第35話 奪うのでなく奪われた〇
どうやら僕、
───って、そんな訳あるかぁァァァいッ!!
しかし
その本物の長い黒髪を優しく撫でてみる。
「…………ご、ごめん。本当に訳判らなくて」
此処でようやく颯希が僕を
「もぅ気づいてるだろうけど、此処がお姉ちゃん、
「お姉……真騎さんは、どうしているんだ?」
僕も疾斗としての口調に戻れた。何らかの事情があって、このオタク部屋が長いこと使われていない位は理解出来る。
「お姉ちゃん、フリーのカメラマンを目指したい。だから世界を巡って勉強してくるって言ったっきり………えっと、4年位
何とも複雑な表情で、颯希が真騎さんと化した自分を見つめる。女性が独り……家を出たきり連絡すらも
「………そ、そうか心配な話だな」
一体何と声を掛ければ良いかまるで
「う、うんっ………で、でも余程の無茶をしてない限り、大丈夫だって信じているの」
僕に身体を預けたままの姿勢、
「そ、それに
───うんっ………それは正直そぅ……。
「ちょ、ちょっと
「………? いい、けど………」
こめかみを
「い、今の僕って、そ、そんなに真騎さ……んに似てるのか?」
「………似てるっ!」
ガバッ!
またしても
───そ、そんなに!? こ、これは喜んで……いや正直まるで要領を得ない。
もしこの部屋に監視カメラが存在したら以下の様な構図であろう。
超絶可愛い
やはり途方もない
───これでは素直に
───ンンッ、待てよっ!? こんな場面を僕は知っているぞ?
風の国、フィルニア姫の専属メイドが、
クソクソクソッ!
───いやそれは
だからきっと
「あ、ご、ごめんなさい。
颯希がようやく僕を
「………あ、嗚呼、いや、その、何だ………。確かに正直驚いたけど、僕が真騎さんの代わりに寂しい気持ちを補完出来たなら……ま、まあいいや」
「うぅ………あ、ありがとう疾斗ぉぉぉっ!!」
涙で引き
「………は、疾……斗」
「え………あ、は、はい。何でしょう?」
颯希からの
「お、御礼を……さ、させて欲しい……の」
───タメが長ァァァいッ!
スッと
「………!?」
「此処、膝の上に頭を乗せて。
パチンッ。
白い柔肌の膝を叩いて僕を
バイク乗りは自然と脚も引き締まるのであろうか………。
───って〇う〇うっ、そうじゃ、そうじゃなぁい!
えぇっ………噓だろう。
しかもメイド姿。おまけに僕までメイド姿だ。
こんなシチュエーション、Youtubeの男性向けASMRだって、そうそう無い図式だ。大体あちらは
仮想を外した現実が、
───ええいっ! ままよっ!
「ふぇっ!?」
「………? どうしたの?」
こ、これが
「な、何でもない!」
「……? クスッ、変なの。じゃあ右からお掃除するね」
耳搔き棒がゆっくりと
「アレ? き、綺麗………だね」
それはそうだ。ついこの間、舞桜にして貰ったばかりである。よもや耳の中すら4年振りとでも思ったのであろうか。
「うぅ………こ、これじゃ耳を傷つけちゃう。
───み、耳元で
「あっ………」
耳搔き棒の反対側、
掻き出す
左右の耳掻きは直ぐに終わり、これで
「
「え? あ、う、うん………」
言われるがまま真騎姉は仰向けになり、その目を閉じた。もう爵藍家に来て以来、
「………ンッ」
───!!!??? な、何ッ!? 今、
「………い、良いよ。こ、これで……お、お終い。こ、今夜は、この部屋で………寝て…ね」
やられた………。恐らく
これが恐らく爵藍颯希の
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