第5話 脱税は決して許さない。

緊急案件につき大臣は直ぐに集まれと朝に招集してから昼過ぎにやっと全員が集まった。

新国王を舐めていると言うのがよく分かる事案だったが、俺が「法改正を行う」と伝えるとニヤニヤした笑みを浮かべ「どのような法改正ですかな?」等と余裕を持っている狸ジジイ達に向かい、俺は【脱税】が広く行われている事を伝える。


これには一瞬顔色を悪くした大臣たちもいたが、それに関係なく「脱税は許される事ではない、国を裏切る行為だ」と伝え、その為の法改正を行う事を告げれば苦虫を嚙みながらも駄目だとは言えまい。



「法改正としては、脱税を行った貴族家は『貴族籍全員鞭打ち100回の刑に処す事と、税収を更に5割増しで徴収する。期間は3年とする』法案を通す。異論はないな?」

「「「「なっ!!」」」」

「確かに脱税は許されざる行為ですからなぁ。それくらいの措置は必要でしょうな」

「うむ、タリア大臣はよくわかっているな」

「税に関する大臣です。これくらいは知っておかねばなりますまい。どこの貴族がどれだけ懐に入れているとか……大臣の誰がどれだけ懐に納めている等ですな」

「ははは!! 大変心強い発言だ! 皆もそう思うだろう?」

「そ、そうですな!」

「しかし少々厳しすぎる処罰に感じますが」

「そうか? ならば貴族籍全員鞭打ち100回を罰金で支払うと言うのも入れ込むか」

「「「「罰金」」」」

「それはいいですな。国にそれだけ金が入ります」

「うむ、一家につき金貨200枚支払えばむち打ちを無しにしてやろう」

「「「「金貨200枚ですと!?」」」」

「懐に入れた金は国民の血と汗の結晶だ。その大事な税金を私腹を肥やす為にため込んだとあれば、それくらいの罰金が発生するのは仕方ないだろう。払えないのなら赤子も含め鞭打ち100回を受け入れるしかあるまい」



この国での国民の給料は一ヶ月当たり多くて金貨1枚程度。

4人家族でもそれくらいだ。

それが大臣や貴族ともなればもっと増えるのは当たり前だが、脱税し私腹を肥やした愚か者には徹底した罰を与えると決めている。



「そのような金がある貴族も大臣もおりますまい!!」

「ならば最後の温情だ。貴族や大臣を辞め、財産没収の末、平民に落とされるかも選ばせてやろう」

「「「ひっ!!」」」

「どう思う? タリア大臣」

「選択肢は多いに越したことは御座いませんからね。それで宜しいかと。要は脱税しなければよいだけの話……ですよね? 皆さん?」



そうタリア大臣が口にすると、既に口から泡を吹いて倒れている大臣も二名ほどいたが、脱税した事のある大臣たちは顔面蒼白だ。



「鞭打ちが嫌なら罰金、罰金も無理だと言うのなら財産没収の末平民落ち。これで異論はあるまい」



そういうと法案を通し、脱税に対する厳しい法律が出来た。

国民が必死に稼いで苦しみ、自分たちの身を切ってまで収めた税金を霞めとる等、言語道断だ。

その後も「箱庭師」や「植物師」に関する法改正を行い、国が管理する事を法律で決め、後に俺から指名した【箱庭師大臣】と【箱庭農業大臣】を置くことも決定し、その為の部屋も用意する事も決まった。


