第3話 百"見"は一"乗り"にしかず
「き、綺麗………わ、私の
わ、判ってる。
で、でも何だろ………この胸の高鳴りは………。
「僕さオレンジって色、結構好きなんだ。黒にも白にも負けない割に、赤程どぎつくないんだよね」
風祭君が
「わ、判るっ! そぅ、そうなんだよっ! お陽さまみたいで私も大好きっ!」
ど、どうしたのだろう………私ったら。何だか焦りで食い気味になっちゃうのを抑えきれない。
「それにしてもこの大きさ、やっぱり目立つな………」
───あっ………。そ、そうか。うんっ、そう、だよね。駐輪場に停車している他のスクーターの2倍位あるから驚いてるんだ。
「あ、朝はごめんねぇ………私このバイクのこととなると直ぐムキになっちゃって。原付2種って言われても訳判んないよね」
すかさず両手を合わせて頭を下げる。引き
───恥ずかしい。バイクのこと、何も知らない人にしてみたら、このフルサイズ※の125DU◇Eは、どう
※通常のバイクと同様のサイズであるバイク全般を指す。原付は車格が小さいものが多いので、原付で在りながら通常のバイクと同じ車格の場合、使う事が多い。
「あ、もうそれは良いよ。原付2種………排気量51ccから125ccまでを2種って言うんだね。全然知らなかったよ」
「………えっ、どうしてそんなに」
「あ、いやあ………ちょっと
少しどもった感じで
でも決して眼鏡の中の視線を合わせて貰えず、猫背で
此処で私の中の
黒いヘルメットを持って風祭君の目の前に突き付けてしまう。でも、どうしてだろう………。普段の私なら、こんな積極的じゃない筈なのに。
「えっ………」
「百
───乗せたいっ、風を切ることを知らないこの男子が驚く顔を見たくて仕方がないっ!
このDU◇Eを
風祭君の目があからさまに泳いでいるのが良く判る。だけどようやく私の方を向いてくれた。結構可愛い
「け、今朝暑くってさ。普段は使ってない方のメットを被って来たんだよ。本当はこっちのフルフェイス※なんだ」
※顔全体を
───そう………。朝被ってたのはジェットタイプ………って、そういうのは問題じゃない!
男子と
「………そ、その、じゃあお言葉に甘えて………」
ちょっと弱り気味の顔色をしていたから断られると思いきや、何と受け入れられてしまった。
───此処まで来ちゃったら、もう後退の二文字はないよねっ!
覚悟を決めてタンデム向けの
「さ、乗って……」
「い、いや、ど、何処に? どうやって?」
慣れない手つきで風祭君がメットの紐を通し終えると、この後どうしたら良いのか途方に暮れた声色で聞いてくる。
「此処っ! 私の座ってる後ろのこの
「えっ………」
───私の方から誘ったんだ。あくまでただの
「じゃ、じゃあ………」
如何にも危なっかしい動きで風祭君が
キュルルルッ! ブオォォンッ! ドドドドドッ…………。
エンジンに火を入れる。排気量125cc、15
此処までは普段通り、だけどこれからは、私に取っても
「さっ、じゃあ行くよっ! なるべくゆっくり発進するから、その時に地面を踏んでる右足もステップを踏んでねっ! あと、
「う、うんっ……うっわ!?」
普段より意識を込めて緩やかにクラッチを繋ぎ、アクセルの方は
ドクンッ!
どうしようなく高鳴る私の心臓の
そして思っていたより硬くてごつい後ろの胸板からも、心なしか
───私の鼓動と彼の鼓動……差し詰め2気筒エンジンっていった処かしら? ヤダ……何考えてる?
───って、うっわ………どうしてこの学校の出口はこんなにきっつい下り坂なの? 後ろの
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