第24話
「眠い。今すごく眠い」
「ちゃんと寝たの?」
今は姉さんと登校中だ。今更だが、まあこの姉が目立つ。そもそも肩書きがすごすぎるんだよ。
まあ、平たく言うと——
「なんで一ヶ月で喋った人の数を今日で喋った人の数が優に超えているんだっ‼?」
「あっ!坂本先輩こんにちは〜」
「えぇ、こんにちは。今日も頑張ってくださいね」
直後に黄色い悲鳴が聞こえる。返事してくれたーとか、尊敬の意などの言葉が飛び交う。その都度に気配を極限に無くしているのに時々誰やねんあいつみたいなのが聞こえてくる。構図としては車椅子に隠れるように中立ちしながら歩いている。
「あのー。そろそろ一人で行っていいですか。車椅子なら他の人に·····」
「なんでー?別に二人でいっても——あら、ご挨拶ありがとうございます」
何だこの豹変具合。挨拶が来て返事をする時間約0.1秒。ツッコミを心の中で呟いて歩いていくこと十分後
(あ~、これハズれだわ)
そう思った理由はすぐ目の前にある。俺は胸中で愚痴る。
「これはこれは坂本えりすっさん‼今日も麗しいぃ!!」
「·······あなたは、·····たしか?あれ?」
「芥塵先輩だよ」
「ぁあ!芥塵さんね!」
「なんと!僕の名前を覚えていてくださったとは!」
「うふふっ、それで何かご要件があるのですか」
「えぇ、早速ですが。こほんっ、僕と付き合ってください」
「··········」
「··········」
なんか橘さんに告った先輩の面影を感じる。名前は忘れた。ていうか、我が姉無反応すぎてお相手も困惑しちゃってる。
「····あらっ?ゴメンナサイ。私、付き合ってる人がいるので」
「なっっっ!‼???」
開けた口が開いたままで、目をひん剥いている。だが、少しは理性は保っているようだ
「ち、····ちなみにその彼氏はだ、れ」
「あなたの目の前にいる人ですよ?」
「あ、どうも山田太郎です」
「嘘つけ‼名前を教えるつもりがないのはわかりました。だが、なんでそんなぱっとしないやつなんですか!?」
「·······今、何と言いましたか」「そうだそうだ」
「え、僕ははただ·····」
「ただ、何ですか」「はっきり喋ろやこの野郎」
「野次馬は黙ってろよ!?くっ、ボクは諦めませんからね!いつか、あなたを振り向かしてみます!」
「あーー逃げるな卑怯者。玉砕してから帰れー」
「ダマレっ!!!」
そう言いながら走って去っていってしまった。その背中からは何とも言えない悲壮感やらなんやらがあった。ドンマ
「ていうか、この作戦効くんだね?」
「ん~~微妙かな?やっぱり今度からは抱きついて誇示したほうがいいかも·······」
「やらん」
でも朝からいい劇というか眠気覚まし代わりにいい薬になってくれた。おかげで全然眠くないけど疲れた。姉さんを車椅子に乗せて学校について姉さんと別れて教室に向かう途中の階段。
「橘さんおはよ」
「あぁ坂本くん。おはよう」
書類の束を重たそうに運んでいる橘さんと鉢合わせた。なぜか最近偶然会う機会が増えている。まあクラスメイトだからそりゃそうなんだけど
「この書類を職員室に運んでくれっていわれてね、今雑用をさせられているのよ」
「へー、それはご愁傷さま?」
「まあ弱音を吐く気はないわ。早く終わらせるつもりよ」
「そうか、じゃあ俺は先に教室に向かってくよ」
「えぇ、あと少しでホームルームも始まるかそのほ——」
「カァーカァーカァー」
「え、なに!?って、ひやあああ!!」
「······っ」
突然窓にカラスが激突してきた。その衝撃に驚いて体勢を崩してしまった橘さんがこっちにおちてくる。平面の地面なら余裕でキャッチできたが、ここは階段なため、むやみに動けない
だから、ここは俺が橘さんの下敷きになって衝撃を最小限にしたほうがいい
「ふっ······!」
タイミングを見計らって受け止める
「ぐっ·······」
だが足を崩してしまい、体勢が崩れる。
「くっ····、さすがに痛いな。大丈夫か」
「·····うん、ありがと。······あ、とその、そんな強く掴まないで······」
「っあぁ、すまんすまん。でも、見た感じ怪我がなくてよかったわ」
「うん、ありがと」
それを最後にいそいそと落とした書類をかき集めてすぐに去っていってしまった。
「この手の感触が胸のものじゃないことを祈ろう」
この日、橘律花は学校の終始ぼーっとしていたそう
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