第3話 まずは国を挙げて【箱庭師】と【植物師】を雇い入れる!

――翌朝、裸で死んでいる両親の死体が発見された。

お楽しみ中に俺の差し出した酒でも飲んだんだろう、馬鹿な親だ。

死因は急性心臓麻痺とされ、夫婦の営みを行っている最中だったことからそれが原因ではないかと言う事になった。

死んでも恥を晒す親だとつくづく思った。


それからの動きは素早かった。

国葬はしない事、この様な死に方をしたのだから家族だけでヒッソリと行う事。

流石に死に方が死に方だっただけに、その案は直ぐに通った。

そして、死後は王族の墓に入れず、庶民の共同墓地に入れることに関しては反対が起きたが――。



「そうか、反対するものの土地は数か月、【日照り】をプレゼントしよう。受け取るといい」



雨が貴重なこの砂漠の国で、日照りが数か月も続けばどうなるのか想像に難くない。

下手をすれば領民とて死ぬレベルだ。

お陰で会議中誰一人として文句を言う輩は居なくなった。

その為、葬儀も速やかに行われ、成人の儀を果たした次の日には俺は――【シュライ・シュノベザール国王陛下】となった。

面倒な手続きはあったが、元国王の急逝では致し方ないと判断されたのだ。

弟である第二王子はまだ10歳、成人するのには後5年はかかる事も要因に上げられた。


葬儀の次の日には、両親や先祖がため込んでいた金銀財宝の一部を売りに出し食べものや綿花となる種や苗を買う事を決定し、商業ギルドマスターにも城に来て貰い箱庭師と植物師を王家が管理したい旨を伝えた。



「植物師や箱庭師をですか?」

「そうだ、広い土地でなくとも土地を持っている箱庭師を雇いたい。家の建っている者は数名だけ用意して欲しい」

「小さい家が建っていて土地が広い場合は?」

「その場合も国が管理しよう。商業ギルドでその辺りを確認して欲しい」

「それは構いませんが……何を為さるので? 植物師は確かに有益なスキルですが」

「箱庭師の箱庭で農業をさせる為だ。土のある土地があるのなら農耕に向いているだろう」

「――!! なるほど」

「この国の緑化は少しずつ進んでいるし、その為の魔道具もあるにはある。だがこれから先長い年月をかけて雨を降らせ土地を緑化するには時間が掛かる。だからまずは箱庭師の庭を農耕地に変え、そこで育てる種や苗を他国から購入し、植物師に管理させるのだ」

「畏まりました。直ぐに金銀財宝を売りに出す御触れを出し、得た金で作物や綿花の種や苗を購入します。まずはこの国の食糧事情に手を付けねばなりませんからな」



この国は飢えている。

食べものが少ないと嘆いている。

そこを少しずつ改善していくのだ。



「オアシスにある果樹園はそのままでいい。少しずつ緑化も進んでいる事だろうからそこの植物師たちはそのまま働いていてもらおう」

「畏まりました」



オアシスにある果樹園も王家が管理している。

そこはいつもと変わらずと言う事にしたのだ。

では一般市民はどこで植物を――と思うだろうが、鉢植え等で細々と育てている事が多い。



「農機具となるクワやカマといった物は箱庭師と植物師の数次第で国が用意しよう。それだけの余裕はまだある筈だ」

「畏まりました」

「先に金銀を売り払い、それから種や苗となる。時間は有限だ直ぐに手配を」

「畏まりました!」



そう言うと商業ギルドマスターは立ち上がり直ぐに行動に移した。

後は両親が仕事をせずさぼっていた書類関連に手を付けるだけだが気が重くないと言えば嘘になる。

本当に仕事をさぼって大量の書類処理があるからだ。

だが国王になったのだから前の愚王の尻ぬぐいはするべきだろう。

我が親ながら本当に阿呆だったなと溜息を零しつつ執務室に歩いていると――。



「二つ程ご報告が」

「どうしたサファール宰相」

「まず一つ、執務室にシュリウス王弟殿下が机を置き書類整理の手伝いをしております。次に我が息子、テリオットが挨拶をしたいと来ております」

「分かった。まずは執務室でシュリウスの働きぶりをみてからテリオットと会おうか」

「ありがとう御座います」



こうして俺の執務室となった元愚王が近寄りもしなかった部屋に到着すると、書類を纏めて束にしているシュリウスが笑顔で駆け寄ってきた。



「兄上! 関係のある書類が散らかっていたので纏めておきました」

「おお、アレだけ崩れていた紙が……凄いぞシュリウス。とても助かる」

「えへへ……兄上の力に少しでもなりたくて」

「そうか。兄はとても嬉しく思う」



外に見せる無表情か含みのある笑みではなく、兄としての顔にサファール宰相は少し戸惑いつつも、暫くするとノックをする音が聞こえた為声を掛けると、俺と年の変わらない少年が入ってきた。

どうやらサファール宰相の息子らしい、よく顔が似ている。



「息子のテリオットです」

「初めまして国王陛下。テリオットと申します」

「うむ、サファール宰相には色々と手助けをして貰ったのでな。息子、テリオットは俺の補佐官になって貰おうと思うが、君にそれだけの力と価値があるだろうか?」

「お任せください。宰相の仕事を手伝っておりました。若輩者ですが、他の同年代の者たちよりは使えるかと思います。どうぞ手足としてお使いください」



そう言って深々と頭を下げたテリオットに、俺への忠誠心を感じた為頷いた。

そこで、まずはこの山のようにある書類を片さねばならない為、挨拶もそこそこに取り敢えず床に散らばっている書類を整理していて欲しいと伝え、俺は執務用の椅子に座り書類を読み進めていく。

俺が【天候を操る程度の能力】を得てからここ5年の間に、この国の水事情は大きく変わった。

オアシスも二つ増え、そこに小さな集落が生まれている。

相変わらず木々は生え難いが、そこは箱庭師の庭にもしかしたら木々がうっそうと茂っているものもいるかもしれない。

そうなればこちらのものなのだが――。

石レンガの家が立ち並ぶこの国では、石レンガでは夜は寒く昼間は暑い。

それが当たり前……とされてきたが、木材が手に入るのなら建て直しも検討している所だ。


何をするにしても殆ど手付かず。

書類とにらみ合いをしながら出来るだけ迅速に書類の山を片付け初めて5日後――アレだけあった書類は片付けられ、やっと息のしやすい執務室へと変わった。

片付けねばならなかった書類関係はまずは第一段階が終わったと言う事だ。



「サファール宰相、商業ギルドマスターに木々の生えている箱庭師も全て受け入れると連絡を」

「畏まりました」

「そろそろ雨季の時期とする事も伝えよ。朝は晴れさせるが昼から夜は雨を降らせる」

「国民に知らせます」

「緑化用の魔石は足りているか?」

「そろそろ尽きるかと思います」

「そちらも定期的に買っている魔石商から取り寄せてくれ。カメの足の速度の緑化魔道具でもないよりはマシだ」



それに、俺の力も相まって緑化が進んでいると言う報告も来ている。

タダの邪魔な魔道具ではなく、シッカリと力は使っているようだ。

さて、此処からだが――。



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