第28話 風の担い手の部屋
次に待っていたのは、
「………つ、着いた。此処が爵藍邸、何て立派な
初めて訪れた爵藍家。その場所は僕が住んでいる地域と同じく
しかも綺麗な門構え。それに車2台は往来出来そうなシャッター付きのガレージが在る。きっと125
ピンポーンッ。
少し震える指先でインターホンのボタンに触れる。直ぐに「はーい、今出るね!」と
ガチャッ………大きな玄関が開いた瞬間、僕は目を丸くせずにはいられなかった。
「いらっしゃい、貴方が
「ほぅ………。中々の好青年じゃないか、さあ入った入った」
大層美人でしかも家着とは思えない気飾りのお母様。加えて
───いきなりステ……じゃないけどいきなり爵藍家総出の出迎えとは、ステーキでなくても流石に重過ぎる。
「す、すいませんっ! こんな夜分にお邪魔致します! こ、これ母からです」
バッ! と頭を下げて、スッ! と握った包みを僕は差し出す。因みに僕の格好、颯希と初デートした際に用意した
───待て待て………。これってTV何かで良く観る結婚前、
「まあまあ、そんな気になさらずとも良いのに………。あら、コレ私の好きなお店のドーナツじゃない! お母様と気が合いそう」
それを受け取ると軽くスキップする颯希のお母様である。
「し、失礼します!」
まだ履きなれていないローファーを脱ごうとした時、気を利かせた颯希が靴ベラを渡してくれた。
受け取ろうとした時、僕の手が伸び過ぎた。靴ベラでなく、差し出しきた颯希の手、そのものを握ってしまった。
「あっ……」
「ご、ゴメンッ!」
「い、良いよ………き、気にしてない………から」
気にしてないと言った割に顔を
此処でふと見上げた先に居た
▼しゃくらんけのこうかんどが、3あがった。
───と、取り合えず、第一印象は問題なかった様である。
「さ、わ、私の部屋にいこ。そこを上がった2階だから………」
「お、おぅ……」
改めて颯希が僕を
さっき偶然握った手と同じだが、これは心の準備があったので、少しだけ
たかが民家でエスコートとは
だけども一緒に奥の階段へ向かおうとした際、目に飛び込んだ光景に思わず「おぉ………」と
さっき家に入る前に見たガレージの様子が、大きな
全く名も知れぬ外車と思しき自動車が2台。そして初めて見るサイドカー付きの大きなバイク。
これが恐らく
そして見知った
「ほ、ほら、行くよ」
「あ、嗚呼………ご、ゴメンッ」
少し待ちぼうけ気味な颯希の手に引かれ、それらを後にし階段を上がる。途中、中二階というべき部屋を通り過ぎてから、いよいよ颯希の部屋がある2階へ辿り着く。
1階層の広さそのままなんじゃないか? そう思える程これまた長い階段の奥。『I・B・U・K・I』というプレートが掛けてある
「ど、どうぞ………」
「え………………待って…くれ………」
けれど中学生辺りから、その回数はめっきり減り、高校の今となっては家の中すら上がれていない。
───だけど………だけど……そんなドキドキすらぶっ飛ぶ
「………な、何で? どうして『フィルニア』が此処に!?」
部屋の扉を開いた真正面に
ただ一応
「驚いた? 『疾風@風の使い手』様?」
さらにさらに驚きの波が
「『@ADV1290R』!? え、え、じゃ、じゃあまさか君が………」
この時の僕の顔は、相当可笑しかったことだろう。恐らく金魚の様に口をパクパクさせながら、震える指で颯希………いや@ADV1290R様の事を差していたに違いない。
コクリッ。
「そう………だよ。ごめんなさい、気付いていたのに言い出せなくて………」
告白する颯希の方とて、何とも形容し難い顔をして
「わ、私っ!
「あ、アアアッ………」
だ、駄目だ………身体中の全てがもぅ……
「………もぅフィルニアに
「………そ、そんな。そんな
颯希からの告白が鳴り止まない。僕の目が涙で
作品にも近況ノートにも、いつもいつも真っ先に欲しいコメントをくれた僕の最推しが『先生が私の最推し!』と3次元で返して来たのだ。
「………ご、ごめんなさい。で、でも! どうしてもこれを伝えるには、私の部屋しかないって思ったんです!」
───判る、凄く良く理解出来た。
恐らく自分でプリントアウトしてくれたのであろうフィルニアのポスター………それだけじゃない。
火の国の第6皇子『フィアマンダ・パルメギア』やフィルニアの従者である『カミル』のAIイラストすら飾ってあり、PCの背景もフィルニア姫であった。
自分が他の誰よりも、この作品を愛している。それを最大限伝えるのに、この空間以上にふさわしい場所など絶対に在り得はしないと納得せずにはいられなかった。
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