何とかして立ち上がろうと試みたが、呪いの影響で体が思うように動かず、再び倒れ込んでしまう。




「このままでは……妾は……」


マムの目に涙が浮かび、彼女は次第に意識を失っていった。暗闇の中で、誰かが彼女を見守っているような感覚が残ったまま、マムは静かに気を失った。












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