第45話 ノベルシカ王は怒りをそのままにネバリ王国に狙いを定める。

――ノベルシカ王国side――



発展途上国がふざけやがって!!!

その気持ちばかりが膨らんで、神々の国の酒だというワインをラッパ飲みしていた。

高級な酒だというが知った事か!

発展途上国であるシュノベザール王国と神々の島の神々が繋がっているなんて情報一切無かった!!

ましてや、神々の国から神々と呼ばれる国王達が来るなんて思いもしてなかった!!

それならば、我が国にきて俺と仲良くすべきだろう!?

そう思っていたのに、俺はアツシ国王陛下の言う言葉が一切理解出来なかった。

『こくないきょうきゅう』?

『こくがいゆしゅつ』?

何のことだ?

辛うじて分かったのは『国内の安定』と言う事だけ。


国内ならば我が国とて安定している。

貴族たちは多く俺を支持してくれるし、国民は下々の事だろう? そんな奴等の事など知った事ではない。

国内安定とは貴族の安定の事を差すのだと思っていた。

所がだ。

『下々である国民あっての国内安定』だという事を知って顔から火が出る程恥ずかしかった。

それと同時に、【何故下々にまで気を配る必要がある?】そういう疑問に捕らわれた。


下々の者たちは上の者たちの言葉を聞いて動いていればいいだけの存在だろう。

それなのに、何故その者たちの言葉まで一々聞かねばならないのだ。

神々の国の奴等も馬鹿ばかりか?

そう思っていたのにネバリ国王は「まさしくその通りですな」等と口にして笑い合っている。

それが更に俺をイラつかせた。



「発展途上国の癖に」



忌々しくそう口にしたが誰も聞いてはいない。

いや、無視されたと言って過言ではない。

このノベルシカ王国のゼフェル様を無視するなど許される事では無かった。

だが相手は神々の国の神々の国王がいては分が悪い。

ましてや発展途上国のシュライはアツシ国王陛下の義兄弟だと言われるほどに大事にされている。

手を出せばこちらに天罰が下りそうだ。


シュライ等、国内安定の為に天候を操り我が国の雨続きの国から日差しを出す程度の能力しかない癖に。

たかだが『天候を操る程度の能力』しか持って生まれなかった癖に何て図々しい。

頭を下げて「お国の為に力を使わせてください」と奴隷のように這いつくばっていればいいものを!!



「クソッたれが!!」



そう言ってワインを飲みほしたガラス瓶を投げ捨てるとガシャーンと音を立てて割れた。

ああ、ムシャクシャする。

いっそあの瓶のようにグシャグシャに壊してやりたい。

だが、シュライのいる国に戦争を仕掛ければ間違いなく神々の怒りを喰らう。

それならば――丁度領土を広げたかった所だ。

ネバリ王国に戦争を仕掛けて、バランドス王国の隣の国になるというのも悪くない。

シュライの弟のシュリウスはウザい男だが、アイツはその内俺の部下にしてやってもいい。

頭のいい奴は俺の下につけばいいのだ。

そうすれば、流石のシュライも弟のシュリウスが俺の下僕になった事で俺の凄さを知るだろう。

たかだが『天候を操る程度』しか力がないのだから、今後は金をとらずせっせと俺の国の為に力を使うだろうしな。



「そしたらその内、このシュノベザール王国をも俺の領地にしてやる」



そしたらシュライ等奴隷にして好き勝手扱ってやろう。

そう言えば婚約者のリゼルは中々美しい娘だった。

属国の娘とはいえあれだけの美しさがあれば、俺の側妃にしてやってもいい。

妹もだな。

そう思うとニヤニヤして笑みが止まらず、まずは国に帰ったら戦争の準備を進めねばとベッドに横たわる。

質のいいシーツに驚いたが、これも何れ自分のものになるのだと思えば気分もいい。



「どれもこれもぜ――んぶ俺の物だ!」



そして神々の島に渡り、何時かは俺も神の一員になるのだ。

シュライのような義兄弟ではなく、神々の一員に!!

あの輪に入り、自分こそが相応しい人間だと分ればアツシ国王陛下たちも俺の事を素晴らしいと賞賛して下さるだろう。

やはり下々の事ではなく、俺のいう事が正しいのだと理解もするだろう!

明日はお忍びでシュノベザール王国を周ると言っていたが、俺はそんな気など全くない。

下々の生活を見て何になる。


全く、変わった神々の者たちだ。

いや、神々だからこそ下々が気になるのか?


まぁいい、俺が付き合う事でもあるまい。

ネバリ国王は一緒に行く気らしいが、下々の生活を見に行く等馬鹿げている。

全く、馬鹿の考える事は全く分からんものだな。

賢い俺は下々の事よりも、先ずは領地拡大と言う大きな事をやってのけねばならない。

確かにネバリ王国は領土としては広いが、所詮は田舎王国。

主な産業も農耕と畜産しかない。

特に畜産には力を入れているからか、わが国では貴族達から『糞の国』とさえ影で言われている。

別にそこまで欲しい国ではないが、俺の野望の為に消えて貰おう。


神々の一員になる為の犠牲だ。

有難く死んでもらった方がいいからな。

気分よくそのまま眠り、翌朝この上なく美味しい朝食に驚きつつも、土産にワインを50本寄こせと言ったら「シュライ国王陛下への贈り物ですので」と断られた。

甘味の食べ物も、ケーキと呼ばれた物も全て「シュライ国王陛下への贈り物ですので」と断られ、だったら何があるのだと反対に伝えると『砂糖』と『ハチミツ』を手渡された。

確かに高級品だが、高級品だが!!!!



「俺が欲しいのは神々の国の食べ物や飲み物だ!!」

「では、友好を深められては如何でしょうか?」

「言われなくともその内嫌と言う程友好を深めて見せる!!」

「でしたらその時に頂いたら宜しいのでは?」

「クソ!!」



そう言って無表情で見下すメイドに、頭に来て城の床に唾を吐き捨て馬車に乗って帰った。

この事がまさか神々の皆に知れ渡るとも知らず、イライラしながらノベルシカ王国に帰り、土産品であるハチミツや砂糖を机に置くとソファーにドカリと座った。

全く持って有意義な時間にすら無からなかった。

だが、神々の面々とは多少なりと繋がりは出来ただろう。

その内一員となるのだ、その為には――。



「おい、軍部大臣を呼んで来い」

「え? あ、はい!」



――ネバリ王国に戦争を仕掛けて消えて貰わねばな?



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