第31話 まさかの4国の王に祝福される中、婚姻式が行われる。

テリサバース教会に到着すると、神官に案内され教会の中に入って行く。

するとそこにはどう見ても王族らしき人物が更に3人程待っていて、一瞬心臓が撥ねる。



「ほほほ、彼らが今回この島に着てまで婚姻式をする者達かのう?」

「初々しいですね!」

「アツシ殿がとても大事にしている二人だと聞いている。初めましてシュライ殿に婚約者のリゼル殿。私は秋の国ラスカール王国の国王だ」

「わたくしはノスタルミア王国女王である」

「初めまして。ナノリシアの兄、ダングル王国が国王のシュナイダー王です」

「初めまして、シュノベザール王国が国王、シュライです。こちらは婚約者のリゼル」

「初めまして」

「うむ、堂々たる威厳ある青年のようじゃ。アツシも気に入る筈じゃのう」

「あなた方が故郷で婚約パーティーをする時は是非、色々とお話したいですね」

「全くだね。私の国は秋の国だから砂漠の国と言うのはどんなものかと今から楽しみだよ」

「ははは、本当に何もない所からのスタートですので、お手柔らかにお願い致します」



そう言って深々と頭を下げると何処からともなく――。



「は~い。婚姻式始めちゃうわよ~? お二人さんはこっちに来てくれるかしら~?」



と、男性にしては少し甲高い声で……お姉さんっぽい喋り方が聞こえて前を向くと、うさ耳の美しい女性……だろうか? どっちだろうか?



「大司教のロスターナよ。今日あなた方の婚姻式に祝福をあげるわ♪」

「あ、ありがとう、御座います」

「ありがとう御座います」

「んふふ♪ 驚くのも無理はないわね。今日は特別に妻の聖女からもお祝いされるわ。安心してね?」




そういうと白いローブに身を包んだそばかすの可愛い女性が手を振っていて、思わず頭をさげた。

こうしてアツシ様も着た所で婚姻式となり、署名を行い大いなる祝福を頂き、キラキラと光りが舞い降りてくる。

余りの美しさに声を小さく上げたリゼルを見て微笑み、ギュッと手を握るとお互い見つめ合って微笑みあった。

すると――。



「幸多い未来が見えます。ですが、波乱の未来も見えます」



そう声を出したのは聖女様。

何でも未来を見ることが出来るらしい。

幸多い未来と波乱の未来か……既に俺の人生波乱と幸の多い人生のようにも思えるが。



「あなた方の親しい国に、【ノベルシカ王国】と言う国はありますか?」

「え? ああ、あります」

「そこから大勢の民が逃げてくるのが見えます……【ノベルシカ王国】は近いうちに、【ネバリ王国】と戦争の危機に陥るでしょう」

「なっ!! 理由は何です!?」



あの2つの隣国は和平を組んでいた筈だ。

それなのに戦争なんて――。



「申し訳ありません、そこまでは見えませんでした……。ですが近いうちに戦争は起きるでしょう。その際多くの国民があなた方の国に逃れるのが見えました」

「「……」」

「お気を付けなさい。新たなる【ノベルシカ国王】となる男性は、とても貪欲です」



その言葉を聞いて、そう言えば血の濃い所から王太子を貰ったばかりだと聞いている。

その男性に気を付けろと言う事だろう。

隣国の事とは言えいい気はしない。

横暴な態度を取るのならこちらも考えがあるしな。



「ありがとう御座います。気を付けようと思います」

「ええ、お気を付けください。もしどちらかに着けと言うのなら、親しい国に着くのがいいでしょう」

「ええ、その時は迷うことなくネバリ王国に着くことにします」



我が国でも軍部大臣はいる。

隣国との警備の為に日夜訓練に励んでいる者たちでもあり、彼らは皆剣術スキルや弓矢スキルの高い者たちで構成されている。

隣国でも手を出したくはないと言われる強さを誇る兵士達だ。

かといって横暴かと言うとそうでもない。

気さくさも兼ね揃えている彼等が危険にさらされる事は余りしたくないのだが――そう思うのは、俺が日本人だからだろうな……。



「ですが幸の多い人生には変わりありません。あなた方は良き指導者であり国王と王妃となるでしょう」

「「ありがとう御座います」」



それが聞けただけでも安心する。

俺もそうありたいと思っているからだ。

今後の事を考え、色々突き進んでいきたい。



「今後も驕らず邁進していきたいと思います」

「聖女様、ありがとう御座いました」



そう頭を下げると聖女様からも祝福を受け、リゼルと共に微笑みあった。

大変かも知れない。

だが、幸の多い人生にしてやりたい。

リゼルの手をギュッと握り祝福をくれた二人に頭を下げると、「次は結婚式で会いましょうね?」とロスターナ様から言われ俺達は強く頷き「はい!」と答えた。

――こうして婚姻式は終わり、お互いにホッと安堵した。

その後簡単な食事となったのだが、教会で食べる料理はどれも絶品だった。

「流石に今日くらいは贅沢にするわよ~」とロスターナ様は笑っていたが、次に顔をキッとさせるとこうも口にする。



「そう言えば、あなた方の国にはテリサバース教会はあっても、常駐はしていないそうね」

「はい、掘っ立て小屋が立っているだけでごくたまに派遣されてくる程度です」

「やだ――テリサバース教会の者として恥ずかしいわぁ~。良かったらうちから神官を派遣しましょうか?」

「よろしいので?」

「いいわよ~。こっちから連絡しておくしぃ。建物は……ね? アツシさん?」

「はいはい、教会な?」

「んふ♪」

「大きいのは用意できないけど小さめの教会なら用意できるぞ」

「あーん! ありがとおおお!! 是非お願いね?」

「分かった。暑さに強い人選を頼んだぞ」

「ええ、獣人でもいいかしら?」

「驚くかとは思いますが……でも獣人で暑さに強いという方はいるんでしょうか?」

「リカオンの獣人は強いわね。犬獣人だけども」

「そうなんですね」

「一組夫婦でいるの。派遣して上げるわ」

「「ありがとう御座います」」



こうしてシュノベザール王国にもやっとテリサバース教会が役に立ちそうだ。

今まで滞っていたモノも進むだろう。



「実は婚姻等の書類はあるんですが、祝福までは出来ませんでしたからね」

「あらまぁ……それは駄目ねぇ。貴族には吹っかけるけど、庶民には安く祝福を上げるから安心してね?」

「ありがとう御座います」



こうして翌日からはジュノリス大国を観光し、異国から来たのが分かる俺達の服を見て「どこで買えますか?」と色々声が上がり、新たな輸入先としていいのでは? とアツシ様とも話し合い「それはそれで全然OK!!」と言ってくれた為、ジュノリス大国でも民族衣装は売れることになった。

その為、商隊部門の大臣ラディリアを今度案内して欲しいと伝えると、アツシ様が笑顔で許可を出していた。

無論他の国も同じで、これで販路は増えそうだ。



「無論輸入も考えてます。砂漠の熱さでもミルクを出す牛がいればいいんですが」

「ラクダの乳じゃダメか? 飲み慣れてるだろう?」

「味が独特なんですよ」

「ああ、なるほどな」



その後輸出や輸入について話し合われ、楽しい時間は過ぎて行き――数日過ごした俺達は皆さんに別れを告げ、シュノベザール王国へ帰って行くことになる。

無論、写真と写真立て、そして号外となる新聞を大量に持って。



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