第7話 メイド提案がありましたが、なにか?
「最近、スカートをキチンとしてくれるようになったし、処女を散らすつもりはなくしてくれた。風紀委員としては非常に有難い。
けれど、お金は稼ぎたい、そういうことだな?」
っと、腕を組みながら立ち尽くす士道君がそう私の現状を纏めて言う。
これは夕方、何度目かの士道家に補導された日のことである。
あの日以降、処女を散らしてくれそうだったオジサンとは疎遠になり、いつものアプリに戻して活動を再開。
それでもホテルに入ろうとしたり、オジサン達と一緒にいるところとかを見つかること、見つかること。監視でもされているような勢いで見つかって何度もマジメガネに補導されてしまったのだ。
土曜捕まり、その足で日曜日も捕まる日も幾度とあった。
今日も今日とて、妹に帰ってくるなと言われたので、マジメガネの家に泊めさせてもらうことになっている。
毎度毎度のこととなりつつある。
「そうよ! しかも安全であれば尚よし!」
正直に言い放ってやる。
そして私はスマホをクルクルと回転させて、アプリを起動する。
このアプリは、本番抜きの性的行為等の目的で女の子たちと遊びたい人達が登録しているアプリである。審査もちゃんとしており、今まで、危ないことにあったことは一度も無いし、そういう話を聞いたこともない。というか、私の先輩が作ったアプリで、先輩自身が男性と面談することもあるので安心ということもあるのだが。
さておき、どう出てくるかとマジメガネの反応を待つが、しばらく考えたままで反応が無いので、
「マジメガネがお客様になる?」
「な、な、な、な」
そんな提案をしてみると顔を真っ赤にして否定してくるマジメガネ。
ニヤニヤと意地の悪いビッチな私が心の中で沸いてくる。基本的に私はサド気がつよいので、こういう彼を観ているとマウントを取りたくなってしまう。
なので、更に押す。
「私はマジメガネに何度も泊まらせてもらっているし、ある程度だったら何でもきいてあげても良いわよ。
私は嫌じゃないし。
他の男の人と入ったこともあるし、今までの分の借りとして……。
……なんなら処女買う?
マジメガネなら、いい金額だせるでしょ?」
あれ?
反応が無い。
顔を観れば、悲しそうな顔を彼がしていた。
「少しは自分を大切にしてあげたらどうだろうか?」
前と同じで彼の眼はマジとかいて真剣だった。
何故だろうか、私が悪いみたいな罪悪感が湧いてくる。
だから、それを誤魔化すようにおどけながら、
「仕方ないでしょ、お金いるんだからー」
「だから許可有りのバイトか相応の付き合いにしろとだな……」
「ちょっと違うけど、バイトにレンタル彼女だって最近はあるから気にしすぎよ?
マジメガネもオタクだから知ってるでしょ、レンカノ?」
士道君のクラスの中での立ち位置は真面目なオタクという感じである。コミュニケーション能力には全然問題ないので、特に低くもなく高くもなく、中堅というカーストのポジション。
私?
結構、上のポジション。なお、最上位陣は金持ちのお嬢様だったり、才能が突出していたりする委員長だったりするので、これ以上、上を狙ってたりはしない。無駄だ。
特に委員長を怒らせると怖いのは、彼の双子の妹が虐められた事件でよく知られている。お嬢が生贄になって、最底辺まで落とされた。そのあとお嬢を引き上げたのも委員長なので、マッチポンプすぎる。
さておき、マジメガネは真面目な顔をさせ、
「あぁ、それでもだ……初音さんはどこか、自暴自棄に感じる」
私の昔の傷に触れられた感触を覚える。
自暴自棄、確かにその面はあるだろう。私は足を壊してからこうなった。
「……冗談よ、冗談。マジメガネすぎるわねー、禿げるわよ」
心の傷に触れられて気まずくなってしまった。
だから、逃げるように、一人でお風呂に。
あいかわらずの広いお風呂だ。
「泡ぶろ機能も……」
スイッチオン。
ああああああああ、振動で体がほぐれていくのと同時に気分がほぐれていく。
モヤモヤ感を無くすにはやはりバイブ機能である。マインドフルネス!
