第10話:仔猫開眼とリンネの変化
「リンネごはんだよ~、おっ? チビたち目が開いた?」
「シャーッ!(見んな!)」
「ちょっと見せてくれてもいいじゃないか。減るもんじゃないし」
「ウ~ッ、カッ!(だが断る!)」
生後10日目、仔猫たちの目が開いているのがチラッと見えた。
残念ながらじっくり全員は確認できない。
仔猫の目は生まれた時は閉じていて、生後8~10日頃に開く。
リンネの子供たちも目が開く時期だ。
とうとうリンネのパンチを食らってしまった。
掃除が終わったトイレ容器をケージに入れる時に、リンネがプラ容器を越える大振りパンチを飛ばしてきて、左手親指の付け根にヒット!
幸い、ちょっと当たった程度で血も出なかったし、インフルの注射程度の痛さだった。
あ~、遂に食らっちまったなぁと思いつつ、大したことはなかったのでそのまま御世話を続けた。
しかし、パンチを当てた後のリンネの様子がいつもと違う。
リンネは弱めの唸り声を上げつつ後退した。
「ウゥゥ~(なんで避けないのよ)」
「えっ? なんでそんなショボくれてるの?」
「ウ~アーオ(当てるつもりじゃなかったのに)」
「シバく気満々でパンチ放ったんじゃないの?」
リンネはパンチを当てたことを後悔するかのように、ショボンとした顔になっていた。
ジリジリ後退した後は、ケージの角で縮こまっている。
警戒して身構えているという感じではないような……
リンネは俯いて、上目遣いにこちらを見て、しきりに瞬きしている。
唸り声も怒っているというより何か言い訳するような、弱気な感じ。
そんなリンネを見るのは、初めてだった。
「リンネ~、ほら、ちゅーるだよ~」
「ウゥ~(そこに置いといて)」
御世話の最後に差し出すちゅーるを見ても、ケージの隅でショボンとしたまま寄ってこない。
前回や前々回は、ちゅーるを見せたらノッソリと歩み寄ってきて、小袋にバクッと食いつくほどだったのに。
しばらく待ってみたけれど、結局このときはちゅーるに食いつくことはなかった。
パンチを当てたから怒られると思っているのか、当ててしまったことを申し訳なく思っているのか。
シャーパン猫の気持ちは、まだよく分からない。
とりあえず、次からはトイレ容器の出し入れ時には皮手袋を装着することにした。
近所の人が「猛猫の御世話に使うといいよ」と言って、買ってきてくれた百均の皮手袋だ。
ホームセンターで売っているものに比べると、生地がやや薄くて防御力は低いけれど。
猫パンチから手を守るくらいはできそう。
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