第42話 ノベルシカ国王の暴言にアツシ達神々の島の王が参戦する。②
――神々の島の国王達からの挨拶はまだ続く。
「我が国は冬の国なのですが、この様な灼熱の国を発展させるのは苦労された事でしょう。我が国も一年中雪に覆われている為分かります」
「ありがとう御座います。シュナイダー王。一度雪に覆われているというシュナイダー王の国にも行ってみたいです」
「是非! ご案内しますよ!」
虎獣人――いや、獣人を見る機会が全くない貴族もネバリ国王やゼフェル国王もシュナイダー王には驚いている。
虎獣人らしい耳に尻尾は驚くのだろうし、目だって人間とはやはり違う。
そして最後に、全員が釘付けになる程美しい唯一の女王――ノスタルミア女王からの挨拶となった。
「久しいな、シュライ王にリゼル殿。この度はお披露目会と言う事でつい我らも大事なシュライ殿とリゼル殿を祝いたくて駆けつけてしまったわ。特にリゼル殿とは親しくさせて貰っておるからのう」
「ありがとう御座いますノスタルミア女王陛下」
「後で素晴らしき楽器をそなたにプレゼントしよう。是非ともそれで優雅に過ごして頂きたいものじゃ」
「お心遣い感謝致します」
「感謝致します」
「なに、可愛いリゼル殿の為ならばやすい物。しかし、折角の祝いの席だというのに随分と無礼な者がいたものだのう?」
そう言って冷たい視線をゼフェル国王に送るノスタルミア女王に、ゼフェル国王はすっかり小さくなっていた。
それそうだろう。
『あはははははは!!! 本当に神々の国の人間なんて来ると思ってるんですか? 眉唾すぎて話にならない』
そう豪語していたのに、本当に神々の国から国王達がやってきて俺とリゼルの為に駆けつけたとあっては立場がない。
「さて、献上品を贈りたいが此処では狭すぎるな」
「そうですねぇ」
「では、祝いの席が終わってから送る事にしてはどうだろうか? 少なくともノスタルミア女王からの贈り物だけは置けそうだが」
「うむ、そうさせて貰おうか」
そういうとノスタルミア女王の従者が深々と頭を下げ、リゼルの座っている隣にアイテムボックスから、それは誰もが息を飲むほどの輝かしいまでのグランドピアノを取り出し、重厚な椅子まで用意すると、貴族たちは更に騒めき目を白黒さえている。
無論二人の国王もだ。
「我が神々の島で手に入る中でも最もいい音色を出すピアノをリゼル殿に用意した。是非ともまたリゼル殿のピアノを聞きたいものだのう?」
「では、後で時間がありましたら」
「うむ、楽しみにしていよう」
その会話すら耳に入らない程なのか、貴族女性たちはピアノに目線が集中している。
誰がどう見ても超高級品だと分るからだ。
最早ここまでされたら嫌味だとしても感服してしまうだろう。
無論ノスタルミア女王は本気でリゼルを気に入っているからこその贈り物だが。
「か、神々の島の皆さんがいらっしゃるなんて聞いていないぞ!!」
「おう、突然来て悪いな!!」
「っ!」
「でも、眉唾の話なのでしょう?」
「そ、それは」
「何と小さき国王か。これでは魔道具が発展した我が国からすればただの玩具を作る国程度に思えてしまうな?」
「ノスタルミア女王、それを言っては可哀そうですよ」
「そうかのう? 冷蔵と冷凍の魔道具もまだ作れぬ程度の魔道具師じゃぞ? シュライ」
「はい」
「そなたはもう開発したのじゃったな?」
「なっ!!」
これにはゼフェル王も初耳だったのか俺を見つめて驚いていたが――。
「ええ、開発致しました。ノスタルミア王国とは違う形ではありますが」
「ほほほ! 流石賢王なだけはある。そなたの開発したという冷蔵冷房にも興味があるのう」
「では、幾つか作らせて寄贈させて頂きます。素晴らしきピアノを贈って頂いたお礼です」
「それは大変喜ばしい事。楽しみにしていよう。それで? そちらの国王は自分で考えて開発しておるのかのう? それとも魔道具師に丸投げか?」
「っ!!」
そう言われるとは思っていなかったのだろう。
ノスタルミア国王であるゼフェルは悔しさに顔を歪め、拳を震わせていた。
「神々の島では一般家庭ですら冷凍冷蔵が出来る『冷蔵庫』を持つほど発展しているが、シュライはそれを目指しているのだったな?」
「はい、第一弾としては作り出すことは出来たのですが、まだまだ時間は掛かりそうです」
「うむ、開発には時間は掛かろうて。我が国もそうであったからな。シュライにも私はとても期待しておるぞ」
「ありがとう御座います」
「何も無い所からのスタートだったのは僕も一緒なのです。此処まで数年で発展させたシュライ殿は素晴らしい」
「シュナイダー王……ありがたい言葉です」
「私の国も発展するまでには時間が掛かったが、やはり知識と知恵を持つアツシ殿がいてこその発展だった。そのアツシ殿が【義兄弟と言う程の知識を持つショライ殿】との会話はとても楽しみにしているのだよ」
「ありがとう御座いますラスカール王」
「さて、話が長くなってしまったな。貴族たちを待たせるのも良くない。俺達はワインでも飲みながら見守っているからな」
「はい」
「ありがとう御座います」
こうして神々の島の国王が揃って退くと、ネバリ国王とノベルシカ国王も席を離れ、次は貴族たちからの祝いの言葉を貰う訳だが、まさか『神々の国の国王達とこれほどまでに仲がいい』とは思っていなかったのだろう、出てくる言葉はありきたりで何とか作り上げた言葉だらけだった。
ましてや、神々の国の国王達が見ている場で俺とリゼルを馬鹿にする発言等出来るものなどいない。
簡単な挨拶が終わり、やっと立食パーティーが始まったのだったが、俺達の席に更に王族用の椅子や机が追加され、神々の国の面々が座って楽しめるようにと用意された場所にアツシ兄上達も座り、全ての机に並ぶ『ジュノリス大国からの贈り物の一部』に貴族たちは驚き、ネバリ国王とバランドスからきたファルナとシュリウスも混ざりたいという事で席を用意すると、プライドの高そうなノベルシカのゼフェル国王も俺達の近くに来たが、一番離れた場所に椅子が用意されて不満そうだったが仕方ない事だ。
神々の島の者たちは眉唾だと言ってしまった手前、アツシ兄上達からの心情も悪い。
こうして国王同士の会話がスタートした訳だが――。
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