ちなみに未だにシャンプーとか石鹸は男物しかない。
仕方ない話であるが、
「いい加減、何度も何度も捕まってるので、私用のシャンプーとかもおいてやろうかしら?」
さてそんな冗談はさておき、思うのは、士道君のこと。
今日も縁があってこんなことになっているが、クラスメイトとしては隣の席や問題児で捕まること以外では付き合いが薄い。
「この服も慣れたわよね……」
さっぱりして制服に着替えず、男物のリネンの寝巻きに着替える。今日も士道君のを借りているのだ。相変わらず、ブラとパンツは替えを持っているので問題ない。土日連続用に最近は二セットを持っている。
「とはいえ、マジメガネにでもいいからお金を貰わないと、遊行費が無くなっちゃうか……貯金には手を付けたくないし……」
着替えながら冗談で言ったセリフ、
「その手があるか……」
着替えている最中の独り言にドアの外からそう突っ込みがはいった。
監視されてたらしい。
開けて、彼をみると、
「ぇ、何、マジ顔になってんの?」
メガネが光ったような気がした。
「流石に、楽して稼げればとは思うけど、同年代から無償で貰うまで落ちちゃないわよ?
これは普通のトレードオフの関係。
それ以上、それ以下じゃない」
私としてもビッチとしてのプライドがある。
「体で稼げばいいんだよ」
マジメガネが真顔で変なことを言ってきた。
「それ、今と変わらなくない?
マジメガネがパパ活で私を買うってこと?
あるいは処女をお買い上げ?」
「ちがああああう!」
と突っ込むと、士道君の顔が赤くなり怒号のように叫ぶ。
流石に違う意味だったらしい。
「冗談よ、冗談。
マジメガネがそんなことを言えるわけないじゃない。
そんなのは判ってるわよ」
コホンと間を入れて、私は真面目な視線を士道君に向ける。
「いっとくけど、普通のレンカノする気はないからねー。
時給二万、土日だけで五万~八万ぐらいの稼ぎがあるから」
「五万~八万か、五日割りすると……約一万円~一万六千……それを五時間割りで……いけるな……時間単価が三千七百五十より安いし……」
「いや、マジで何を考えてるか教えてもらっていい?」
なんか鬼気迫る勢いで考えていて怖かったんだけど?
眼鏡光ってるし、実はちょっと聞くのも怖い。
「週五でここに住み込み働きをしないか?
その代わり、パパ活をやめて欲しい。
あと、僕に女性との付き合い方を教えてくれるとなおよい」
「は? どういうこと?」
ちょっと何を言ってるんだろうか、このマジメガネは。
と思いながら彼の提案を聞いた。
「つまり、一人暮らしはいいが、掃除、洗濯、料理に手間を取られる……というか、出来ないっと。
ハウスキーパーさんには週二入って貰っているモノの横浜だと高いし、毎日なら私に払っても変わらないと。なるほど?
週五朝晩のお世話なら栄養バランスもはかどるし、清掃やシャツとかの清潔度にも関わってくるし、その分、勉強効率が上がるからやってほしいというわけね?」
とりあえず、聞いたことを訳してみた。
そうするとマジメガネがうんうんと頷く。合っているようだ。
「そういうことだ。別に土日まで拘束するつもりまで無いから、週五日でいいんだが住み込みで働いてくれないか?
ちなみに家事の腕が懸念材料だが」
イラッと来た。
ビッチ舐めてる気がする。
「ぜんぶできますー。
ママもパパも働いてるから全部自分でやってましたー。
妹が最近は出来るようになったから任せてるけどー。
ヨーグルトとプロテイン飲料のボンボンのマジメガネとはちがうんですー」
事実だ。
私は家事万能スキル持ちだ。
両親が共働きで小学生時代から妹の面倒見つつ、家族を支えてきたから培った技能だ。
「凄いな。
僕は何もできない」
感心されたのは意外だった。
「え、マジで何もできないの?」
「あぁ」
確かに彼が脱いだシャツはそのままなことが多い。
「家事ぐらいはできなさいよ……一人暮らしでしょ?」
「訳アリなのもあるんだよ、こっち来たのは」
「そう……」
意味深な顔で訳アリといわれたら突っ込む気にはならない。私にマジメガネの家庭事情まで突っ込む理由がないのだ。
どうしてやろうか、悩むのが先決だ。
「……というか、女子高生囲うのはヤバくない? 風紀委員さん」
「ちゃんと許可を得るつもりだから大丈夫だ。事情は説明すれば大丈夫だろう」
「ぇえ……」
そういうモノだろうか。
ちょっと頭おかしくないかな、このマジメガネ。
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