第2部『意識の魔道士』
第12話 誰よりも大きな"華"火
───ハァハァハァハァ………。や、やっぱり此処だったな。
「は、はやっち!?」
此処はこの運動公園の中でも特に緑の生い
女の子のくせにやたらと高い木に登っては、僕のことを笑って見下ろすが好きだった。そして何か嫌なことがあった時も同じ行動を取った。
誰にも邪魔されず物思いにふけることが出来るお
心配になった
「………アーッ、ハァハァ………。ま、先ずその、だ、
だ、駄目だ。完全に普段と異なる人格が顔を出るのを抑えらんない。だがもう、そんなことどうだっていいっ!
「ふ、フフッ………。さ、流石に今日ばかりは笑い飛ばせないらしいな。つ、ついでだ。は、早く此処へ
息が未だ上がっている
「は、疾斗………?」
やたら
ガシッ!
「おぃ、弘美、テニスは好きか?」
「……ど、どうして……」
「まず俺の質問に答えろっ!」
弘美の震える両肩を
「…………す、好きだよ。好きだった、楽しいかった」
「じゃあ次だ、試合に勝つのは嬉しいか?」
上がった息を未だ整えながら絶対に視線を外さない俺。遂に弘美の
「当たり前じゃないッ! 嬉しかったッ! 初めて勝てた時は特にッ! ……けど、判んなくなっちゃったァァァッ! アァァァァッ!」
俺の頼りない胸を、両の拳で叩きながら感情を
「だけどもうこれ以上
「…………」
「皆の期待が重過ぎてどうにかなっちゃいそう………もうどうしたら良いか判らないッ!」
そしてそのまま俺の胸に頭を
いつも元気で活発に動く彼女の
これが逢沢弘美の
そして今の風祭疾斗の立ち振る舞い……これも幼馴染の
いっそこのまま優しく抱いてやるのがモテ男子の
───だけど俺はイケてる男でもなければ、此奴の彼氏でもない。
俺は再び弘美の肩を掴むと少し強引に引き
「………は、疾……斗?」
「そうだな、テニスの方は名
ハンカチなんて気の利いたものは
「だけどな弘美………。俺はお前が子供の頃、枝の上で一人、語った夢の話を覚えているんだ」
───そうだ、ついこの間の様に頭に浮かぶ。夏の夜空に咲いては消える
「私、元気しか取り柄がない。一体何が自分に向いてるかだなんて、今はまるで判らない。だけど、何だっていい。いつか必ず、あの花火にだって負けない大きな
昔話に驚き目を見張る弘美。しかしすぐに
だからこそあの時の自分を打ち消す様なことをやろうとしているのに気付いてしまったのだ。
それも真っ先に自分の
「俺はあの時のお前が、どんな花火よりも
───そう、羨ましくて仕方がなかった。日々をただダラダラと浪費することに何の疑問も持たなかった俺の心は
「そ、そんなこと……言ったっけ………」
この期に及んで未だにシラを切る。でもその気持ちも良く判っているつもりだ。
逢沢弘美16歳は、その華を開く手段を持ち得たかも知れないというのに、いっそ
落としてしまった赤いシュシュを拾い上げ、その手に渡す。
───努力の内に輝きを
「当然だけど俺は、お前じゃない。だから何も強制させやしない」
「………」
「けど、昔馴染みの根っから
───
Web作家『
感情が高ぶり過ぎて
寄って落ち込んだ今の弘美を
「………疾斗っ!」
───参った………。結局向こうからギュッされてしまった。うーん……やはりこういう時って、男子の方が背の高い方が、軍配が上がるに決まっている。
これでは女子に抱かれたお気に入りの
「ね、ねぇ………疾斗?」
「んっ? どしたん?」
「『根っからの
───モジモジと中々言いたいを切り出せない
「な、何だよ………ハッキリ言えよ」
逢沢弘美の赤ら顔………これは涙で
「私にも………私にも
「………っ! か、勝手にしろ……」
───クッソ、僕より視線が高いくせに、意外な程、可愛げがあるじゃないかっ!
「うんっ!」
試合に勝ってこれ以上、前に進むことを
まるで森の精霊達が
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