第15話:イカ耳からの猛猫アタック

 今日は撮影しようとするとリンネが暴れるので、かわいく撮れない。

 荒ぶる三毛猫の舞? ブレるから大ジャンプして威嚇するのやめてね。


「シャーッ! ウアーオ! (てめえ! 勝手に撮るな!)」

「ブログ用だよ、全国の読者が見るんだよ、もうちょっとかわいく写ろうよ」

「ギャーオ! カッ! (だまれ! 殴るぞ!)

「言いながらもう殴ってるじゃないか」


 相変わらず、荒れまくるシャーパン三毛リンネ。

 むしろ更に荒々しくなってきてるような?

 人慣れしていない猫を「ビビリ猫」というけれど、リンネにはビビリなんて単語は似合わない。

 この荒れようは「猛猫」「マジギレ猫」というべきか?

 昭和の香りを漂わせるなら「スケバン猫」でもいいかもしれない。

 百歩下がって上品に表現するとしたら、「猫界の悪役令嬢」? 「悪役猫嬢」?


「悪役猫嬢リンネ様~、うーん長い。やっぱ猛猫リンネでいいな」

「ウヤァァァオゥ、シャーッ! (いらん二つ名をつけるな!)」

「今日は随分荒れるなぁ」


 ケージの上から撮ると今までは寝そべったまま何もしなかったのに、今日は飛び上がってパンチしてくる。

 仔猫たちが吸い付いてないから、思い切りジャンプしてくるのかもしれない。

 当たったらスマホ壊されそうな勢いのシャーパン。

 今日はケージの格子の間から撮影するのは無理そう。


「ウゥゥ~ッ、カッ! (近寄るな、殴るぞ!)」

「はいはい、もう殴ってるね」


 トイレ掃除の際には必ずパンチしてくる。

 それもフルスイング・フルパワーのパンチ。

 いつ仕掛けてくるか先読みして、プラ容器の壁面でガードする。


 かわいい仔猫たちを眺める余裕なんてない。

 リンネの御世話タイムは、まるで戦闘訓練のようだ。


 猛猫アタックを防御したり回避したり。

 野生のお嬢様の相手をしていたら、保護主も野生に目覚めたかもしれない。



 仕事帰り、会社の事務所へ店の鍵を返しに行ったときのこと。

 なにをしてたのか分からないけれど、事務所の人がブンッと振った腕が、近くにいた僕に当たりそうになった。


「あっ、ごめんっ」


 って声がしたときには、既に回避。

 無意識にスッと屈んで、避けていた。

 事務所の人の腕も手もぶつからずに、頭上を通過。

 ぶつかるとか避けなきゃとか考えるよりも早く、回避行動がとれてしまった。


「避けちゃいました」

「すげえっ」

「動物を相手にしていると、これくらいはできるようになるんですよ」

「野生に目覚める系?」


 事務所のお兄さんに、野生に目覚めた人だと思われたようだ。

 高校生時代みたいに【野生児】の異名がつかないように気を付けよう(笑)

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