第20話:リンネ指名で届いた品

「リンネに食べさせてあげて」


 と、御指名で頂いたウエットフードと液状オヤツ。

 リンネに試食させてみたところ、凄い速さで完食!

 カップに入ったウエットフードをスプーンですくって差し出したら、ほとんど丸飲みの勢いで食べた。

 余程おいしかったのか全部食べ切るまで無言で頬張っている。

 もっと味わってゆっくり食べればいいのに。

 屋外で生まれ育った猫は大体早食いだ。

 のんびりしてるとカラスや他猫に奪われるから、いつも急いで腹に詰め込むのが野良猫流の食べ方。

 屋内で食べ物独り占め状態になっても、その食べ方は変わらない。


 ケージに近付いただけで飛びかかってくる荒々しさも変わらない。

 むしろ先月よりも激しくなった。

 目が合っただけで飛びかかる準備をしている。

 まるで通りすがりの人間に喧嘩を売るチンピラのようだ。

 ケージに触れる際は皮手袋必須。

 トイレの容器を取り出す際は、パンチは常時、時々くる噛みつき攻撃に要注意。


「ウニャーオ! (腹減った!)」

「おっ、珍しくニャー系の声だね」

「シャーッ! ウゥゥ~! (うるさい! 早くメシよこせ)」

「トイレ掃除するから、後ろでこれ食べて待ってて」


 腹減ってるから荒れるのかなぁ? と思ってケージの後ろ側に煮干しをポトンと落としてみた。

 ペット用のオヤツとして売られている煮干し。

 買ってきてすぐ試食させたときは良い食いつきだったのに、リンネは見向きもしない。


「リンネ、後ろ後ろ」

「シャーッ! (うっさい!)」


 すぐ後ろに煮干しがあるよと教えても、振り向きもせずに睨んで威嚇。

 怒りまくって、背後にあるオヤツに気付いていない。


 すると……


「キュー、キュー (ママが食べないならボクが食べるでち)」

「……えっ?! マイクル?」


 マイクルと名付けた茶トラ仔猫が、ヨチヨチ近付いて煮干しをガジガジ齧り始めた!

 そろそろ生後3週齢、乳歯がはえてくる時期。

 歯茎がむず痒くて齧ったのかもしれない。


「キュー、キュー (ん~、硬いでち)」

「食べるにはちょっと早いと思うよ」


 リンネの出産から20日目、初めてほっこりした。

 マイクルも野生の逞しさを受け継いでいるのか、煮干しに食らいついて齧り続けている。

 食べるためというよりは、狩りの練習くらいなのかもしれない。

 オモチャ代わりに煮干しはそのまま置いておこう。

 と思った直後、気付いたリンネが回れ右、煮干しを奪って食べ始めた。


 今がチャンス!


 リンネが煮干しを食べている間に、ケージの扉を開けて猫トイレを取り出し成功!

 ハッと気付いたリンネが振り返って飛びかかる頃には、僕はケージの扉を閉めている。

 パンチ無しで初めてトイレ掃除ができた。


 掃除の後。

 リンネはウエット1カップとちゅーる1袋を食べていながら、ドライフードも完食。

 マイクルのオモチャに追加した煮干しも奪って完食。

 底無し胃袋になった腹ペコ猛猫爆誕か?



 ※仔猫たちとリンネ

 https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093076802547600

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