第33話 若さ故の何とやら………
未だ数時間だというのに様々な事が在り過ぎて、何やら夢見心地な風呂であった。
しかし脱衣所に用意された着替えを目にして瞬時、現実へと引き戻される。いや………
「………な、何じゃあっ、こりゃあぁぁぁぁッ!!」
まるで昭和の刑事ドラマみたいな台詞だ。でも他に形容する
───何だか黒くてヒラヒラしている………しかも生地が薄くて透けて見える。肩紐も袖口も腰から下も、その全てがだ。
「こ、これって女性用の服!? しかも
ガクッ………。僕はその場で膝から
そう言えばさっき何やら『着替えがないわ……』とやけに大きな声が届いたのを思い出す。
僕が来ていた服は洗い立て………乾燥機は? ………無い……らしい。何とも無常だ。
───いやいやいやいやッ!
こ、コスプレッ!?
「あ、あのうっ! この準備して下さった着替えの事なんですがァァッ!!」
脱衣所の扉を閉ざしたままでも届く程の大声で、僕は青年の主張とやらを無駄だと知りつつやってみる。
「
またも良い声を返して来たのは
「こ、この着替え。娘さんの分と、お間違えになられていらっしゃいませんかァッ!!」
我ながら頭が可笑しいのを自覚している。このヒラヒラが仮に颯希の物だとしても、このタイミングで、これに着替える道理がないのだ。
「
「え…………」
───在る……それも壮大なものだ。
実に気持ちが悪い………頭すら刺す様に痛い。
気持ちが悪いのならいっそ吐けば楽になると良く在る話だが、今僕の喉元に
「それもつい先程の話だ………
ガラッと脱衣所の扉を開かれてしまう。扉の代わりとばかりに金髪の中年男性が腕を組んで立ちはだかる。僕は
家の中だというのに何故かサングラスすら掛けていた。おまけに
───こ、これかッ! これがこの
「さあ先程の出来事を大いに語るのと、今その場にある服を受け入れる………何れかの
───ひ、酷い………。いや、僕の罪は認めよう。だが
だけどもこの金髪男を『こんな大人、修正してやるッ!!』などと空手パンチを繰り出せる自信など在りはしない、在る訳がない。
思い切り本気で殴り飛ばし『サボテンが…花を付けている』と言わせられたらどれ程良かろう……だが絶対に不可能である。僕には
もう心底
───何だろう………………父さん、母さん………僕、
それにしても恐るべし
───着た…………全部着たよ、取り合えず…………鏡ィッ!? そんなの見たい訳ある筈ねぇだろうがァァッ!
「お、実に良い心掛けだ。
もう判った……この方が何処ぞの偉大なる声優様に似ているのか、平成生まれの僕とて確信に至る。
「せ、せめて後生ですから、娘さんの部屋に置いてきたジャケットだけも
「あらあら、疾斗君。もう着てしまったのだから、より一層輝きたいとは思わないのかしら?」
金髪グラサン………じゃない颯希父から颯希母へとバトンが渡った。
───いや、何か知らんが今輝いてんのは貴女です。やけに
………ってまさか『
───無論、強制で座らせられた。
何だこの椅子? まるで此処だけ重力が3倍位あるのではないかと思える程、見えない何かに押し付けられた気分である。
在りとあらゆる化粧品達が
「さあ、腕によりを掛けて疾斗
自分の髪を結い上げているのは、
『私、学生時代コスプレにハマっていたのよ』などと言わんでも良いことを勝手に
この御母様が
早い話が
これから
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