第20話
「やーーっと終わった」
「いろんな意味で終わってないか心配だわ」
ほとんど生徒が帰った教室。
定期テストが終わって今は放課後。
ある二人と喜びを分かち合っている最中。
「ああ、疲れた」
「俺もだよ」
姉ちゃんに勉強見てくれなかったら結構終わってる順位になっていただろう。矜持は持ってる方なんで中くらい以上は取りたいところ。
まあ、考えてても仕方ないしリラックスしよう
「あれ?坂本くんに中山くんじゃないですか」
「先生?どうしたんですかこんな時間に」
「それは私の言葉なんですが······」
まあそんなのはどうでもいいまである
そんなことより今は喜びを享受したいんだよ
「まあそれよりも、テストお疲れ様です」
「やっと終わったって感じですね」
「もう頭痛がすごかったですよ」
テスト後のこの開放感半端ない。苦労が報われた感じがする。報われなかった人もいるけどね。
「あらまだいたのね」
「ん、ああ橘さん」
「やあ橘さん」
「こんにちは橘ちゃん。テストお疲れ様です」
橘·····ちゃん?先生はそこま拗らせているとは
学生時代のしわ寄せがここに来て波に乗っているのか?
「ど····どうも先生」
若干先生の扱いに困っている橘さん。少し顔をしかめている
「ところで、橘さんはどうして戻ってきたんだ?」
「まあちょっと」
濁された。反応からするとまだ友達としては認めてくれていないのだろう
「ちょっとは教えてくれてもいいんじゃないか?」
心底不思議そうに来た理由を尋ねる。
個人の感想ではあるけど翼は陽キャだし。
橘さんの思いというか、陰キャ特有のものを推し量れないのだろう
「ん·······はあ、教材を取り忘れたから戻って来たのよ」
「なんだそんなことなら答えればいいのに」
「そうね次からそうするわ」
あら好印象。ここまで対応の差があるものなのか。オジサン嬉しいよっ
「テストが終わって早速勉強するのか?」
「ええそうよ、勉強は日常的にするのがいいわ。あなたたちも現を抜かしてないで努力したら」
「あはは···頑張るよ」
「(高圧的だな)」
「なんか言った」
「高圧的だなって!」
「·······あっそう」
「·····まあまあ!、それより皆さん良い子はもう下校する時間ですよ」
「寝る時間みたいにいいんですね」
先生がフォローに入り、翼が俺にお前マジかっみたいな視線を向けられる。答えただけなのに
ーーーーーーーーー
ザーザーザーザー
ここであいにくの雨天。それはもう清々しいくらいの土砂降りだ
「どうする?俺傘持ってないけど」
そりゃそうだ。昼間まで快晴だったし。
「私もよ。こんなことになるんだったら折り畳み傘を常備していればよかったわ」
反省反省と頷きながら改善している。なんで傘ないのにそんな冷静なのかな?
「俺も持ってないって言いたい所だけど持ってるんだよね」
「いや持ってんのかよ」
ふふふっ実は持ってるんだよ。理由は我が妹が『雨降るかもー』とかメールしてきたからだ。超能力かなんかか?
「じゃあ、裕太。それ橘さんに渡す、てことでいいよな」
「まあそうするつもりだったしな。はい、橘さんこれ」
「えっ?いいのにそんな」
「なにほうけた顔してるんだ。これは教材のためだ」
別に橘さんのためじゃない。これは教材が濡れないためだ。単身だったら雨に打たれながら行けとも言うかもしれないが、今は教材が可哀想だしな
「よし、翼。お前の家まで競走だ」
「いいぞ、俺は裕太の家でもいいけどな」
「それは翼が遠回りになるからパス」
今日こそ負けないぞ。翼はなぜか雨の日に覚醒するという調査結果が出ている。ちなみに俺が調べた。
「え·····あ、あの本当にいいの?もらっても」
「貰うは駄目だぞ。ちゃんと返してもらわないとな」
「それはそうだけれど」
「じゃ、そゆことでさいなら」
早く帰んないとなぁ。風邪ひきそうだし。
「····ありがと」
「別に普通のことだぞ?なあ翼」
「ああそうだな」
「私にとっては特別なのよ」
「ありがたく使わせてもらうわ」
雨にさらされて少し髪が湿っている。
妖艶でもあり幼気も感じる。そんでもって雨をも晴れるような明るい笑顔を浮かべている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます