第11話 今の幸せと想い出を天秤に
土曜日……残暑の陽射しこそ未だ厳しくあるものの、風が運んで来る
…………ってただのピクニック的な遊びであれば、芝に寝転んで
僕、
そして正に言葉通りの
せっかくの休日、近頃進捗状況
───どうしてこうなった!?
「お、ほらほらっ、
「
祐樹が余りに大きい声を出すものだから、コートに居る主審から4人まとめてキッと、睨まれてしまった。
「………す、すいません。黙らせますんで」
何故か保護者のように僕が代表で頭を下げる。
まあ、そんな事は最早どうでもいい。
この僕が初めて逢沢のテニスを応援しにわざわざ出向いている。しかもあろうことか、あの
逢沢の心中は、恐らく激しく波打つ海のように穏やかではないだろう。
主審から試合開始の合図、選手同士が互いに形ばかりの握手を終える。
このセットのサービスは、逢沢から始まるらしい。高く黄色のボールが上がり、スパーンッと小気味良い音が
パーンッ!
いきなりの圧倒的なるサービスエース。深々とエグいコースに突き刺さる。相手の選手が少し気の毒に思える程、1歩足りとも動けなかった。
凄い……元よりテニスを語る口を持ち得ない僕であるが、いよいよ複雑な形容詞が意味を持たなくなってゆく。
「す、凄いね、逢沢さん……」
まるで僕の代弁者であるかの如く、
第1試合、あっという間に終了。セット数はおろか、それぞれのポイントですら、相手選手の
「…………えっ、逢沢さん、試合に勝ったのに何だろう。全然
何だか此方の空気まで沈んでしまいそうになる処で「し、シードの第1試合なんか勝って当然なんだろ」と、祐樹がいい加減な口振りで払い除けた。
確かにあの
~~~
あれよあれよと時間は立ち止まること知らず突き進み、あっという間にお昼を向かえた。
その間にも逢沢の
これに関しては逢沢の心境が判り
もっと言うなら父親の監視の目が光っているに
暗い感情がどうしても渦巻く最中、
「ちょっと待って、え、
テキパキと小気味良く開かれてゆく重箱の中を
「アハハッ、勝手に
乾いた笑いと舌を出して
そして見るからに、もう味が確信に至れる位の出来映え。
早速
「ひ、ひでぇよ、
「それは苅田君もちょっと
高2男子の手を容赦なく叩き落とす
それはそれとして、最早お母さんポジ? って位に
祐樹の方は適当にいなしつつ、早速取り皿へ綺麗に分けてゆく。箸の使いも手慣れたものだ。余程こういう事態に慣れているのだろう。
「さ、どうぞ。お口に合うと良いんだけど………」
「「いっただきまーすっ!」」
「い、頂きます………」
待ちきれずにウズウズしていた祐樹ともう映えより食い気に負けた
僕はおとなしく
「うっまっ! うちの母ちゃんよりうめぇ!」
「
いやいや、苅田祐樹よ。それは幾ら何でも自らの母に謝れ。それから何だ
───お主、
でも確かに美味い、しかもこれだけ大量に作るなんて。彼女の今朝は相当早かったことが
「いやあ………それにしたって揚げ物多過ぎたね。これじゃどのみち大事な試合を
皆に手離しで褒めちぎられても
「………ご、ゴメンッ、食事中に………僕、ちょっとトイレ行ってくるよ」
「風祭君? 大丈夫?」
「だ、大丈夫。すぐに戻ってくるから、本当にごめんねっ」
唐揚げを2つだけ頂いた処で僕は腹を押さえて席を立つ。心配そうに見つめてくる
お腹が痛いは下手な嘘。気になる
ただ一応の
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