第33話:仔猫防壁展開中

「ウゥゥ~…… (また変な物を……)」

「今日はこれでパンチを防ぐぜ」

「シャーッ! ウアーオゥ~ッ! (わけわからん物をケージに入れるな!)」


 猛猫対策用品=衣装ケースの蓋。

 これをどう使うかというと、ケージの中に衝立みたいに立てて、猛猫アタックを防ぐ盾にする。

 気分は凶悪犯に挑む機動隊?

 早速試そうと思ったら、想定外なことに。


「キュー、キュー (ゴハンだゴハンだ~)」

「キュウーッ (おなかすいた~っ)」

「ミィ~ッ! (はやく~っ!)」


 仔猫がわらわら寄って来て、ケージの扉前を占拠!


 か、可愛い……


 でも扉が開けられない?!

 これ扉開けたら仔猫溢れ出るよね?

 仔猫がケージから出たら、戻すの大変だぞ。


「にゃ~ん、うにゃ~ん (ちょっとアンタたち、どきなさい)」


 リンネが、今まで聞いたことがなかった優しい声を出した。


 君、そんな声出せるのか。

 猛猫が「にゃー」と鳴くのを初めて聞いた。

 きっと人間がいないときは、そういう優しい声を出しているんだろう。

 リンネの声を聞いてほっこりしたのも初めてだ。


 しかし、仔猫たちには効果がなかった!


「ミィ~ッ! ミィィィ~ッ! (ごはんちょーだい!)」

「キュー、キュー (ねぇ、まだぁ?)」

「はいはい、とりあえずこれあげるから食べてて」


 固定食器の上によじ登ったり、格子をよじ登ったり、それはもう大騒ぎ。

 食べ物で釣って奥へ移動させようと、ケージ奥にカリカリと煮干しを撒いたら、やっと退いてくれた。


「さーて掃除掃除~」

「カッ! (させるか!)」

「はい防御~。衣装ケースの蓋、なかなかいいな」

「シャーッ! (よくない!)」


 そして、リンネとの攻防が始まる。


 仔猫が退いた隙にケージの扉を開けて、衣装ケースの蓋を入れて、猛猫と猫トイレの間に防壁設置。

 右手で衣装ケースの蓋を支えつつ、左手で素早く猫トイレを取り出し成功。

 怒ったリンネは、バシバシと衣装ケースの蓋を叩いた。

 猫トイレを取り出したら、衣装ケースの蓋も撤去。

 ケージの扉を閉めた後もリンネは唸っている。


「もうそろそろ、トイレ掃除に慣れてくれない?」

「カッ! (断る!)」


 排泄物を除去して猫砂を補充した猫トイレを、ケージに戻す際にも毎度の攻防。

 パンチを衣装ケースの蓋で防ぎつつ、猫トイレをケージ内に置いた。

 衣装ケースの蓋を撤去すると、仔猫たちが猫トイレに群がり、用を足し始める。

 設置して秒で汚されるトイレ。

 とりあえず見なかったことにして、用意していたゴハンを床トレーのところからケージにIN。

 リンネが近付くより早く、仔猫たちが群がった。


「そっちはチビたちにあげて、リンネはこれ食べなよ」


 食いっぱぐれたリンネには、好物のウエットフードをスプーンで掬ってそっと差し出す。

 すると、気付いた仔猫マイクルが割り込み、リンネと顔で押し合うようにしながら食べ始めた。

 マイクル、ドライでもウエットでもバクバク食べる。

 そのうち、兄弟の中でいちばん大きくなるかもしれない。



※仔猫フィールド展開

https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093077730482448

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