第15話 アイドル編 後半
○○月△△日。今日はアイドルを見に行く日だ
「ここは、こっちを曲がって······」
なかなかどうしてか道がくねくねしている
「ふ~、迷った」
くッ、アイドルを見に行くのにこんな試練があるとは!
とりあえず、そんなことをぼやいてたって仕方がないし、マップを頼りに探そう。
なんてことを考えていると—
「あ、あなたこの前の。来てくれたんだ!」
後ろから知っている声が聞こえたので振り返った
「ん?アイドル勧誘の人だ」
「そうだけど、違う!」
そこには以前にアイドルの歌を聴いていたときに
声をかけてきた女の人がいた
「語尾がござるの人はどこに行ったんですか?」
「語尾がござる?ああ、アカマルさんね」
アカマル?言っちゃなんだがキラキラネームっぽいな
「それが本名なんですか?」
「え?」
「え?」
静寂が来る。女の人が不思議そうに頭をかしげる
「本名?あなた、本当にアイドルわかんないんだね」
少し呆れられた。理不尽だ?
「いい?まずオフ会まがいのモノは本名じゃなくて、ペンネームみたいなもので呼び合うの」
「へえー、そうなんですか」
初耳だ、まだまだ知らないことが多いな
「話を戻すけどそのアカマルさんは今日他に来る人たちを案内してます!」
「他の人?勧誘、成功したんですね」
「イエスッ!今日まで私とアカマルさんしかいなかったけど、なんとあなたをあわせて3人きてます!!」
それはすごいのか?
有名なアイドルぐらいしか知らないため。集客率がいいのか悪いのか
「それはすごいことなんですか?」
女の人の動きがピタッと止まる
「こほんっ、今日は楽しもうぜ!」
話を逸らしたな。なぜかガッツポーズしている
「はあ、わかりました」
ーーーーーーーーー
「·········帰っていいですか」
「なんで!?」
「いや、だって!なんですかこの入口!怪しさプンプンじゃないですか!」
「おい怪しいゆうな!!失礼だぞ!」
だって、妙に狭いし、黒黒しいというか、
空気が重たい気がする
「とりあえず!今日の話はなかったことでお願いします!」
だめだ、これ絶対アブナイやつだ‼
「おい、まてや」
「なんですか、腕邪魔なんですけど」
「逃さんぞ!あなたはこっちに来い!」
「やっぱり!アブナイやつだ!」
「心配すんなって。あなたもこっちにすぐ染まってくから」
「離せっ!離せーっ!!腕力強!ゴリラ、ゴリラだ。
人型ゴリラに襲われるーーーー!‼」
ーーーーーーーー
「ああ〜〜、なぜこんなことに」
「まあまあ、何事も経験だよ」
何が経験だよ、だ。ひどい目にあった
無意識にも下を向いて歩いてしまう
「ほれ、ついたよ」
「お、みみみ氏やっと来たでござるかぁ」
語尾がござる—アカマルさんの後ろに男女1人ずつ人がいるのが見えた
「よっす〜。それじゃ、さっそくだしライブ行く?」
「そうでござるな、御三方も大丈夫でござるか?」
「ええ、僕は大丈夫です。」
「あたしもです」
「······ああ、平気です」
わからないことの連続だ。そもそもとしてアカマルさんが連れてきた二人は誰だ
「·····その〜、そちらのお二人とは、俺初対面なんですけど、お名前を聞いていいですか?」
緊張しすぎて、すごい業業しくしてしまった。
変に思われてないだろうか
「僕ですか、僕はクロネコって言います」
めがねをかけていて、爽やかとした印象を受けるだが、ちらっと腕を見ると意外と言っていいのか筋肉質である。なにか運動をしているのだろうか
「あたしもですね~。あたしはヌコって言います」
そちらもみると、
可愛らしくもあり、活発さもあるといった人だろうか?
体も膨らんでいるところは膨らんでいるし、
へこむところは、へこんでいる。まさに女性が理想とするボディをしている。
あんまり人を観測するもんじゃないな
「それで、あなたの名前は何ですか?」
「ああ、俺の名前はさ——」
まずい、そういや本名言っちゃいけないんだった
どうしようどうしよう。なんかないか!?
「俺の名前はさかさかっていいます」
「さかさか?」
流石に無理がありすぎたか!?
なんか説得力あるりゆうないか!?
「えっと、俺昔犬飼ってたんです。その犬種?というかそういうのから部分的にとってさかさかです」
「ほえ~」
よし、なんとか誤魔化せた!
ーーーーーーーーー
「もそろだね」
「あ!言ったそばからきたよ!」
そこからは俺の知らない世界だった。
——アイドルって踊るのか?
アイドルを知っている人たちが聞いたら『は?』とか言われるかもしれない。だけど、俺は何も知らないのだ。
前の宣伝では歌っていただけだったからてっきり
歌で勝負するのかと—
ていうか体力続くのか?
俺は運動の一環として、大声を出しながら持久走をしたことがあるが、まあキツイ。彼女たちもそれと同等ぐらいのものだろう。
それと、運動量に見合わない観客の少なさだ。
多分、5人は少なすぎると思う。
そう考えると、肉体的にも精神的にもキツイはずだ。なのに、なぜ彼女たちは踊るのだろうか?
頭の中は疑問符でいっぱいだった。
だが、これだけは明確に覚えている
——彼女たちの笑顔だ
こんな逆境でも今を楽しんでいる。幸せそうにしている。
そんな彼女たちが妙に眩しく感じる。
アイドルの偏見は改善したほうがいいな。
こんな素敵な人たちが陽の目を浴びないのはなぜだろうか?
そんなことを思っていると
彼女たちのライブは終わった。終わってしまった
「いやー、今日も良かったな〜」
横から嬉しそうに声を上げている
その声を皮切れにいろいろな感情が湧き上がってくる。
「そうだな、アイドルもいいものだな」
口の端を上げながら、ポツリと呟く
そのときは、人生がちょっぴりいい方向に向いた瞬間だった
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