第11話:控え目に威嚇する

「ウ~、シャーッ!(またなんか変な物もってきたわね)」

「百均で買ってきたんだよ~、サランラップの芯だけだとドライフードを入れづらいからね」

「ウァ~ゥ~ッ(ふん、不器用な奴)」

「人間は考える葦ってどっかの偉い人が言ってたから、考えてみたんだよ」

「ウウウ~アーオ(余計な事ばっかり考えてるだろ)」


パンチ対策でサランラップの芯を使ってドライフードを注ぎ入れる日々は今も続く。

ドライフードの計量に使った容器は、中身をサランラップの芯に注ぎにくい。

それで、ドライフードの粒が通り抜けるサイズの漏斗を買ってきた。

サランラップの芯をケージの隙間から差し入れて、出口を餌入れに向ける。

芯の入口側に漏斗を差し込み、ドライフードをザラザラーッと入れてみた。

注ぎ入れる作業は、漏斗を使ったら簡単になった。

今まで上手く通らなかった粒がポロッと落ちたりしていたけど、1粒残らず餌入れ容器に収まった。

これからはサランラツプの芯+漏斗を使おう。


「ウ~ゥゥゥ~、シャーッ!(変な道具、早く片付けろ)」


今日も怒っているリンネ。

でもその唸り声に、いつもの覇気がない。


「はい、トイレ掃除するよ~」

「……」


パンチを覚悟しつつ皮手袋でガードした手でトイレのプラ容器を掴んでケージの外へ引き出す。

いつもならパンチを放つタイミングだが、リンネは無言で顔をそむけた。

後ずさりして、唸り声も出さなくなった。

瞬きしながら、チラッチラッと横目でこちらを見ている。


え? なんで?

パンチを予想して身構えていたのに、拍子抜けだ。


「リンネ、どっか具合が悪いの?」

「シャーッ!(なんでそうなる)」

「リンネがパンチしないなんて、体調不良じゃないの?」

「ウアーオ!(違う)」


猛猫が大人しくなったら、大体が病気だけど。

リンネはゴハン完食してるし、ウンチもいいのを出している。

病気ではなさそうだ。


パンチしなかった理由は、本猫ほんにゃんのみぞ知る。

できればもうパンチ卒業してほしいなぁ。


「はい、トイレ掃除終わり。ちゅーるタイムだよ~」

「ウ~ッ、アーオゥ~(そこの小皿に入れて立ち去れ)」


ちゅーるを見せても寄ってこない。

目を逸らしつつ、たまにチラチラ見るから、食べたい筈。

なんで来ないんだろう?

ちゅーるで距離が縮まりかけていたのが、離れてしまったようだ。


昨日パンチを当てちゃったことを、気にしてるとか?

シャーパン猫が、そんなことを気にするだろうか?

リンネの心理状態が、イマイチよく分からない。



漏斗を見て威嚇するリンネ 2024.4.25撮影

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093076244759627

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