第7話 何事も美味しい"処"が在るものだ
マスターの
けれどマスターが髭面を
これは一体どうした事だろう………。まあそもそも論、
「
「………あ、それは有ります。もっともミルクと砂糖デフォですが」
そう、こんな僕でも
それもどちらか言えば
「それは別に良いんだよ、人それぞれだから。ただね、余り
「えっ………」
自販機とはいえ立派な売り物。そんな怠慢が許容されるとは正直考えにくいと感じる。
「勘違いしないで欲しい、
「別に悪いことをしてる訳じゃないからね……」
少し
成程……
「………と言いますか、そもそも悪い事をしてる意識すら感じ取れない」
「そう……かも知れないねぇ。だけど人の味覚なんて千差万別。売り手が『コレが
「いえ………とても興味深いお話でした。ありがとうございました」
バツの悪い顔を此方に下げて謝るマスター。何も頭を下げる必要などない。
───だってさ、それは僕だって同じ穴の
「ま、そんな
固い表情をこのプリンのように緩めたマスターが僕の方をまじまじと見つめながら
───
「えっと………何て言うか、もう何もかもが異次元でした」
「ほぅ……」
そうだ、これは決して
そんな話ではないのだ。僕はインドア派だけどバイクより快速で非日常に連れっててくれる乗り物の経験くらいは存在する。例えば遊園地のコースターとかフリーフォール辺りだろうか。
そういう意味では期待を裏切ることになってしまうが
「元々僕は余り不要な外出をしません。家でPC相手が
腕組みしながら黙ってウンウンと
「けれど……これとても月並みで恥ずかしいんですが、風を切るって感じですか?」
我ながら
───だけどもコレが
「風を切るかあ………」
「出た出たマスターお得意の
ソレを聴いたマスターが
「ランちゃん? 変なハードル上げないでくれるぅ? まあ俺に言わせるとバイク乗りってのは、風を
「えっと………」
こらまた随分と
「確かに今日まあまあ風が強いね。しかし仮に無風だとしてもバイクで走れば風を……」
「「……感じるっ!」」
まるで示し合わせをしていたかの如く、
「……コホンッ、そういう事。君の周囲に走る限り風は無限に起こり、さらに
確かにその通りだ。だって僕最大級の
「でも、待って下さい。確かに普段と違うものを確かに感じました。けれど僕……正直
これは流石に
「そらそうだ。今回の風使いは君じゃない、間違いなくそれは
───す、凄い……。
「風祭君、君が吹かせた風じゃないから想像してたのと違う向きから風が起きたり、
美味しい珈琲とプリンをツマミにライダー魂で話が盛り上がるのかと思いきや、マスターがふと外の状況を覗き見る。
「あーっ、少し嫌な風が吹いてきたなあって思ってたけど、こりゃいよいよヤバいな。一雨来るぞ」
「え、そ、それはマズいよぉ……。流石に雨具の予備はないなぁ、残念だけど早く帰らなきゃっ!」
マスターの不吉な予言を聞いた
僕はスマホで時間を気に掛けてみる。間もなく17時を指していた。心底もうそんな時間かと
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