第32話

「絶対本性を暴いてみますわ!!」


早朝から快活とした声が辺りに響いた。

その声で電柱に留まっていた鳥たちが鳴きながら飛び散っていった。


「朝早くからお元気ですね」

「当然ですわ!私をこけにしたことを後悔させるひなんですものっ」


そんな調子で思い切りよく出かけて、いつの間にか二限目の休み時間になっていた


「いたわ、あそこね」


西園寺の目線の先には例の裕太がいた。

そこでは一人の女生徒と話している


「あら?橘さんですわ。」

「橘というのは、以前からお嬢様が誘っている方でしょうか」

「ええ、そうですわ。·····まさか、学校の中で痴漢ですか!?」


そう考えるやいなや、さっと後ろに振り返りながら言う


「あの男が何をしでかすか、もう少し近くで観察しますわよ!」


あくまで小さい声で、それで前のめり気味な感じで確認をとる。

そして、二人の会話が十分に聞こえる距離まで近づいた。


「ちょっと、······話したいことがあるっていってるでしょっ」

「いやぁ、だからまた今度で〜」


間延びした声で逃げたそうな姿勢で遠回しに拒否している


「それ何回言うつもりよっ!」

「······お、俺にも用事があるんだ!」

「ふ~ん?その用事って、なに?」


そんな拒否を真っ二つにして、すごい剣呑で問いただしてくる


「えー、っと。す、雀に餌やり!」

「私をおちょくっているの?」

「·······すんません」


誤魔化そうとしようとしたが、今や無様に謝っている


「ねぇ、女の子との待ち合わせとか、じゃないわよね?」

「女子?待ち合わせ?」

「聞き返さないで。ないの、あるの?」

「········ない?」

「·····そ、そう?別にそんなこと気にしていなかったのだけれど、私が思うに友達の一人や二人は作ったほうがいいわよ?」

「?·····俺、もう友達作った気でいたんだけど?」

「へ?·····誰なのよその人」

「いや、橘さんだけど」


さっきまでムスッとしていた顔が一瞬で良くなった


「ふ、ふーん。私たち友達なんだ····」


自分でも親しくしてきたと思っていたが、真正面から言われると中々の破壊力がある


(え、何その曖昧な返事!)


律花の心は嬉しさで一杯だったが、裕太から見ると、友達と言われて急に後ろに振り返られてなにかを語っているように見える。

まあ、多くを語らなくてもわかるだろう


(俺って、認知外だったのか!?翼とラブラブだがら、周りが見えないってか。やかましいわ!)


「と、とりあえず俺は、先行くね」

「え、えぇ呼び止めてごめんなさい」

「ああ、いいよ」


二人がドキマギしながら互いに離れていく


「な、なぜですの·····普通に健全な会話をしただけですわ」


そして、そこ場にポツンと残っている二人。

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