RE:処女ビッチですが、何か?

雪鰻

第1話 先ずはメイド服ですが、なにか?

 フリフリのフリルのついたメイド服の姿。メイドキャップ。そして自分の胸元まである艶々な茶色のツインテールと健康的な白い肌、ギャルっぽい感じが抜けていない元気な笑顔の私自身の可愛さを洗面台の鏡で問題ないと確認し、


「はい、おぼっちゃま、出来上がりましたよ、っと!」


 っと、からかう様に彼の部屋の戸を叩き、扉を了承も無しに開ける。


「だから、そのおぼっちゃまはやめろと言ってるだろ……」


 と椅子ごと振り返ってくるのは、眼鏡姿の彼である。

 頭はスポーツ刈りが少し伸びた程度だ。


「じゃぁ、マジメガネ」


 だから、彼のあだ名で言ってやる。

 そうすると本当に嫌そうな顔をしてくれるのでからかいがいがあるってもんだ。


「それもヤメロ……普通に呼べば良いって。

 後、敬語も止めてくれ」

「仕方ないわね、しどー君。

 晩御飯、出来たから呼びに来たわよ」


 という感じで、彼を誘い出す。

 マジメガネと形容するのは正しい。

 ぐるぐるメガネにヘアスタイルも気にしない真面目な黒。

 それどころか、今の姿は黒いジャージに身を包み、マジメ! って感じを醸し出している。


「少しはオシャレも覚えさせなきゃねー」


 そんな彼の姿に不満を持ちつつも、リビングルームへ。

 私の暮らしていた実家がすっぽり入る程のデカいリビングルームにいるのは、彼と私だけである。暮らしているのも私達、二人である。

 実家で暮らしてた時は両親含め、四人。その生活していた時に比べるとガランとしていると感じる。少し寂しいなとはと思う。

 それでも私は、今の状態に感謝しているし、彼と二人で居ることに悪いと感じることも無いのである。

 というか、逆に今の生活を楽しんでいる私が居る。


「カレーだよな? 匂いや色的に、ちょっと違う感じがするけど」


 マジメガネに問われるので、笑みを浮かべて応える。


「グリーンカレーよ、日本のカレーと材料や作り方が違うの」


 炒めた野菜に、ココナッツペーストとグリーンカレーペーストをくわえて再度炒めるので、普通のカレーとは違う産物である。

 使ってる野菜もナス、ふくろたけ、タケノコと普通のカレーとだいぶ異なる。

 作る手間に関しては普通のカレーに比べて圧倒的に楽だが。

 食卓に座った彼の最初の言葉は、


「美味しそうだし、六月のうだるさを掻き飛ばしてくれそうだ」


 と褒めてくれるので素直に嬉しくなってしまう自分が居る。

 彼とは共同生活をしているだけ……とはいいがたい関係だが、こういう素直に言ってくれるのは正直、彼の美徳だと思う。


「美味しいに決まってるわよ、なんせ、私が作ったんだから!」

「そりゃ、楽しみだ」


 えっへんと、自慢の胸を張る。

 クラスで二番目に大きい胸である。

 プルンと、メイド服の中で跳ねる。


「っとその前に、食べる時ぐらい、眼鏡を止めなさい。

 慣れるためにも私生活でもコンタクト使ってかないと。

 勉強の時は良いから」

「判った判った」


 めんどくさそうに彼がそういうと、彼はコンタクトレンズをはめるために一回、洗面台へ。

 そして戻ってくると、


「うん、超絶美形。

 イケメンよね」

「そうは思わないんだが?」

「私の見立てが間違ってると?」


 拗ねる振りをすると、


「そんなことは言ってないだろ……⁈」


 慌てて否定してくれる。

 本人は私の言葉に対して疑問視をする。でも実際、こいつマジメガネなんかじゃないんですよ?

 普通にイケメン。整った頬のラインや、キリリとした眼付をしている。勿体ないからとコンタクトレンズに慣れさせようとしている所なのだ。

 あと、最近は整髪剤のつかい方も教えていて、ちゃんとしたカッコよさを出そうと大奮闘中なのが私だ。

 髪の毛切るのも当分禁止して、伸ばす方向だ。

 何故かって?

 二つ。一つは勿体ないモノ。私に色々してくれた恩人がダイヤモンドを腐らせていくなんてのは。

 二つは彼自身との約束、女の子に慣れるというモノだ。当然、女の子と話をするというのは当然に身だしなみを気にしなければならない。


「学校でもちゃんと出来るようにならないとね?

 明後日からコンタクトデビューよ!」

「そりゃ確かにコンタクトレンズは体育の時とか便利だろうが……」


 論点がズレている気がするが気にしてはいけない。

 実用性極振りの彼は自分自身の美的センスにはノーコメントだ。

 私がカバーしてやればいい。

 さておき、


「どう、メイド服?」


 クルリとまわるミニスカメイドの私。合わせる様にパンツが見えるか見えないかで、フリルスカートが揺れる。


「……とても似合ってる。後で領収書を回してくれ」


 なお、このセリフが出るくらいこいつはイケメンに加え金持ちである。

 後、オタク。

 そして彼の身の回りのお世話でお給金を貰えているのが今の私、初音(苗字、名前を言ったら殺すとしどー君にも脅してある)の状況である。

 横浜の繁華街でパパ活(性的交渉はペッティングまで、大抵は話し相手になったり、コスプレ衣装撮影をしたりしていた)していた時とは事情が違う。一番は、なによりお給金の支払いも良い。

 月四十万円に三食、昼寝と自分の部屋付き。うん、そりゃ危なくも無いし、こっちの仕事を選びますわ。先輩には申し訳ないけど。


「それじゃ、頂きます」

「どうぞどうぞ」


 と、彼の食べる様子を楽しみにしながら眺める私。

 この時間が、結構好きなんだよなー。自分でそう思いながら彼の様子を伺い、ムシャムシャと食べてくれるのが嬉しい。


「うまいなぁ、うん。うまい。

 流石、初音さんだ」


 と素直に褒めてくれるので嬉しくなってしまう私が居る。

 この士道君、嘘は言わないし、マジメメガネだけあって真面目君なので、可愛いのだ。


「えへへへ、今日もどんなもんだい!」


 そして私も食べ始める。

 うん、美味しい! 我ながらである。

 自分の家族の料理を担当していたのが活きている。


「ちなみに今日の夜は性処理する?」

「しないって……いつも、お前は何を言ってるんだ」


 特に冗談でお客様にするようにペッティングしようとした所、大いに慌ててくれたのも私の中では笑い話だ。何というか、普通の男子なんだなっと新鮮な気分にさせてくれた。


「じゃぁ、勝手に襲わせてもらうのは?」

「ダメだって言ってるだろ……あのさぁ、もう少し、自分を大切にしてくれないと、僕が初音さんを雇っている意味が無いだろ……」


 しかしながら私のスイッチはビッチのBに入ってしまった。

 翌朝、日曜日、初めて寝起きに襲い掛かって手で出させた時なんかは何やってんだオレって、落ち込んでくれちゃったのも楽しかった。ので、胸で二度目もした。三度目は口だ。

 くくく、サド気の強いビッチを拾ったことを後悔しても遅いのである。

 こんな、ビッチな私、初音とマジメガネのしどー君の物語を紡いでいくのがこの物語である。

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