最も法案を通したかった脱税と箱庭師と植物師に関する法案がちゃんと通った事で、ある程度の先が見えるようになってきた。

夕方まで掛かってしまったが、老害たちの会話は長くて疲れる。

まどろっこしい言い方せず手短に終わらせたい話も長々と……。

あれでは時間の無駄だ、そろそろ大臣にも定年制度を設けるべきだろう。

タリア大臣はまだ50代。まだまだ働いて貰いたいが――定年は60と定め、新たな人材を入れる方がいい。

その間に次の次世代を育てると言うことも出来るだろう。

その場合、大臣の多くが退職する事になるが、次の大臣の任命を行う為にも、大臣を見張る第三者組織を作るべきだな。

次に繋げる為にも、その制度は作らねばならないだろう。

消える大臣の次の時代となる者を選定するのは大変だが、新しい風を入れねば何も進まない。



「大臣の定年制度は後日法案を出して話し合いと言う表向きをしてから決定を行うか」

「大臣の定年制度ですか?」

「ああ、今の大臣では古臭い考えが多すぎる。時間だけ食って邪魔だ」

「そうですね、確かに今の大臣では国力を上げるには心もとない……いいお考えだと思います」



そうサファール宰相も同意しつつ箱庭師に関する情報の束を手に執務室に帰ると、細々とした仕事を頼んでいたテリオットが立ち上がって一礼する。

「仕事を続けてくれ」と口にして椅子に座り商業ギルドが持ってきた箱庭師の情報がどうやら5つに分かれていて、一つずつ並べると付箋が付いていた。

それには【農耕】【林業】【漁業】【蚕】【鉱石】と書かれており、俺は思わず目を輝かせた。

まずは【農耕】と書かれた書類を手に取り中を読んでいくと、その人物の名と土地の広さ、そしてどの作物に適しているかが記されている。

その上で更に細かく分類してあるようで、麦やジャガイモ等、育つ作物すら記されていた。



「これは有難い。この国にいる商業ギルドマスターとはかなり仕事のできる男のようだな」

「デッドリー様は隣国、バランドス王国から追放されてきたギルドマスターでして、今バランドス王国の商業ギルドマスターはとても質が悪いと評判ですよ」

「ほう……これだけ仕事のできる男を追放するなど、事情はどうあれ助かるな」

「役に立ちそうですか?」

「ああ、この書類は宝の山と言って過言ではない。この国になかったモノが箱庭師が全て持っている。農耕が出来る箱庭、林業が出来る箱庭、漁業が出来る箱庭、蚕と書いてあるがどうやら家が建っている場所らしい。個数自体はそう多くはないが、役に立ちそうだ。それに加えて鉱石が取れる箱庭……実に素晴らしい」

「それは……今まで箱庭師に注目しなかった過去の王族や貴族や大臣とは……と思ってしまいますね」

「貧乏過ぎてそこまで頭が回らなかったのか、愚王の様な者たちが多かっただけなのか」

「少なくとも、シュライ様は歴代トップの賢王となられるでしょうな」

「そうありたいと思うがな」



この国に足りない物のほぼ全て箱庭師が持っていた。

それは紛れもなくこの国が発展すると言う証でもある。

歴代の王たちは何故そこに目を付けなかったのかは謎だが、土地が無いのなら土地を持っている者を管理して作って貰えばいいだけの事。

だが、その為には作物となる苗や種、そして金も必要だった。



「オークションは今週末。ネバリ王国からの商業部隊は来週到着だ。それまでに箱庭師と植物師を城仕えとする法案は既に通した。今は使っていない闘技場をまるっと彼らの職場とする事もな」

「壊すにしてもどうしようもなかった場所ですからね」

「まずは仮の仕事場だが、そのまま採用になりそうだな。中央には広い場所があるから野菜等の収穫した際に便利だし、木材や鉱石にも便利だ。だが鉱石関連に関しては知識を持っている人材が少ないのが難点だが、人は幾らでもいる。知識を持つ者に育てて貰おう」

「それが宜しいかと」

「農作業を手伝う人材は追々商業ギルドを通して募集する。そうすることで雇用が生まれる。まず金を我々国が金を持っていないと駄目だがな」

「その為のオークション、脱税した貴族からの罰金や財産没収ですね」

「税金だけで何でも賄おうとするから行けない。国が事業を立ち上げて大きな失敗のない安定した事業を立ち上げるのも目標だ。ハイリスクハイリターンはしない。いつか国が傾く」



そう口にしながら箱庭師達の情報を頭に叩き込んでいく。

木材に関しては家の建て替え事業に使えるし、石造りの家では雨漏りが酷いと言う話だったが、木造作りの家ならばそれ程酷くはならないだろう。

ただ、乾燥に時間はかかるが、そこは俺のスキルで幾らでも何とかなる。

日照り用のエリアを一つ作ってそこに木材を運び入れて置けばいい。

天日干しとはよく言ったものだな。



「テリオット、例の二人には急ぎの書簡は送ったな?」

「はい。明日朝直ぐに城に来るように伝えております」

「よし、残りの仕事は明日だ。俺は仕事のオンオフは付けたい」

「「「畏まりました」」」



こうして俺達は仕事を一旦そこで終え、自室や自宅へと戻って行き水を飲む。

この一杯の水すら俺のスキル無しでは手に入りにくいモノなのだ。

さて、何時書簡がバランドス王国に届くかは知らないが、蒸し返すような日照りが続いている筈だ。

川も干上がり飲み水にすら影響が出るだろう。

そんな中、こちらは雨季の到来だ。

欲しい雨が砂漠の国であるシュノベザール王国に降り注ぎ、あちらは何時まで経っても雨が降らない。

さて、何時どうでるか見ものだな。





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