第44話:乳歯の話

「ミイッ! ミイッ! ミイィ~! (かまって! かまって! かまってぇ~!)」

「ジョイは今日も元気だなぁ」


 保護部屋の扉を開けると、可愛く大きい鳴き声がする。

 ちょっと前までキューキューという小動物系の声だったのが、生後1ヶ月を過ぎたら仔猫っぽい声になった。

 これって声変わり?

 声の主はジョイ。

 こちらの姿が見えないときは鳴かないので、いわゆる【要求鳴き】というやつ。

 ジョイは兄弟の中で1匹だけ要求鳴きをする可愛い子。

 そんなジョイを撮影すると、お口の中にはえている乳歯がよく見える。


 猫の乳歯は上下合計4本の犬歯、上下合計12本の門歯、上下合計10本の臼歯で、通常は26本。

 永久歯になると臼歯(後臼歯という)が4本増えて30本になる。

 乳歯の生え始めは生後3週間頃。

 最初は目視では分かりづらく、歯茎を触ってみて分かる程度。

 その後、生後3週間~2ヶ月の期間に少しずつ生え揃っていく。


 ジョイたちは5/27で生後6週間。

 そろそろ乳歯が全部出揃う頃かな。

 リンネの子たちは初めてケージから出して触れて見たのが生後4週間頃で、そのときには犬歯がはっきり見えるくらいになっていた。


 半透明の小さな乳歯は、生後3ヶ月を過ぎると永久歯に生え変わり始める。

 永久歯は透明感はなく、乳歯よりも大きい白い歯。

 生後7ヶ月頃には全ての歯が永久歯に変わり、仔猫というよりは若猫という感じの容姿になる。


「この綺麗な歯が、揃ったと思ったら抜け替わり始めるなんてもったいないね」

「???」


 ジョイを膝に乗せて、顔をムニムニするついでに乳歯を眺めながら、そんなことを言ってみたり。

 何を話しかけられたか分からないジョイは、キョトンとしていた。


 抜けた乳歯は滅多に見つからない。

 小さなものだから落ちていても気づかなかったり、仔猫が飲み込んでウンチと一緒に排泄されて気付かなかったりすることが多いそう。

 見つけたら幸運のお守りとして保管する人もいるくらいに珍しいもの。

 我が家の飼い猫の中で仔猫から育てた子は3匹いるけれど、乳歯が見つかったのは1匹だけだった。

 保護っ子たちは乳歯の期間に譲渡か東京行きになるから、更に確率は低い。


 リンネの子たちも、東京行きを予定している。

 もしかしたら島内でも里親が決まるかもしれない。

 乳歯が抜け始める頃には、もう我が家にはいないだろう。

 幸運のお守りを手にするのは里親さんか、それとも東京のボラさんか?

 できれば里親さんが見つけて、大事に保管してくれたらいいなぁ。



※画像:口の中がよく見えるジョイ

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093079693568949

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る