第二章 次なる政策と、娯楽の甘味
第25話 アツシ様と話し合いをしつつ、次なる国営商売を考え、頼み事もする。
「――と、現在はこんな感じですね。国民の幸せ指数も上がり国民自ら動き始めの時期でしょう。また、余裕が生まれてきた事で娯楽の方にも意識が行き始め、お風呂の要求が来ている状態です。そこで城の中に一つ、外の国民向けに大型の銭湯を外貨で注文しようと思うのですが、どれ程掛かるでしょう」
「銭湯なぁ……土地があれば直ぐ出来るが、大体の金額として――」
そう話をしているのはアツシ様が我が国に置いた拠点の中だ。
実は俺が此処に来ると、アツシ様もやってきて色々な話をする。
国の発展の事が多いが、愚痴も多いのも許して欲しい所だな。
「その値段でしたら、城に男女の銭湯、国民用に二か所に大型銭湯を置けそうです」
「大分外貨も国内のお金も潤沢にあるみたいだな」
「ははは、まだまだですよ。やっとアツシ様から寄贈して頂ける冷凍冷蔵の馬車と普通の馬車のお陰で箱庭師を使った輸出を始めようかと言う段階ですから。それにまだまだ砂糖も国内に値段は高いものの出始めたばかりです。国外向けは今後新たに……と言った感じでしょうか。幸いサトウキビは多く収穫出来ているので、国外向けの調理師を雇い箱庭師にお願いして場所の確保を行う予定です」
「着々と一歩ずつだな。そろそろ俺も一旦こっちにきてガラスハウスを作る予定にはしているんだが、先にガラスハウス、その後銭湯が良さそうだな」
「そうですね、お願い出来ましたらば。土地は此方で用意致します」
「そこは頼む。そう言えば貴族連中はどうしてる」
その一言でゲッソリとした顔をすると「第二夫人にと売り込みが煩いです」と呟き、アツシ様も「俺の時もそうだったなぁ。今もだが」と呆れた様子で溜息を吐いている。
「国民の生活を安定させることが狙いですから、貴族向けは金銀で作るアクセサリーと、服関係しか手を出してないんですよ」
「俺は貴族をメインにしたやり方で行ったからなぁ。スキルもそっち向けだったのもあるが」
「天候を操るスキルで国内の気温もある程度安定させているんですがねぇ……。次なる一手と言うと難しく」
「まずはハウスでドライフルーツで一旦は目線をずらせるだろう。だがその後だよな」
「ええ」
「酒と言う手もあるが……気候的に作るのが向いてないんだよなぁ」
「箱庭を使えば作れなくはないですが。向いてませんね」
そうなのだ、暑すぎる砂漠の地域では酒は余りいい酒が出来るとは言えない。
昔からある酒は造れるが、箱庭を使ってまで酒をと言う気にはなれなかった。
「ジュノリス大国も夏の土地なんだが、砂漠のシュノベザール王国には負けるしな」
「参考までにどういうのを作っているか聞いても?」
「甘味だとかき氷、キャンディーアイスなんかはよく売れるぞ」
「予想外でした。そうか、かき氷」
「かき氷も牛乳と果物と一緒に凝らせて、ちょっと高級なかき氷とかな」
「牛乳……酪農が盛んなネバリ王国から牛を購入してもいいですね。もしくは牛乳を定期的に購入して、と言うのもありです」
「かき氷屋なら?」
「今からでも出来ますね。まずは氷からでもいけます。冷凍庫も作れるのでかき氷屋を作ってみようかと思います、問題はシロップですが」
「水っ気のある果物とかはバランドス王国から輸入するとかでも行けるんじゃないか?」
「国内にあるものでも消費はしたいですけど、ただ水分のあると言うと中々難しいですね……作れるには俺が作れるので、輸入で果物は受け取って作ろうと思います。氷だけなら安く、子供の小遣いでも買えるくらいにして、シロップありを少し高めに、牛乳ありは高級志向でと言う感じでしょうか」
「そうだな、そうなるとアイスキャンディも作れるといい」
「ええ」
どうやら次の商売は決まった。
甘味もこれだけあれば多少大丈夫だろう。
後は現在沢山の人を雇っている為、働くにしても働き手と言うのが難しくなってきている問題がある。
「その問題についてはアツシ様はどう思います? 俺としては寝たきりではない老人や子供を雇うと言うのも一つの手だと思ってるんですが」
「ああ、数店舗出す訳か」
「ええ、アイスキャンディを作るのは動けない老人以外でも作れるでしょう。後は子供達でも作れると思うので、孤児院に相談しようかとも思うんです。後はまだ動けるけど働けると言う老人がいる老人ホームですね」
「ああ、そっちの改革も進めていたんだったな」
「ええ」
そう、税金に関しても働ける年齢からしか税金を取らないと言う法律改正を行った。
まだ赤子や動けない老人からお金を取るというのは、些か人道に反すると思ったからだ。
それでは何時まで経っても子供は増えないし、お年寄りも肩身が狭い。
また、孤児院も国が運営する事で子供達の食事面も改善させた。
服に関しても寄贈し、孤児院で預かれる14歳までの子供達にかき氷屋をして貰うと言うのも考えている。
無論スキル次第では別の所に行って貰うが、国が運営する『かき氷屋』で働くのも、また一つの手だろう。
15歳になればスキルに応じて雇い入れる事も可能だし、こちらから商業ギルドや裁縫ギルド、魚ギルドに製薬ギルド、彫金ギルドに付与ギルドといった就職の斡旋もしていいと思っている。
冒険者ギルド以外のギルドは大体来て貰っているのが今の国の現状だ。
ただ、冒険者ギルドも鉄やプラチナは欲しいらしく、買取と言う形で偶に城に来ている。
この地域ではモンスターも出ないからな。
問題は老人の方だ。
シルバー人材センターを立ち上げるのが良いだろう。
そこで自分に出来る仕事を選んで貰い、特にアイスキャンディ関係に来て貰うと言うのもありだ。
「やるべき事も増えましたね。頑張ろうと思います」
「おう、氷が役に立ちそうだな」
「ええ、かき氷器は風の魔石で作れるので何とかなりそうですし、手押しかき氷器も作れますね」
「まぁ、まずはかき氷専用の店を作る所からだな」
「氷やアイスキャンディは配達人に持って居ってもらいますよ。流石にミルク入りになると小屋は必須ですが」
「ショーケースの冷凍庫盗まれないか?」
「それも店が終わる頃にアイテムボックス持ちに回収して貰います」
「なるほど」
平和なシュノベザール王国とはいえ、盗みを働く者はいる。
その為にはある程度の自衛とは必要だ。
流石に魚屋の物は持って行くことは不可能だったようだが。
ちなみに別枠で魚ギルドからも製氷機の依頼と冷蔵のケースの依頼は来ているので、そちらも明日には納品予定だ。
「じゃあ、明後日にはそっちに来る事を伝えて置いていってくれ。寄贈する馬車も持ってくるからさ。その時に銭湯を作ろう」
「お願いします」
こうして、まずは一つずつ問題をクリアしていくことになるのだった。
そして翌日――。
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