第9話 実家のパパママは変な親ですが、なにか……
「玉の輿、GO!」
「食費が減るわね、やったね、パパ!」
月曜日、両親に許可を貰いに一人で実家に帰った時の話だ。
とりあえず、こう言われ、メイド契約書の保証人欄に躊躇なく署名捺印してくるので両方とも蹴り飛ばしといた。
「娘が反抗期、う、うれしい!」
「パパ、マゾだもんね~?」
珍しく家庭に四人揃った我が家。
パパもママも共働きで居ないことが多い。
妹も学校の活動で遅れることもあるし、塾に行っていることも多い。
「娘の前でそういうこと言わないで、ママ」
「どうせばれてるし、いいのよ、パパ」
どこから突っ込もうか。
パパの尻の穴からおもちゃを突っ込んでやってもいいかもしれない。他人に入れるという経験は済みで手加減も出来る私である。
さておき、
「いいのか、それであんたらは!」
至極全うな質問をぶつける。
「だって、今更じゃん、ねー、パパ」
「そうだね、ママ」
いや、まぁ、自由奔放で良いんだけど……。
私がビッチやパパ活やってても、それを知ってもなおとやかく言ってこない親だ。
何も言ってこないというか、自主性に任せているというか、どちらかは怪しいところではある。
「別に娘の人生は娘のだから、好きにしたらいいのよ」
「そうそう。
さすがに同級生にメイドで雇われるとかは想定外だったけど……」
まぁ、こう言ってくれるので一応後者らしい。
「姉ぇ、またふしだらな事してんの?」
声を掛けてくるのは妹だ。
私と違い、マジメなので、マジメに学校に行ってマジメに生徒会なんぞやってるらしい。陸上は? と聞いたことあるが、私を観て悲しい顔をされたのでそれ以降は聞いていない。あの事件のことなんか忘れてもいいのにねぇ……。
なお、私と似ていて素材は良いので、ちゃんとしてあげたらモテると思うんだけどなぁ、とは常々思う。胸もでかいし。
まったく化粧気もなく、それどころかシャンプーもボディーソープも親のを使っている。
もったいないっと、お洒落させようとしたら喧嘩になったので、二度としてやるかと決意した過去もある。
「今回は真面目よ。大真面目なお仕事」
「どうだか? 楽しそうじゃん、いつも男をもてあそんで」
「あんたも男をたぶらかすことの快感に目覚めたらわかるから、うん。
それにちゃんと私はあんたの志望校には受かったでしょ!」
「なんで受かってるのか、我が家最大の謎なんだけど……。
私落ちたし……」
不機嫌になる妹は別の一ランク下がる横浜は平沼にある公立高校に通っている。
「十か月分の知能発育の差じゃないの?
五月生まれと三月生まれの差って残酷よねー」
年子という奴だ。体力や体格など、一年近くも差があれば、大きくでる。特にスポーツにおいては実感がある。
「なんで、後一ヵ月遅く生んでくれなかったの……」
妹がそう愚痴ると、
「仕方ないじゃない、パパがすぐにでも欲しいって言ったんだもん!
ねー、パパ」
「そうだよ、ママ」
妹が頭を抱える。いつもの流れだ。
「いやー、ダメもとで受けてみるもんだねー。
補欠合格できちゃうんだから」
そして私は妹を煽りにかかる。
「日々、努力してるのがバカみたいになるから、その話はやめて!
お姉ちゃんのバカ!」
「とはいえ、ちゃんと勉強はしたから、うん。
私はやるときゃやる女なのよ。
馬鹿はそっちよ」
「そりゃ観てたし、放課後も一緒に勉強もしてたから知ってるけど……。
すっごい釈然としない」
「そりゃ、アンタと一緒に居なかった土日に教わってた人が良かったわけですしー。
うん、半年はマジメにがっつりやった。
塾講師のオジサンに勉強教えて貰ったもんねー」
ビッチなのに健全な期間であった。
やることはやったが、基本的に男というのは頼られることにも意味を見出すもんだ。ちゃんとおだててやれば有効に使えるのだ。
というかね、私の私見だが、先生なんか目指していた人は自分が必要だとされる承認欲求が強い気がするのよね。
さておき、
「箸もなんもかんも使いようってことよ」
「内容は聞かないでおくよ、姉ぇ……この前聞いて、頭おかしくなったから」
「少しは見識を広げた方がいいわよー」
「くっ!」
妹を振り回すのは楽しい。
しどー君を振り回している時に楽しいと思うのは、ここの部分に既視感が浮かぶからかもしれない。
とはいえ、仲良くは無い。私が煽るのも悪いのだが、家だと姉妹部屋が同じでプライベートが存在しないのだ。
高校の件で姉妹仲は更に歪むかなと思ったが、自分の責任だと妹は飲み込んでいるのは良かったが、私はあまりこの妹を私が居るせいで不機嫌になって欲しくない。
ともかく真面目なのだ。この妹。
どっかのマジメガネみたいに。
「で、娘よ」
「ナニよ、パパ」
「学校は楽しいかい?
パパ、高校行かなかったからなー」
「ママもよー」
中卒カップルである。
色々あったらしいが、今も幸せそうなので良い結果なのだろう。
なお、経緯は聞いたことが無い。聞いても話してくれない雰囲気がある。
「学校行くお金は別にどうとでもするけど、楽しくしてくれてないと意味ないからねぇ」
「学校ねぇー」
授業はギリギリついていけている。
クラスのカーストは順調だ。
私みたいなビッチは勉強だけの他の生徒に比べたら人生経験は違う。
「変なのが一杯居るけど、楽しいわよ」
これは間違いない。
変なのとは、
1、最近付き合いが多いマジメガネ。
2、クラスで暴力漫才してる野球部とそのマネージャー。
3、とんでも行動をする委員長とその妹とその彼女のお嬢から成るトリオ。
よくもこんだけ色物を詰め込んだものであるあのクラス。
クラス担任もまったくやる気が無くて委員長に完全投げぱっなしで放任主義だし。
「そりゃ良かった、パパもママも頑張ってるかいがあるってものさ。
それを気負って無理して学校いくとかはしてくれなくていいし、別に退学とかいつでもしていい。
いつも言っている通り、悔いなくやれよ、娘とだけだ」
「そうよそうよー。
でも折角入ったんだから、いい男見つけなきゃねー。
パパみたいに!」
「ママ……」
二人で見つめ合う。三人目が出来そうなことは控えて欲しい。
「二人で妙な空間作るのやめてよ!
もう、姉ぇもトリガー引くのも!」
「私は何もしてないわよー」
妹が怒り出す。
こんなのがいつも私の狭い家で行われている会話だ。
「とりあえず、嫌になったら逃げるんだぞ?
最悪逃げ場にはなれるからな!」
「格好いいわパパ!」
まぁ、こう言ってくれるから本当に良い親なのかもしれない。
他の家族は知らないが。
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