第35話 反省会ですが、なにか?
「何というか、しどー君も罪づくりな男よね。
勘違いさせてたのは事実だし」
帰宅した後、私は制服からメイド服に着替えてから、そうリビングで寛いでいるしどー君に嫌味を含めて述べる。
「それを言われると何も言い返せない……無認識だったとはいえ……」
制服でメガネをしないまま、複雑そうな顔をしてくれるのが可愛い。
どうやら今回の件について、自責の念を感じているのだろう。
「それにしてもマジメガネの時から惚れてた子がいるとは、しどー君もなかなかやるじゃないの」
素直にほめてあげるのに、不服そうなしどー君。
「僕は初音が初恋だったし、余計だったんだけどなぁ……」
「そういうこと言うと襲いたくなるから、少しは自重しなさい。
晩御飯が無くなるわよ……いや、私になるわよ♡」
バッチコーイっとメイド服の胸元ボタンを緩めて、気構えておく。
「今日はする気ないぞ。
自分の褒めるという行いがいかに他の人に影響を与えていたか、反省中だから。
それに平日だ、平日」
「マジメガネー!」
眼鏡はしていないが。
「あれに関しては完全に自爆よ自爆。
ちゃんと理解してなかった方が悪いのよ」
私は料理をすすめながら、リビングの窓辺でまだ未練たらしく夕日に黄昏るしどー君のカバーの言葉を差し込む。
「でもだなぁ……」
「確かに気ぶり発言はよくないと思うけど、あんな発言で自分のことを好いていると勘違いはふつーはしないの。しどー君と一緒で異性への経験不足だったのよ、貴方の風紀委員バディは」
「そういうものか」
「そういうものよ」
私は言い切ってやる。
「普通なら褒められた言葉はお世辞と片付けるのが普通なわけ。興味を持ってほしい、気分良くなってほしいという気持ちは確かにあるだろうけど、それイコール好きにはならないのよ。パパ活やってたら、褒められることなんか当たり前なんだから」
経験談を交えてやると、しどー君がようやく難しい顔を崩し、苦笑してくれる。
「人生経験では敵わないなぁ、初音には……」
「褒めても何も出ないわよ……さて、出来上がったから来なさいな」
としどー君をダイニングに誘う。
出したのは大皿に鯛のカルパッチョサラダ、お味噌汁、ご飯と割と手抜きな料理だ。鯛を捌く手間さえ考えなければだが。私? 当然、捌いたわよ。
「今日も美味しそうだな」
「美味しいに決まってるでしょ、だって私が作った料理だもの」
自信満々に豊満な胸を張って応えてやる。
「「頂きます」」
テーブルを挟んで二人で顔を合わせて、いつもの合図をする。
そして、美味しそうに微笑んでくれるしどー君を見ると、胸がきゅーっとしてくる。
「美味しいな」
「ありがと……♡」
改めて口にされることで、私の乙女回路は全開になりそうになる。
落ち着け、私。落ち着け……すぅ、はぁ……。
っと心を落ち着けつつ、私も箸をつけて食べていく。
うん、美味しい♡
「でもまぁ、ちゃんと学校側の承諾も得られたし万事解決か」
「それもそうね、これでイチャイチャ出来るわよ……ニシシ」
「委員長だってキスで止めてるんだから、キス以上は学校でもしないぞ。
キスだって制服では公衆の場ではしない。なんせ、普通に通報されるからな」
脅すように語尾を強めて言ってくるのはマジメガネだねぇ。メガネはしてないが。
「わかってるわよー。退学なんて御免だし、しどー君と残りの高校生活を無事に送りたいのは私だってそう考えているんだから……そうね、手を繋いだりとか、キスしたりとか、膝枕とかぐらいまではありよね」
「膝枕かぁ……」
おっと、しどー君が興味を示してくれたぞ。
「確かに男にとっては夢だな」
「でしょでしょ。それを大っぴらに出来るんだから、見せつけていきましょうよ」
「見せつけるようなものでもない気がするが……」
冷静な突込みありがとうございます。いつものしどー君である。
「ほら委員長に模範的な異性交遊というのを見せつけろと言われたでしょ?
いいじゃない別に」
「流石にあえて見せつけるようなモノではない気もするし、膝枕なんかクラス内じゃやりようも無いから、見せつけられないぞ?」
ごもっともな意見、有難うございます。
「じゃぁ、手は繋いでくれるんだ」
「……別に構わない」
「うれしー♡」
私が椅子から飛び跳ねて、しどー君側に行き、寄りかかり、自慢の胸を押し付けてやる。
「……今日はしないの?」
「しないっていっただろ……平日だと言ったはずだぞ。
この前みたいに遅刻したら事だし、同棲に注意や警告を食らう可能性もある」
かたい口調。でも、
「しどー君、下半身は正直だねぇ、ぬふふ~」
と、目線を下にするとしどー大明神がそびえ立っていた。
「……初音が悪い。誘ってくるから……。
僕だって健全な男子だ。
初音みたいな可愛い女の子から誘惑されたら耐えられる訳ないだろう?」
「ふふふ~、そういう正直な所も含めて、全部好きよ、私は。
しどー君はこんなビッチな私が好き?」
しどー君が一つため息を入れて、私の眼を捉えて、
「好きに決まってるだろ」
とキスをしてきた。その後はなし崩しに脱がされるメイド服。
二人、好きなもの同士、しかも色ボケだ。
何時間も何時間も続けてしまい、翌日は遅刻ギリギリとなり、私の髪形はまとめる暇なくストレートになった。
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