第30話

「お嬢様!あいつです!」

「絶対に捕まえなさい!!」


皆さんどうもこんにちは、またはこんばんは。

わたくし坂本は今世紀最大の危機に直面しています。


「なんでやっ、儂がなにしたっちゅうねん!!」


遡ること数時間前。

いつものように登校した穏やかな日のこと。

俺は教室の角ですごく困った迷いの種を持っていた。


「どうっすかなぁ、これ」


手に持っているのはいつぞやの西園寺さんのブツである。

これまた困ったのが、普通の生徒なら良かったがバッチバチのゴリッゴリの令嬢。

周りがお嬢サイコーお嬢サイコーうるさいからネットで調べてみたら一発で出た。

あの人は、超大手電化製品店の社長の愛娘その人

規模で言ったら、ト○タ自動車と同じそれ


「やばいお、動悸が、動悸ガガガが」


隠蔽か?やっぱり隠蔽工作しかないか?

でもバレたらバレたでなにか言いがかりをつけられそうだ。

ここは堂々と行ったほうがいいのか?


「裕太どうした?そんな縮こまって」


そんなときに我が救命主が来てくれた。


「今すぐ答えてくれ!右左どっち選ぶ!?」


右だったら提出。左だったらノン提出

第三の選択は知らん。


「え、どうした肩なんか掴んできて?えっと、膵臓?」

「食い散らかすぞ」


くっそ、だめだ。わからん。もういっそ何も考えなくてもいいのではないか?


「どうしたのよ、そんな世界の終わりみたいな顔をして」


そこに現れた橘さん。多分今来たばっかりのとこだろう。

真面目な橘さんならもしかしたら?


「お願いだ。橘さん。俺はもう君しかいないんだ」

「·····へっ!?そ、それってもしかして、こくは—」

「右左どっちを選ぶ?」

「·····それだけ?」

「ああ、それだけだ。ただ、これはすごく大事なもので—」

「勝手にすればっ!」


回答拒否された。なんか小声で「期待しなきゃよかったわ·····」なんて聞こえたが、何を期待したんだ?

はっ、もしかして俺の破滅?


先延ばしにずっと考えていたら、もう昼休みになってしまった。もう、ここは腹をくくって行くしかないのか?

いや、深刻に考えすぎなんだ。そうだよ、実際人生の大半の悩み事は杞憂に終わるって言うしここはぱぱっと片づけよう。


「すいません、落とし物なんですが」

「ん?おお、ありがとな」

「はい、失恋します」


ほら難なく行けたぞ。あとは教室に帰るだけ·····


「ん?なんだこの、か····べ······」


見上げると、そこにはごっついスーツを着た怖い人がいた。遮光していて、視界が真っ暗になりそう。


「あ、すみません。いまどきますね」

「違う。私が用があるのはアナタだ」

「へ、へぇー。そうですか」

「さっき持ってきたのはお嬢様のだな」


その言葉を聞いた瞬間すぐさま逃げ出した。

ああ、今思うと失敗だったなって思う。だって普通に怪しいじゃん?ここで立ち向かっておけばよかった


「お嬢様!あいつです!」

「絶対に捕まえなさい!!」


そして、護衛らしき人が伝えたのかお嬢様こと西園寺さんが参入した。さらに、三十分後······


「ハア、ハァ。やっと捕まってくれましたか。観念なさい!この野蛮人!」

「おかしい!なんで俺が野蛮人なんだ!俺は紳士だぞっ!」


今はゴツい人に地面に押さえつけられている。


「紳士だったのなら痴漢なんてしませんわ」

「それはお前の思い込みだな。俺は本当に落とし物を渡そうとしただけだ」

「ふん。減らず口ですわね。いいですわ、わたくし直々に逮捕して差し上げますわ」


そう言って、どこからともかく手錠を出してくる


「なんて物騒なもの持ってるんですかね」

「ふふんっ。それはあなたが来ると確信があったからですわ」


そこから俺を拘束しようと一瞬ゴツい人と変わる

その瞬間を狙って逃げる。だが、前に西園寺さんがいるため、隙を作らなければいけない。故に

俺は耳元で囁くように言った。


「君、今日のパンツは白。やけに可愛らしいな」

「ひにゃっっっ!!??」


来た!絶好のチャンス!


「あっ!待ちなさい!」


「はっはーんっ。そんな照れて言われても響かんねっ。サラバ!!」





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