第24話 『………駄目?』
「…………いや、待って下さい。何しろ僕、原付の免許すら持ってないんですよ」
「…………えっ!?」
此方に全く非はないのだが、何か言い出し辛い雰囲気をこじ開けてみると、
───ふぅ…………
それどころか国家資格なんて何一つない平凡を絵に描いたような男子高校生である。
───本当にこの子の一本気な処、
~~~
僕は『大変ありがたいお話ですが、とにかく少し考える時間を下さい』と言い残し、今は帰宅の電車に揺られている。
颯希の方は行く時と同様、押し黙ったままと化す。間もなく時計が16時を指す。
真昼の真夏の夢の如き格好をしている颯希にしてみれば、この涼しさは少々酷になっているのかも知れない………。
───お、おぃ………。
「い、颯希………?」
相変わらずだんまりなのだが、不意に颯希が僕の方へと身体を預けて来た。
「………さ、寒いのか?」
「………う、うん」
やっぱり互いの視線は絡めず、ぎこちない言葉を交わす。これならただ乗り合わせた乗客でなく、美少女の友達を連れた男友達位には格上げに見えるやも知れない。
「い、颯希………」
「………何?」
これから僕はこの美少女へ思い切った指摘をする………しなければならない。だけども触れ合っている肩の温かみが、その決意を
───けれどこれだけは言わねばならぬ。
「僕に言わなけりゃならないことがある筈だ。………それを拒むのなら風祭疾斗は、君の彼氏どころか友達すら辞める」
「………………っ! う、うんっ、そ、そう、だよ、ね………ゴメンッ」
触れ合っていた肩がピクンッと上下する。さらに声色に少々震えが帯びる。成り行きとはいえ、今の僕は颯希姫の彼氏だ。震える肩を空いた片手でしっかりと掴んでやった。
「………本当にごめんなさい。もう察してると思うけど、本来なら
僕がきちんと肩を
10万円………。中古バイクの値段なんてまるで判りやしないが、恐らく店頭に並べば、もっと良い値札が付いていてもおかしくない気がする。
「疾斗の口座に貯まっているお金、免許位なら問題なさそうだったじゃない? だけど肝心のバイクを買うには足りないだろうって思ってさ………」
「………カマ掛けてみた?」
コクンッと
「………そぅ、なんだ。『私の彼氏の誕生日でも………駄目?』ってね」
───くぅ!?
今の颯希の声色の
あのおじさんもこの『駄目?』で
ゴクリッ…………これは息、飲まずにはいられないッ!
「…で、なら良いかと?」
これにまたコクンッと小さく頷く颯希である。…………可愛い、これ圧倒的に可愛いが酷い。不意に向こう側の窓が暗くなり、僕に抱かれた颯希が首を下げた瞬間が映える。
───これはイカン、非常にイカン。此方まで
「………あ、有難い話だと僕が言うとでも思ったか? 正直余りにも
───違う! 断じて違う! 颯希の『
これにはまたしても颯希の肩がビクッと震え、心拍すら伝わって来る気さえした。
「………判ってる! そんなこと判ってるよぉっ!」
僕の隣で急に乱れ始める。これには流石に周囲の視線を感じずにはいられない。しかし事此処に至れば、最早
「………お、落ち着いて。ちゃんと最後まで聞くから」
颯希の肩を強く揺すり
「………ま、またごめんなさい。うん、自分でも重過ぎるって自覚してる。だけど………」
「………?」
▼こうかは、ばつぐんだ。
だったらしい………。颯希の声に落着きが戻る。僕は続きの発言をじっと待つ。
「………だってさ、あの凄く可愛い
声は確かに落着き払っている。けれども肩が小刻みに震えているのは抑えきれない。
───私が勝つ!? ………こんな平凡を絵に描いた様な男子高校生。増してや未だ出会って2ヶ月目なのに、何故それ程に? 母さんが言ってた『人の好意に気付かないのは罪』をふと思い出す。
───好意………? 好きってことさ………風祭疾斗君。
どれだけ鈍い
でもどうして此処まで彼女が堕ちたのかがまるで解せない。繰り返すが僕達は知り合ったばかりの友人の筈だ。性別の違いがあるにせよ。
「………ど、どうして僕なんかをそんなに………」
これには応答がなく、時だけが無常に過ぎていった。僕は大いに悩んだ。彼女の
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