第15話 風使いへの険しき道程
───風を起こしたい? あの
ついさっき
………いや、まさか
私はそれ程デリカシーのない女じゃ………そう思いたい。全く………。
「バイクに乗るつもりなの? 疾斗が?」
「いや、正直な処、未だフワッとした話だよ。この間のマスターの話が気になってさ」
取り合えずおざなりなことを言って様子を
───マスターの話………。ああ、
「で、でもこの間も言った通り、バイクって仮に原付だってそれなりにお金は掛かるし、何よりも危なかっしい乗り物だよ?」
せっかくあの疾斗が私と同じ
「そ、それがさ………よくよく考えてみると、免許を取る位の
ほぅ?………それは
聞いたところによると風祭疾斗16歳。バイトはおろか、家の手伝いなどでお
一応ネットで副収入………と言ってもアマプラのGIFTカード数百円分位を毎月
アマプラのギフト………何だか妙に引っ掛かるものがあるけど、まあいっか。
とにかく親から貰う
子供のボーナスとも取れるお年玉すら『将来のために……』と、いかにも親らしい理由で持ってゆかれる。
それでもお金があるらしい。
「要はお金の掛かる趣味、僕
だからお金は貯まっている
あと免許を取るにせよ、原付なのか?
───なるほど………で、あれば。
「ねえ、疾斗ってさ。ちゃんと自転車乗れる?」
「ば、馬鹿にしないで頂き
別に馬鹿にした………つもりじゃないんだけど。またもさっき私をドギマギさせた執事の男の子みたいなのが、
私は思わずスマホを耳から遠ざける。そしてほとぼりが冷めたところで再び切り出す。
「じゃあ聞くけど、両手離しとか、人が歩くよりも遅い速度で真っすぐを維持出来る?」
「手離しぃ!? そのような
───いちいち
「ちょっとは落着きなさいよ。まあ、両手離しは余計だけれど、でも後者くらい余裕で出来ないと教習所すら
「え………またそんなお
そのキャラいつまで押し通す気なんだか………。自分で制御出来ないのかな? とにかく現実を伝えないといけない。バイク乗りの先輩として。
「それが全然戯れじゃないんだよなあ………。流石に徒歩より遅くは言い過ぎだけど、長さ15m、幅30㎝の平均台………通称一本橋っていうのが
そう……バイクの実技教習で『ハァ?』って言いたくなる内容の恐らく
「そ、そんなまるでサーカスの真似事みたいな?」
此処でようやく
「サーカスとはまた面白いことを言うけど、決して
「えぇ………」
絶望に打ち
「まあ、そういう訳だから疾斗の場合、いきなり教習所に行って要らない補習を受けるくらいなら、まずは自転車を練習した方が良いと思うよ」
「い、今さら自転車かあ………風使いへの道は
~~~
ガクンッ……。
原付免許………原動機付
何だったら自転車部の連中が乗ってる奴の方が、余程
「ん………待ってくれ。
普段
「………そうね、ただの原付免許ならそれで正解よ。だけどそれは正直お
「えぇーっ、な、何でですか
少し口を
「それは今、貴方が覗いてるPCのモニターに答えがあるよ。『
「えっ、それってつまりどういう事ですかぁ?」
引き続き小生意気な
「だぁかぁらぁぁ……ロクにバイクの乗り方を教えて貰えないってことだよ。先生の言ってること判るぅ?」
「あ………」
───判った………痛過ぎる程に。原付免許の制限速度は時速30km。それだって充分早いし、
正に正に大
「ようやくお寝坊な君にも判ったようね。自転車すらちゃんと乗れない人が、たかが
「も、もう充分判りました先生。ち、血の雨が降りそうです…………」
血の雨………恐らくスマホ向こうの颯希先生は
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