第30話 ジュノリス大国に到着し、色々な出会いを経てテリサバース教会へ。
まず一つ言って行こう。
神々の島では獣人がいるが、他国には存在しない。正に神の存在と言っても過言ではない。
その一人が、アツシ様の子供の婚約者だと聞いた時は驚いた。
名をナノリシア姫といい、冬の国ダングル王国の姫君だと言う。
兄は更にアツシ様の娘を妻に貰う事を決め、俺よりも幼い内から国を束ねているのだという。
「驚きですね……」
「ええ……」
「色々あったんだ。だが、全ての国の王との勉強会とかをして国を富ませるにはどうしたらいいか、国民の幸せ指数を上げていくにはどうすればいいのかと勉強し合って今がある。最も辛い立場だった秋の国ラスカール王国は大きく更に栄えたよ」
「勉強会とは必要なのですね。俺の場合は弟と勉強会を開く位で」
「でも兄上の知識は有用です。とても為になる話がとても多い」
「だろうな。たったの数年であそこまで栄えさせるには相当頭の回転が速くないと出来ないと思う。シュライは天才と言って過言ではない」
「兄上は天才なのですね!!」
「おう、天才だと思うぞ!!」
「凄いですシュライ様!」
「凄いわシュライ!」
「凄い凄いと言われてもな?」
と、休憩する為のサロンの様な部屋で冷たい氷の入ったジュースで喉を潤していると、冷たいアイスクリームが届いた。
イチゴにチョコにバニラの入ったアイス三食は美味しくて懐かしく、嗚呼――帰って来たなってつい思ってしまった。
「老後は是非こちらで過ごしたいですよ」
「ははは。是非神々の島で老後は暮らすといい」
「明日はいよいよ婚姻式なのね。出席したいけどこのお腹で」
「いえ、無理はなさらないで下さい」
そう言ったのはカナエ様だ。
アツシ様の唯一の妃であり、臨月間近の大きなお腹をしていらっしゃる。
「もしやとは思いますが、もうお腹の子は誰かの王の子供の相手にとか決まってるんですか?」
「そうなんだよ。男女どちらでもね」
「凄いですね」
「アツシさんと関りを持ちたい国が無い筈ないものね?」
「まぁそれはあるな」
聞けばこの四つの国を纏めたのはアツシ様と言って過言ではないらしく、皆アツシ様とカナエ様の子と我が子を結婚させたくて仕方ないらしい。
ノスタルミア王国では孫との結婚をと言う話もあるのだとか。
側妃の話は貴族の間では出たが、とてもじゃないが結婚する気は一切起きなかったらしい。
しかし――。
「可愛いですね。そのスライム」
「ニノッチ カワイイ?」
「「「可愛い」」」
「従魔使いかぁ……盲点だったなぁ」
「問題があれとすれば、従魔となるモンスターがいない事ね」
「確かにスキルがあっても運送用にしか使えないからなぁ」
「シュノベザール王国にはモンスターがいない国だったな」
「ええ。その代わりに熱波や砂嵐はあるので、それを俺のスキルで調整しているんです」
「なるほど」
「風土病で亡くなる者たちも多かったですが、薬師ギルドを呼んでポーションを作って貰う事で大分変りました。やはり薬とは偉大ですね。俺も高熱で死にかけた事があるんですが、医者を呼ぶこともされず放置されていましたから」
「それは……流石に親に問題があると思うぞ」
「それは十分思います」
思わず強く頷いてしまったが、事実あの死にかけたお掛けで記憶が戻ったのだから、いいと言うべきか悪いと思うべきか。
放置は許される事ではないが、そのおかげで今があるのならよしとしよう。
「結婚式は別にこっちのテリサバース教会で挙げるんだろう?」
「ええ、そうさせて頂ければと思います」
「きっと素敵な式になるわ。自国では披露宴だけかしら?」
「そうですね。正直貴族連中は俺達の事を馬鹿にしている者たちが多いですから」
「特に私は属国の姫と言う事もあって……」
「なるほど、では神々の国の我々がとっても親しくしているのを見せつけてやろう」
「ふふふ、そうね。その頃には出産も終わっていると思うから」
「ありがとう御座います。ですが無理はなさらないで下さい」
「御身に何かあっては大変です」
「ありがとう二人共」
そう言ってカナエ様は微笑んで下さったが、本当に何かあってからでは遅いからな。
身体は大事にして頂きたい。
「ふふふ。リゼルさん? この調子だと貴女が妊娠しても、とても大事にして下さると思うわよ?」
「はい、私もそう思います」
「んん! 無論大事にしますよ。全く経験のないゼロからの諸々ですので、アツシ様にはご相談させて頂く事がとても増えますが」
「お――! 俺で良ければ任せろ!」
「私も相談に乗るわ? ね、リゼルちゃん」
「はい!」
こうして終始和やかなムードで時間は過ぎ去り、箱庭の入り口は新しく作ったと言うタウンハウスを使っていいと言う事になったので、先にタウンハウスと言う名の拠点に向かい、箱庭を繋げることでホッと安堵出来た。
これでいつでもジュノリス大国に来ることは可能となったのだ。
「リゼルちゃんは今日徹底的に綺麗にしないとね! うちの美容部員が腕によりをかけるから任せてね!」
「は、はい!!」
「それはシュライも一緒だ。男前になって新聞も刷ってやるから自国でも号外だしてやるといい」
「ありがとう御座います。写真を頂けたら自分でも何とか出来ますが」
「無論写真も渡すし写真入れも用意して渡そう。だがここはうちに任せた方がいいぜ? なにせ、神々の島が祝福した男女、国王とその婚約者って事だからな」
「それもそうですね!」
こうして俺達はその夜から徹底的に磨き上げられ、翌朝も磨き上げられ、専用の金のアクセサリーや高級な服に着替えて馬車に乗ると、朝日が美しい中、テリサバース教会へと到着したのだった。
するとそこには――。
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