第17話 学校での私達ですが、なにか?


「あ、しどー君、さっきの授業で判らないところあったから教えて!」


 あ、しまったと気づいた時には遅かった。

 こんな家のノリの発言をクラスの中でで言ってしまったのが始まりだ。

 それに対して、マジメガネ(メガネして無いが)は、


「あぁ、さっきの数学の問題だな。

 確かに分かりづらい説明だったな」


 っと普通に来て、教えてくれてしまう。

 カッコよくなったから、クラス内でのカーストは上がっているモノの、


「初音……? いつのまにマジメガネと仲良く?」

「というか、士道って言うの名前?

 そういえば運動会の時、初音のことめっちゃ応援してたよね?」


 っと、周りに動揺されてしまう。

 しまったとおもうが、別にいいかと思う私も同時にいる。

 ある程度、女の子に慣らすというのは私がマジメガネにあげた条件に入ってる。

 そろそろクラスの女子に慣らすのにも良い頃合いだろう。


「これがこうだからこうで、こうだ」


 っと本人は周りの反応を気にせず、すんなり解いてくれる。

 しかも判りやすく、補足の書き込み付きでだ。


「えっと、マジメガネと初音ってもしかして出来てる?」

「出来てるとは?」


 っと真面目に答えるマジメガネなしどー君。


「ぇっと、彼女と彼氏の関係というか、何というか……」

「違う。ただ、監視対象としてよく見ているだけだ」


 その答えに、ムッと来た私は彼の足首を蹴ってしまう。


「いた、なにすんだ、初音!」

「ふーんだ、何でも無いわよ」


 と応えるが、私自身、なんでこんな反応をしたか、判らない。

 女子三人がそんな様子にニヤニヤしてくるのでバツが悪くなってしまう。


「そういえば、マジメガネ……だと、いまメガネじゃないから呼びにくいから、士道君て呼ばせてもらうけど、最近、カッコいいよね?」

「そうか? ありがとう」


 照れを隠さない彼は正直者である。


「どんなきっかけがあったの?」

「初音さんにメガネを取り上げられた時に、勿体ないとイメージチェンジされた」


 そのまんまを言ってくるので、三人の女子の顔が私を観てくる。

 勘弁してよ。


「だってもったいなかったんだもん……イケメンでしょ? それを潰して勉強だけに専念させるなんて高校生活への冒涜だと憤ったの」

「ほうほう」

「それでそれで?」

「ニヤニヤ」


 三人の顔が、私に何を言わせたいのかはっきりした。


「だからそんだけよ。別にマジメガネが好きとか嫌いとかそういうんじゃなくてね?」

「ツンデレご馳走様です」

「オタクに優しいギャルって存在したんだ」

「推せるわー」


 っと、揶揄してくるので、私は三人の頭にデコピンを叩きこむ。

 いたたたた、めんごめんごとか言ってくるので許すとする。


「確かに初音さんは優しいな」

「あんたはあんたで……!」


 しどー君の言葉に赤面してくいかかってしまうと、三人に笑われる。


「あとは、勉強を観て貰ってるの」

「あぁ、ウチでやってるな」

「「「既に家族に出会い済み?!」」」


 イヤイヤと私は流石に否定するように、手を横に振る。

 せめて図書館でとか言わんかい。


「マジメガネの家、一人暮らしだから家族にあったことは無いわよ」

「へー」

「じゃぁ、こんど遊びに行ってみよっか?」

「辞めといた方が良いわよ」


 と即答すると、二人がニヤリと笑みを浮かべてくる。

 その顔にはなんで? と浮かんでいるので答えてやる。


「横浜駅付近にあるのよ。ここから学校終わった後なんかに行ったら、勉強するだけで遊ぶ時間も何もあったもんじゃないわよ」


 と正論を述べる。

 しかしながら、


「ぇ、つまり、初音は泊りで?」

「やーん、不貞!」

「それだから、マジメガネ、カッコよくしてるんだ! このこの」


 っと楽しそうに話題にしてくれる。


「勉強した後、ちゃんと家に帰ってるわよ! 塾の費用払ったら高いし、定期代だけで済むからマジメガネに習った方が安いのよ!」

「あー、初音んち、貧乏だものね……」

「それは仕方ないわ」


 ウチが貧乏なのは、周りに知られている。

 なんというか、なんというかである。


「それに横浜だったらその、色々出来るでしょ?」


 色々とは援助交際のことだ。この話は、この子らは知っているというか、あの援助交際系アプリの愛用者でもある。


「色々って、あー、あの話ね。私はあのアプリ使って、結構、稼がせてもらってるわよ。町田でも結構マッチングするときあるし」

「初音も今も結構、いい香水使ってるし……どうなん? 稼ぎは」


 香水はしどー君が死蔵していたモノである。


「……風紀委員の前でそれを言わせるのは辞めて?」

「「「あ」」」


 三人の言葉にしどー君が黙り込んでいる。

 一応、アプリの事は知っているしどー君だが、何故知っているのかを問われた際に私から漏れたことが万一にでもあったら、三人に疑われてしまう。

 だからだろう、しどー君はあえて黙って聞いている様子だ。


「あ、士道君、今の話はバイトのアプリの話だからね?」

「そうそう、結構、いい話が入ってくるアプリなんだ」

「へー、どんなことをしたりするんだい?」


 っと士道君が質問すると、三人とも慌てだす。


「えっと、お金持ちのオジサンと話したり、コスプレしたりするの」

「抜きは無しだから、安全確定だしその……援助交際とかそういうのじゃないんだよ、ねぇ? 初音」


 私に振るんかい。


「ぇぇ、いたって真面目なレンタル彼女アプリよ。それに三人が登録してるの、しどーくん、オタクだから知ってるでしょ、レンカノ?」


 っと、私が背筋が冷ややかになる思いをしながら、三人のフォローに入る。

 そう私達が言い訳するが、士道君の頭に悩みが生じているのが見て取れる。

 今ここで追及すべきかどうかだ。

 士道君自体は、アプリの内容と安全性も知っている。

 だが、それが校則に引っかかるかと言うと、バイト自体が認可の無い場合は当然にアウトだ。


「三人とも、そのアプリが普通のモノであったのなら、僕は何も言わない。もし、何かしらの校則にひっかかるモノで有ったりしたのなら、僕は容赦しないぞ? 今は教室での戯れだと聞き逃すが」


 っと、威嚇で留めてくれる。

 なお、アプリをばらまいた本人は私です、っと後で追及される羽目になり、ガチ怒られするのであった。

 くすん。


「それより中間試験、どうするー? そろそろじゃん」

「私は、赤点回避狙いでー。初音は?」

「しどー君に習ってるけど、赤点回避ねらいかなぁ……出来れば平均点」

「おー、大きく出たね!」

「マジメガネの影響?」

「それも無くは無いけど、夢が決まったから。

 医者になりたいのよ。医者」

「初音が医者?」

「……マジ?」


 目が点になる三人にデコピンをしておく。


「んじゃ、マジメガネは?」


 っと、唐突に話題を振られるマジメガネはちょっと躊躇ったモノの、


「一番を狙うつもりだ……!」


 そう意思の強い声が出る。


「委員長、超えるのはムリだと思うけどー?」

「そうそう、学年主席だし、それにその彼女も強敵よ?」


 っと委員長の方を向く彼女ら。

 視線を向けると、白髪の整った顔の男性と金髪黒褐色肌お嬢の二人がニコニコと仮面のような笑顔で返してきて、


「僕の事を呼んだかい?」


 と、男性の方がこちらに距離を詰めてきた。

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