第13話 大事な友達
「ただいまぁ。あ、ママ。お弁当箱は、後で必ず私が後片付けするから、そのままにしといて……」
私はダイニングキッチンに大きな包みを置くと、ロクに顔すら洗わず部屋のベッドへ飛び込んだ。
───あれじゃまるで私、嫌な女の子みたいじゃない…。
だって仕方ないよ、
今日のお昼。
やたらと
午前中、3つも試合に勝っているのに笑顔の一つどころか、どんどん暗い表情に変わっていったはずなのに、とても晴れやかな顔だった。
───あれではまるで『女心と秋の空』だよ、全く。
それからは決勝戦が終わるまで、ずっと笑顔でテニスを楽しみ、やり切る彼女がやたらと
試合に勝って全国大会行きの切符を手に入れた結果こそ同じだけれど、周りに与える印象が180度変わってしまった。
決勝戦こそ1セットだけ取られたけど、全然危なげなかったし、何よりもその眩しい誇らしさを風祭君一人に注ぎ続けているよう……少なくとも私にはそう見えた。
それを受け止める風祭君の方も、普段のお寝坊さんじゃなくて、あからさまに受け止める側の顔をしていた。
───だから今日の私は
───…NELNの通知?
『@HAYATO1013 今日はゴメン。ちょっと今から話せるかな? 出来れば通話で』
「えっ! あ、あ、えと……いや、何を慌てているの私。通話よ、通話。別にくしゃくしゃの髪を見られる訳じゃないんだから………『うん、大丈夫だよ』………と」
すぐに既読が付いた。どうしよう………。『今日は
それにしたって
「わ、わっわっ!」
風祭君から初めて来る通話の
「あっ、か、風祭君っ!?」
「だ、大丈夫? 何か随分慌てているようだけど。無理ならまた掛け直すよ」
我ながら最低な電話の取り方、慌てふためく様子が声に
「あ、い、良いの! だ、大丈夫。ちょっと眠くなっちゃって頭回んなくなってただけだから!」
「あ、あの量のお弁当を一人で作ったのだからそりゃあ眠いよね。ご苦労様」
取り合えず真っ赤な
でも
───お弁当………、そうだやっぱり
「いや、本当に昼間はゴメン。せっかく
「い、良いの良いのっ!
これは嘘じゃない。
───だけど私の聞きたい
「か、風祭君……。こっちこそごめんなさい、わ、私が逢沢さんの応援なんて……出しゃばりすぎよね」
「え……あ、嗚呼……そうか、そうだね。
私の落着きがない
それから彼は、逢沢さんと自分の関係を正直に話してくれた。
子供の頃はとても仲が良かった大事な
そして逢沢さんの
「僕は
「………」
「………でも、これからはちゃんと向き合おうって決めた。それをあの時、伝えたに過ぎないんだ」
やっぱり声量が小さい。だけど……何ていうんだろう、普段のはぐらかしてる感じじゃない。何ていうか男らしい
「そ、そう……だよね。私、知らなかったとはいえ、二人の間を邪魔してしまった……ね」
「いや、それは絶対に違い
風祭君と逢沢さん……この二人に立ち入る
もう諦めなきゃ……そう思い込んでいた私を、
───首を横に振る彼の姿が見える気がした。
「え……」
「
「だ、だけど……」
───これは一体なに? 彼の姿が見えるどころか、私の手を大きなその手で
「………成り行きとはいえ、弘美の大切な舞台に誘ってくれました。お陰で僕は、再び彼女を大切な
とてもとても
───んっ? 大切な………と・も・だ・ち?
思い掛けない風祭君の
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