第20話 とあるポスターですが、なにか。
さて学校のテストも近くなる中、月曜日、新聞部が頑張ってポスターを張り替えている。
大変なモノだなーと思いつつ、観れば、
『風紀委員の士道、女生徒を家に囲い込みか?!』
と朝の写真も添えて、投稿されていた。
女生徒の方(つまり私)はモンタージュされているが、
「ぶっ」
私は吹き出してしまった、事実有根だからだ。
「スキャンダルねぇ……」
「あー、ついに新聞部に掴み取られたか」
予想外に士道君は冷静なままだ。
もはや予想の範疇だと言いたげな様子である。
「委員長から警告は貰ってたんだがなぁ……」
「委員長がこれ、仕掛けたって事?!」
テスト勝負がある。それで卑劣な手を……という訳では無いようだ。
しどー君が首を横に振っている。
「先に、情報が掴まれつつあるから注意しろって言われてたんだ」
「なら、なんでほっといたのよ」
端的に判らないとほっぺを指で押して質問してやる。
「初音さんのことは学校側も認可していることだ。
記事を出す認可が出ないと睨んでたんだが、甘かったな」
「甘かったなで済む問題かねぇ……ほら、クラス着くわよ、覚悟しなさい」
二人でクラスに入ると、男子生徒たちが囲ってきて、
「風紀委員が風紀を乱していいんですかあああああ?!」「お相手は誰?」「マジメガネに先を越されたぁああああああ!」「どういうことか聞かせろ下さい」「初めてはどうだった⁈」
と、下世話六割、質問四割で飛んできた。
「助けが必要かい?」
こう言ってくれたのは白髪の委員長様だけだ。
流石、虐め大嫌い人間。
「別にこれぐらいならいいさ。正直に話すだけで収まる」
「ちょっと待て、正直に話すな!」
私が物理的に口止めをすると、今度は女子生徒たちが、
「どういうこと、初音?!」「王子様計画?!」「自分好みに改造して彼氏にしたの⁈」「お給料は幾ら??」「Cは、Cは⁈」
もっと下世話な会話が飛び交ってきて、男子生徒達が引く羽目に陥る。
女子だけの集まりになったらこんなもんである。あまり女子生徒に幻想を抱くではないぞ、少年たち。
さておき、
「いいや、話すね。
初音さんは『要監視対象』として、今、僕の目の届く範囲に拘束されている状態なんだ。これは学園長に確認して貰ってもいい。だから同居もさせてるし、家事手伝いなんかをさせて更生させつつお給金が発生している状態だ」
「時給幾ら?!」
「それはプライバシーにかかるから答えられない。
詳しいことは学校に聞くと言い、同じような答えしか得られないと思うが」
そして何もなかったかのように自分の席に座るしどー君。
「ぇっと、初音、どーいうこと?」
「補導されました。その矯正中です」
「あー……ついに捕まったのね、よく退学処分に成らずに済んだわね」
「それはそのー、しどー大明神のお陰でして」
嘘は言ってない。こういうことにしておく。
「明言するけど、身体の関係は無いから」
「……そりゃそうか、あのマジメガネだもんなぁ、なんだぁ。
ゴシップに踊らされただけか」
そう言って散開していく生徒達。
とはいえ、
「マジメガネ、何故、僕の忠告を聞かなかったんだい?」
委員長がしどー君に絡んでいる。
「聞く必要が無いと感じたからだ。正義は僕にあると思ったし、今回ならそれも通ると思ったからだ」
「なるほど、なるほど……正義だけで物事を押し通すのは難しいが、今回は旨くいってよかった。僕の杞憂だったよ」
「委員長こそ、大丈夫か? 妹ちゃんとのゴシップを狙われそうだが」
不安そうな顔をするしどー君は珍しい。
だが、委員長は気に留めた様子もなく。
「それは抜かりない。そもそも兄妹だ。ただ、シスターコンプレックスが拗れまくってるだけで、妹もブラザーコンプレックスが拗れまくってるだけだ。それに僕には許嫁が居る。問題ないね」
「年下の女の子と歩いている件は?」
「おや、目ざとい。マジメガネも情報戦が出来るようになって嬉しいよ。だが、残念だが、婚約者の妹だ」
ニコニコと委員長がのたまうのでそれは本当らしい。
「少しばかり懐かれてしまってね。行動が行き過ぎることがあるんだ。この前なんてキスをせがまれた。当然、拒否したがね」
委員長が手を横にしてヤレヤレと言った表情を取る。
「委員長は身持ちが硬くて羨ましいわ。僕も不順異性交遊じゃなくて、ちゃんとした異性交遊がしたい」
「初音くんじゃダメなのかい?」
ふと、私の名前が呼ばれ、琴線に触れた。
「少なくとも『要監視対象』を外さないと」
マジメガネの口調が真剣なモノに聞こえた。
「別段、そんなもんは突破してしまえば良いのさ。
男と女、ロマンスだってあるもんさ」
そうだもっと言ったれと委員長を応援する。
「そうはいかないのが僕のあだ名だ」
「マジメガネか」
そう真面目が眼鏡をしている堅物だ。眼鏡は今、してないけど。
ルールを破ることなんかできない。
ガチガチの堅物だ。
「ともあれ、初音さんももうちょっと落ち着いてくれたらなぁと思う」
「なによー、私が落ち着いてないみたいな話?」
話の途中に私が割り込む。
「落ち着いてたら、人の性欲を弄ぶような真似はしないと思うんだが?」
「全くもってその通りで」
とはいえ、精神的充足は必要なので必要経費だと思って割り切って欲しいと思うのが私の素の所である。
男が女性に責められる、それで情けない姿を晒すのをみるのは楽しいのだ。
こればかりは譲れない。だから勘弁して欲しい。
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