第12話:しおらしいのは2日だけ

リンネが控えめに威嚇するのは昨日までだった。

翌日保護部屋へ行ってみたら、いつものシャーパンに戻っている。

ケージの扉に近付くだけで、激しく威嚇し始めた。


「あれ、いつものリンネに戻った?」

「シャーッ! カッ!(うるさい! 殴るぞ!)」

「って、もう殴ってるよね?」


掃除のためにトイレ容器を取り出せば、ブンッと振り切るパンチが飛ぶ。

トイレ容器の壁面でそれをブロックしながら取り出して、排泄物を片付けて、戻す時にもまたパンチ。


「カッ! カッ! カッ!(お前、嫌い! 消えろ!)」


破裂音に近い短い威嚇と共に、パンチ三連。


猛猫復活だ!

むしろ、しおらしくなる前より荒々しいぞ。

回数が多過ぎて、何回パンチ出してたか分からないほど。


今日は、餌が出てくると分かってる筈のサランラツプの芯まで殴った。

今まで、ドライフードを注ぎ入れる白い筒は攻撃しなかったのに。

ケージの天井側から撮影しようとしたら、伸び上がってパンチしてくる。

また振り落とされて、子供たちがピーピー泣いてるぞ。


あのしおしおリンネは一体何だったのか?

パワー全開で荒ぶるシャーパン三毛は、昨日のことなんかもう忘れているようだ。


その代わり、ちゅーるには再び食いつくようになった。

小袋を見せたらズイッと歩み寄り、釣り魚のようにバクゥッと勢いよく。

まさに「食いついている」感じだ。

1回ガブリと小袋を噛むのは以前からだけど、今日は食いついてからの力強い「引き」があり、小袋をもってかれそうになった。

まるで、強い引きで釣り人を魅了するタマンのようだよ。


「ウゥゥ~ウ~ッ(それをよこせ~)」

「引っ張らなくてもオヤツ出てくるから」

「ウ~(早く出せ)」

「とりあえず落ち着け。ほら、オヤツ出てきたよ」


どうにかふんばっていたら、引っ張るのをやめて中身を舐め始めた。


小袋、開けてあるよ?

噛んで穴開けなくても出てくるよ?

引っ張っても中身出てこないからね?


ちゅーるに夢中のリンネは、鼻の頭に液状オヤツがくっついても構わず小袋を舐めている。

その様子を撮影してみたいところだけど、両手が塞がっているので無理。

下手に動けばパンチがきそうでヒヤヒヤしながらのちゅーるタイム。

サファリカーからライオンや虎に肉を差し出すよりもスリル満点だ。

そうだ、今度リンネに肉を食わしてやろう。

ドンキで売ってるハツ(鶏心臓)とか食うかな?

うちの地域猫たちなら喜んで食うけど。

割り箸でつまんで差し出したら食ってくれるかな?

しかし、パンチで叩き落す予感もする……。


仔猫に栄養とられまくって痩せてきたリンネ。

何かいいもの食わしてやろうと考える保護主の心は、多分伝わらないだろうな。

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