第8話 大臣職の定年退職法案を押し通し、汚職していた者たちには天罰を。

多少遅れてきたが数分の時間だ。

俺が入ってくると大臣たちは姿勢を正したが、今回の議題に関してピリピリとした空気が漂っている。

数名の大臣からは殺意すら感じるが、それも今日までだ。



「それでは今回の議題について話し合おう。大臣職の定年退職についてだ」

「それに付いては反対致します」

「その反論は認めない。ローバー大臣」

「なっ」

「貴殿は脱税の上に裏金を貰っているな? その時点でアウトだ。財産没収の上平民に落とすことが決まっている」

「!?」



これには驚きを隠せない老害だが、扉前に立っていた兵士に声をかけるとローバー元大臣は両腕を掴まれ別室と言う名の牢に連れて行かせた。

これには先ほどまでのピリピリとした空気から一変、恐怖の色が滲みで出ている。

そこで、今回平民落ちする大臣を更に口にして彼らは兵士に連れていかれ、5人程の大臣がクビと言う名の平民落ちしたことになる。

既に王室の騎士団に彼らの家に言って貰い、家族を追い出し家財も財産も差し押さえが始まっているだろう。

国が用意している弁護士も忙しく働くだろうから、少し色を付けて金を払わねばならないなと考えながら、次に利権絡みや裏金を貰っている大臣を口にすると、彼らは脂汗を掻きながら震えあがっている。



「貴殿たちには罰金で金貨200枚だ。それが無理ならば先ほどの者たちと同様財産差し押さえの後、平民落ちとなる」

「「「「……」」」」

「どうする? これからも大臣職にいたいならば金貨200枚を支払い、監視の元での生活となるが?」



そう伝えると裏金と利権絡みで雁字搦めの老害たちは震えながら平民落ちを望んだ。

これで更に5人の老害たちがいなくなり、残ったのは二人だけの大臣だけになった。

1人は言わずとも税務管理のタリア大臣。

もう一人は――魔道具開発部門のターザン大臣だった。

その後直ぐに若い大臣に任命した者たちが入ってくると、一人一人挨拶をしながら各大臣職に着くことが決まった。

その上で、裏金や利権が絡めば罰金200枚か、財産差し押さえの後平民落ちになる事も伝えると、気を引きめ返事をしていたので、今時点では大丈夫だろう。


差し押さえた財産は国に没収され国の財産となる。

かなりの額をため込んでいた彼等のお陰で少し城の金が潤う事になるな。

まぁ、城の人間とて質素倹約でいる為、金遣いが荒いと言う事は無いのだが――。



「さて、新しい布陣でこの国を更に発展させる為に進めていく事となるが、まずは軍部大臣となったトーマシリア。隣国バランドス大国の事は話を聞いているだろうか?」

「はっ! 偵察部隊に向かわせたところ、日照りが続き作物はほぼ全滅との事です。土はひび割れ、水を得る為に争いが絶えなくなってきていると言う情報が」

「そうか、俺の贈った書簡は届いている筈だが、その点はどうなっている外交大臣のハーレス」

「はい、書簡は確かに届いておりますが、屈することは無いと言うバランドス国王の言葉により国民が飢えに苦しんでおります。備蓄していた食べものも直に尽きるでしょうが、恐らく一年。持って一年でしょうな」

「そうか、一年は日照りで良いのだな?」

「はい」

「では存分に苦しんで貰おう。それからこの場にはいないが新しい大臣が二人いる。【箱庭師大臣】のラシュリオと【箱庭農業大臣】のモザーラだ。二人共俺と年が変わらないが熱意だけは素晴らしいものがある。国を発展させる為の二人だ。裏で攻撃する事まかりならん」

「「「「畏まりました!」」」」



その後、国の行う事業について話し合いを行い、やはり箱庭師と植物師で食料の安定供給が急務であることがあげられ、来週にはネバリ王国から苗や種を中心として商隊が来る事を伝え、そこからが本格的なスタートになる事を告げると、皆が納得し頷いていた。



「だが、数はかなりの量を頼んでいる為国が出せる金には限りがある。そこで国が保管していた金銀財宝の一回目のオークションが今週末行われる。行われる会場はオークション会場だ。そこで幾らまで国に金が入るかは分からないが、そこからも補填しようと思っている」

「何をするにしてもまずは金が必要ですからな」

「その通りだ。先は長いが確実に国民が飢えから脱するために必要な政策だ。今回差し押さえた財産も思う存分に使う予定だから安心して欲しい」



そういうと笑いが起こったが、実際相当な財産が国に入ってくる為、多少の余裕は生まれる。

国が貧しいのは今に始まった事ではないが、少しでも財貨は持っているに限る。

最初はマイナスにならないギリギリで金を使う事も致し方ない事かも知れないが、王族の貧しさは友好国から『天候を穏やかにして頂いて感謝しております』と、俺宛に大金が入っているので、そこまで貧しいと言う訳ではない。


だが、何時か使う金をポンポン使っていては国民に示しが付かない。

俺が得ている外貨は何れ国民に還元する予定で貯めている。



「まずは箱庭師の持っている木材を伐採し乾かす事と、鉱山で鉱山夫を雇う所から始めたいと思っている。それに合わせて女性や学校にまだ通わない子供には釣りをして貰い、干物を作らせる予定だ。これは商業ギルドに手配を頼む。サファール宰相、人手を集めて貰ってくれ」

「畏まりました」

「他は苗が来てからとなるが、もしかしたら箱庭師の持っている木々に食べ物があるかも知れない。そこは断言出来ないが、もしあれば収穫する為の人材も集める予定だ」

「本当に箱庭師とは今まで誰も注目しませんでしたからな」

「そこまで有益だったとは……驚きです」

「最初は農地に出来ればと思ったんだが、思わぬ副産物もあったと言う事だ。これからこの国は生まれ変わるぞ。俺に着いてきてくれ」



そう伝え終わると会議は終了となり、大臣たちは各自入り口でターバンと腰布を新たな大臣職の物を受け取って着替えて戻って行った。

使い終わったターバンや腰布は引き取る形となったが、これでいいだろう。

綺麗に洗って再利用だ。



「明日には商業ギルドに出した俺の出した書簡は届きそうか?」

「テリオットに任せたので直ぐ届くでしょう。そして明日は丁度良くオークションに出す金銀財宝を宝物庫から選ぶ日ですし、一石二鳥かと」

「そうか。急ぎの仕事となるが頑張って貰おう」

「はい」



こうして一日の仕事を終え、残りの雑多な仕事を終えてから時間になったら仕事を終えてオンとオフを切り替え自室へと帰った翌日――。






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