第5話:好みのゴハンは?

「あれ? リンネ、ごはん残してるけど具合悪いの?」

「シャーッ!(それいらない)」

「多かったのかな?」

「ウァーオ(美味しくない)」

「え~? グレインフリーだから身体にいいのに」

「ウウウゥ~(もっと美味いもん出せ)」

「好き嫌いはよくないぞ」

「カッ!(黙れ!)」


 怒りながら会話が成立(と保護主が勝手に想像)しているリンネ。

 パンチは、もはやお約束になっている。


 栄養を考えてピュリナワンのグレインフリーを出してみたけど、食べない。

 授乳期の母猫なら何でもガツガツ食べると思っていたけど、違うっぽい。

 去年の母猫レミは好き嫌い無く何でも食べたのに。

 食の面でもリンネはレミと随分違う。


 保護開始時からあげていたのは、銀のスプーン系の三ツ星グルメ。

 1食分ずつ小袋に分けられているので、携帯にも便利。

 カバンに入れて持ち歩き、会社の駐車場でTNR猫の餌やりにも使っている。

 銀のスプーン系は嗜好性が高く小粒で食べやすいからか、喜んで食べる猫が多い。

 TNRの一時保護用にいつもストックしているが、長期保護の猫にはあげていない。

 リンネはTNRの予定で一時保護した猫だったので、保護開始時は三ツ星グルメをあげていた。


 好みは分ったけど、できればお肉が主原料のフードを食べてほしい。

 三ツ星グルメは穀類(トウモロコシなど)が主原料だ。

 猫は肉食なので、穀類は無くてもいいレベルの食べ物。

 リンネは母乳を通して仔猫たちに栄養を分け与えているから、肉が主原料のピュリナワンの方がいい。

 そこで、ピュリナワンと三ツ星グルメを1:1で混ぜて出してみた。


「シャーッ!(置いたらすぐに去れ)」


 威嚇しながら、ノッソリと食器に歩み寄るリンネ。

 食器に顔を突っ込むと、ガツガツと食べ始めた。

 食べながら、こちらを横目で睨むのも忘れない。

 ケージから離れてその様子を確認して、お世話完了。


 次に保護部屋を訪れた時には、リンネは2種を混ぜたフードをペロリと完食していた。

 よし、この手でいこう。


 2回目は三ツ星グルメの比率を4分の1にしてみた。

 それでも完食してくれた。

 メインのフード(ピュリナワン)の上からパラパラと振りかけるだけで、きれいに食べ切る。


「ウァ~ウゥゥゥ~(どうせ出すなら美味いもんにしろ)」


 唸りながら、毎回要求するようになったリンネ。


 猫にとっては、栄養価 <<< 越えられない壁 <<< 美味しさ


「はいはい、ほら、これ美味しいよ~」


 それでも栄養的に良いものを食べさせようと、小細工する保護主であった。



 ※リンネと仔猫たち 2024.4.19撮影

 https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093075856153327

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