第38話:日本語が通じるようになった

 最近、保護部屋へ行くと仔猫たちがケージの前に陣取るのでリンネが見えない。

 リンネにちゅーるをあげると、我も我もと仔猫たちが押し寄せる。

 頭や顔を踏まれたり、間に割り込まれたり、仔猫の身体にちゅーるが付いたり、なかなかのわちゃわちゃぶりだ。

 好物を食べるのを邪魔されてもリンネは怒らず、時折優しい声で鳴きながら仔猫たちに付いたちゅーるを舐め取っている。

 母猫って寛大だなぁと思う今日この頃。

 できれば、その寛大さを保護主にんげんにも!

 そんな願いが猫神様に通じたのか、猛猫令嬢に変化が訪れた。



「リンネ~、掃除するよ~」

「……」

「ちょっとトイレ(容器)取らせてね」

「……」


 掃除の際に、いつもリンネに話しかけていたら、パンチする回数が減ってきた。

 リンネはまるでこちらの言葉が分かるかのように、「事前に言った行動」は容認してくれる。

 以前は毎回激しい攻撃を仕掛けてきたトイレ容器の出し入れ時も、マジックハンドを使うようになってからはパンチしなくなった。

 ケージの扉を開けるために手を近付ける際も、「開けるよ」と言えばパンチはしてこない。

 それどころか、スッと身を引いて掃除の邪魔にならないように配慮してくれる。

 しかし、代わりに仔猫たちがわらわらと押し寄せるので、やりづらいのは変わらなかった。


「キュー、キュー (ごはん、ごはん)」

「ミィィィ~ッ! (はやく~っ!)」


 特に騒がしいのは白茶のジョイとルスト。

 ジョイは声がデカくて、グイグイ迫ってくるタイプ。

 ルストは扉を開けると飛び出して、保護部屋内でソロ運動会を開催する。


「リンネ、ちゅーる食べる?」

「ニャーン (いただくわ)」


 ちゅーるという単語を覚えたらしいリンネは、声をかけると穏やかな声で返事をするようになった。

 液状オヤツが繋ぐ、保護主と猛猫の絆……

 ……になる筈が、割り込むジョイに台無しにされる。


「ミイッ! ミイッ! (ボクも! ボクも!)」

「リンネ、食べづらそうだね」

「ンニャッ (気にしないで)」

「ウマウマウマ (←日本語?)」

「ルストは食べたらケージに戻ってね」


 必死で割り込むジョイに、リンネは押しのけられたり踏まれたりしている。

 上下2段の食器に交互にちゅーるを絞り出すと、ジョイとはシェアできるものの他の仔猫が押し寄せるので、食べづらいのは変わらない。

 ケージから飛び出したルストはといえば、小皿に入れてあげた仔猫ちゅーるを悠々と食べていた。

 食べ終わってからケージの前まで歩いてきたので扉を開けたら、ハウスと言われたワンコみたいにケージにIN!

 もしかして、オヤツを独り占めするために出てきたのか?



※5/22撮影の仔猫たち

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093078154147429

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る