第四章 国民の為の諸々も終わり、自分の引き際を知る。
第50話 国外が落ち着いたと思ったら国内貴族の勝手な言い分。
ハルバルディス王国にネバリ王国と共に書簡を出して数日後、返事が届いた。
確かに人形師の人形しか生活できない不毛の土地になっているようだと言う事だったが、どうやら調査が行われたらしい。
すると、水たまりや水の中から蚊の幼虫が沢山沸いていて、とてもじゃないが人間が住むには不適切と言う判断がされた。
――だろうな。
とは思っていたが、残っていた貴族たちも全員死亡が確認された。
蚊による病原菌による死亡と判断されたようだ。
ネバリ王国とシュノベザール王国では荷が重いだろうという事で、ハルバルディス王国が元ノベルシカ王国を受け持ってくれる事となった。
とてもありがたい。
全ての蚊を無くすことは難しいが、水を捨て土を乾かすか、俺にこの土地を雪で覆われた国に作り替えることは可能かと聞かれた為、お金を出してくれれば可能だと伝えた。
また、人形師の人形がそこで生活をするだろうという事で、国境付近で市場を開けないかと言うお願いがされた。
国境付近の市場は考えた事が無かったが、確かに元ノベルシカ王国に入るのは厄介だ。
国境沿いに市場を作り、ハルバルディス王国と外交と言う名の輸出と輸入をした方が良いだろうという判断はされた。
ただ、しやすい場所と言えばネバリ王国だったが、問題が一つあった。
橋が流されてないのだ。
作ろうにも水が落ち着くまで作る事が出来ない為、一旦はシュノベザール王国と今はもうハルバルディス王国の一部となった元ノベルシカ王国の国境にて市場を作る事となった。
売る物は日持ちする物がいいという案が出て、日持ちする物を用意するように話し合われた。
蚊は極寒の地域では生きていけない。
また、シュノベザール王国のように暑すぎると血を吸えず生きていけない。
蚊も暑さバテするのだ。
こうして、元ノベルシカ王国に雪を降らせ極寒の土地になるように行い、ハルバルディス王国からは人形達がそこで暮らすようになり……一年もすれば川の水も落ち着き橋が作られ、たが、シュノベザール王国のオアシスに作られた市場が活気があって多くの物が取引される市場となるのはもう少し後の話で――。
その頃一つの問題が浮上していた。
公爵家が自分の娘をアツシ様の側妃にどうだろうかと言ってきたのだ。
無論、アツシ様が望んでいない事、そしてカナエ様が現在ご出産されて立て込んでいることを伝えると「尚更良いではないですか!」と言ってのけたのだ。
「唯一の妃が子を産んだばかりなら男とは堪るものですよ~。是非、うちの娘を」
「却下する。アツシ兄上はその様な事を一等嫌われる」
「何故です!! 我が国との繋がりをもっと強める為には必要な事ではないですか!」
「必要ない。貴殿が考える程アツシ兄上は単純ではない。兄上を馬鹿にするな。その首を撥ねられたいか」
「くっ!」
「兄上も俺も妃は一人で充分なのだ。下手に縁談を持って来られれば何かあるのではと勘繰るのが当たり前だろう。自分で選んだ唯一無二がいれば他はいらん。ああ、学園にも通う事の出来ない不出来な国王にそなたの娘は勿体ないなかろう?」
そう言ってニヤリと笑うと自分が影でどう言っていたのかがバレて焦っている。
全く……この程度で焦られても仕方ないのだがな。
「そう言えばその娘とやらは学園で色々やらかしているそうではないか」
「い、色々とは」
「下位の貴族への虐めに男を使っての暴行事件、こちらにも学園から話が入ってきているぞ」
「なっ!!」
「随分と口止め料を払っていたようだが、学園は国営だ。トップは学園長ではなく俺。つまり国王。そこまで頭は回らなかったか?」
「い、今までの学園長は国王では、」
「何故国営なのに国王が学園長ではないと判断する。嘘偽りのある報告をした場合、鞭打ち500回の上に免許剥奪と法律が変わったのも知らないのか?」
「ほう、りつ……」
「閉鎖された空間と言うのは何かと問題が起こりやすい……。その上で次の大臣などに任命する為、もしくは国営に当たらせる人員をしっかりと見極める為にも、生徒の事は然りと調べさせて貰っている。お前の息子も駄目だな。親が馬鹿だと子も馬鹿になるのか?」
そう問い掛けると顔を真っ赤に染めて震えていたが、きっと喉元まで『貴様こそ』と言いたいのを我慢しているのが嫌程分かる。
だが、残念ながら親が馬鹿だったが幸いなことに転生者である事で頭脳だけはいい。
行き過ぎた発言はNGかもしれないが、国王であり、尚且つ不良債権をアツシ兄上に売りつけ用としたコヤツは許しては置けない。
「お前の不良債権……っと、違うな、お前の息子と娘は勝手にその辺の貴族と婚姻でもさせればいいだろう。国王の側妃にすらなれないゴミだ」
「で、ですが」
「血筋だというのなら、首を刎ねてやろうか? そのような無駄な血筋等必要ない」
「ひっ!」
「話は以上だ。俺は何かと忙しい。今後こう言った話は二度と持ってこないように。ああ、ついでに貴族達にも通達を頼むぞ」
そう言うと公爵は立ち上がらせ、無理やり連行される形で外に追い出された。
サファール宰相はクスクスと笑い、「学園が国営である事を知らない貴族がいるんですなぁ」と馬鹿にしていた。
「貴族たちの金の使いすぎで学園が破綻しそうだと泣きつかれてから国営にしたと言うのに、その事も知らないらしい」
「全く、何処まで行っても自分本位ですな」
「だが、お陰で良い人材は軒並み収穫できそうだ。俺が国王になってからは実力社会。権力がモノを言う時代は終わったからな」
そう言うと釣り書を燃やすようにサファール宰相に手渡すと、「これをゴミ捨て場に」と他の者に頼んでいた。
釣り書がゴミ捨て場にあれば、いい笑い種だろう。
「さて、やるべき事を速やかに終わらせないとな」
「そうですね」
「魔道具部門はどうなってる」
「ノベルシカ王国の魔道具師たちは、シュノベザール王国の魔道具に驚いていましたね。何か作らせるものがあればいいに行くついでにご見学に行かれますか?」
「そうだな……」
作りたい物はある。
魔道具で比較的簡単に作れる物――【扇風機】だ。
風の魔石で作れる事は既に自分で作って実験済みの為、それを売り込みに行くのもいい。
屋外用の首から下げる『手持ち扇風機』や小型の『置き型扇風機』等も考えて作っている為、試作品として持って行くことにしよう。
「よし、魔道具師たちの所に行ってからこれからの大掛かりな仕事を考えるとするか」
「はい、お供いたします」
こうして俺とサファール宰相とお供を付けて魔道具師の店へと向かったのである。
すると――。
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