第29話:最恐の門番

「ウアーオゥ~! (ここは通さん!)」

「リンネ、後ろにオヤツあるよ~」

「ウゥゥ~ッ、シャーッ! (その手には乗らないぞ!)」


 ケージの扉前で待ち構えるリンネ。

 トイレ容器を取り出したい保護主。

 最強(最恐?)のゲートキーパーを突破するには、どうすれば?!


 もはやリンネに隙は無い。

 煮干しでも、焼きかつおでも、蒸しささみでも、食べることに没頭しない。

 ケージの扉を開けようとすれば、サッと振り向き飛びかかってくる。

 今できることは、「パンチを皮手袋とトイレ容器で防御ガードしつつ、素早く取り出す」だけ。


 猛猫が反応するより速く動くことを要求される日々。

 一体なんの修行をさせられてるの?

 反射神経めっちゃ鍛えられてる気がするよ?

 それが役立つときが、多分そろそろやってくる。


 うちで飼ってる元野犬スバル。

 3年経っても人慣れしない、近付けばダッシュで逃走する犬。

 攻撃性は無く、噛んでる暇が合ったら逃げる! っていうタイプなので、リンネに比べたらずっと扱いやすい。

 散歩に行けない犬なので、ドッグランの西端から東端まで長いロープを張り、そこにワイヤーリードを付けて移動範囲を広くしている。

 そのスバルに狂犬病予防接種をするのが一苦労。

 車で30分かけて病院とか無理なので、かかりつけ医に往診してもらって接種する。

 予防接種の日は犬の扱いに長けた御近所住民Aさんが手伝いに来て、ダッシュで西へ東へ走り回る中型犬を、2人がかりでバスタオルを被せて捕獲、獣医さんがブスッと注射という流れ。

 捕獲のためのバスタオルは、「ドッグランの角に追い詰めた元野犬が反応するより速く」被せる。


 野性味あふれる犬との反射神経勝負!

 今年もそろそろ狂犬病予防接種の時期、リンネの特訓(?)の成果が分かるかもしれない。


「ウアオゥ~! カッ! (もっと鍛えてやるよ!)」

「いやもう充分だよ?」

「ウゥゥ~アーオゥ~! (突破できるか、やってみな!)」

「なんで掃除するだけなのに門番対決あるの?」


 猛猫ゲートキーパーは容赦ない。

 高速パンチが今日も飛んでくる。

 トングにはあまり攻撃しなくなったのに、トイレ容器の出し入れ時は前より激しく殴りかかるようになった。

 ケージの扉に手を近付けるだけで、激しい威嚇と共にパンチが飛ぶ。

 保護部屋に入れば、ケージの扉にスッと歩み寄り、睨む姿は仁王像の如し。

 最近は黙って睨みながら圧をかけてくることが増えてきた。

 威嚇するより黙ってる方が怖い猫って初めて見たよ。

 懐いてくれとは言わないから、せめてパンチはやめてくれないかな?



※最恐門番リンネ

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093077420302879

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